持ち込みノベル
なんだか色々ある毎日に目的を忘れそうになってた。
「ヒロオ、そろそろ長谷ちゃんの小説プロモーション、再開しようよ」
「うん。その通りだね」
そもそも僕らが東京へ出てきた理由は高校で退学勧告を受けたこと。
それによって僕とユウリ双方の家族から、半分勘当されたような状態で、故郷を追われたこと。
ならばどうせならと長谷ちゃんのネット投稿連載小説、『タイシとシナリ』のプロモーション活動をすることだった。
そして更にその目的を遡ると、僕とユウリが2人して戊辰の戦場に迷い込んだ時に出会った1人の武士、大徹さんの存在だ。
ガットリング砲に立ち向かった静かで涼しげな目をした、武士。
その人の魂を小説の中に込めようとする長谷ちゃんを応援しようという気持ちからだった。
「ただなあ・・・結構色々やったよねえ」
「ヒロオ、まだまだやってないことがあるはずだよ」
「うーん。なんだろう」
「持ち込み、とか」
「持ち込み? 出版社に?」
「うん」
「今時そんなのできるのかなあ・・・」
「ヒロオ。やってみないとわかんないよ」
そういう訳で、おそらく今の時代ではかなり廃れてしまっているであろう、『小説持ち込み』という手法をとにもかくにもやってみることにした。