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異世界好きの本気 ~俺はきっと異世界に行く~  作者: シラ猫
第四部:悲しみの果てに

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笑顔の思い出

「なあ、みんな。今度の休み、遊園地に行かないか?」


 俺の提案に、京子たちが顔を見合わせた。


「遊園地? 急にどうしたの?」


 京子が不思議そうに尋ねる。


「最近、いろいろあっただろ。これから先も、簡単にはいかないと思う。だからこそ、一度みんなで息抜きしたいんだ」


 警告の手紙が届いてから、俺たちの周囲には緊張が続いていた。仲間を守るための準備も必要だし、異世界への研究を諦めるつもりもない。


 だけど、ずっと張り詰めたままでは、いつか心が疲れてしまう。


「たまには何も考えずに楽しもう。みんなでさ」


「いいわね! 私、遊園地なんて久しぶり!」


 京子が笑顔で答える。


「拙者も、皆と出かけるのは賛成でござる!」


「私も行きたい!」


 美穂も勢いよく手を挙げた。


「私も楽しみ。美穂ちゃんと一緒に回りたいな」


 佳苗も嬉しそうに微笑んだ。


 徹は、以前のメッセージのとおり、当分は合流できないらしい。今回は五人で出かけることになった。


 当日、遊園地に到着すると、美穂は入口から大はしゃぎだった。


「わあっ! すごい! あっちにも乗り物があるよ!」


「美穂ちゃん、走ると危ないよ」


 佳苗が美穂の手を握る。


「だって、早く遊びたいんだもん!」


「ふふっ。じゃあ、まずはどこに行こうか?」


「メリーゴーランド!」


 美穂は迷わず答えた。


 俺たちは最初にメリーゴーランドへ向かった。


 馬にまたがった美穂は、回り始めると満面の笑みを浮かべた。隣の馬に乗った佳苗も、いつもより少しだけはしゃいでいる。


「佳苗ちゃん、楽しいね!」


「うん! 美穂ちゃんと一緒だと、もっと楽しいね」


 二人の笑顔を見ていると、こっちまで楽しくなってくる。


 京子も楽しそうに手を振っていた。


 次はジェットコースターに向かうことになった。


 ところが、目の前にそびえるレールを見上げた瞬間、俺は足を止めた。


「……なあ、別の乗り物にしないか?」


「え? 知也、怖いんでしょ?」


 京子がニヤニヤしながら俺を見る。


「べ、別に怖くなんかないぞ!」


「じゃあ乗れるわよね?」


「当たり前だ!」


 しまった。つい意地を張ってしまった。


 結局、俺と京子、佳苗の三人で乗ることになった。


 発車してすぐに急上昇が始まり、頂上に到着したと思った次の瞬間、車体が一気に落下した。


「うわあああああっ!」


 自分でも驚くほどの声が出た。


 隣では京子が笑っている。佳苗も楽しそうに声を上げていた。


 その後も急旋回や急降下が続き、俺は最後まで叫びっぱなしだった。


 ようやく地上に戻ると、足に力が入らない。


「知也さん、かなり叫んでたね」


 佳苗が笑いをこらえながら言った。


「そ、そんなに叫んでないだろ!」


「ふふっ。聞こえてたわよ」


 京子まで笑い出した。


「もう二度と乗らない……」


「怖かったのね?」


「違う! あれは声を出して楽しむ乗り物なんだ!」


「はいはい」


 京子は楽しそうに笑っていた。


 そういえば、健三と美穂はどこに行ったのだろう。


 俺たちは二人を迎えに、お土産コーナーへ向かった。


 店内に入ると、すぐに二人の声が聞こえてきた。


「おおおっ! こ、これはルルリちゃんではござらんか!」


「わああっ! 本当だ! ルルリちゃんだよ、健三さん!」


 嫌な予感がした。


 商品棚の前では、健三と美穂が並んで大興奮していた。


「美穂殿、この衣装の細部をご覧くだされ! 実に見事な再現度でござる!」


「本当だ! こっちのキーホルダーも可愛い!」


「おおっ! それも見逃せませんな!」


「ねえねえ、こっちにはぬいぐるみもあるよ!」


「なんと! これは素晴らしい!」


 二人はすっかり意気投合している。


「……ねえ、知也。あの二人、いつからあんなに仲良くなったの?」


 京子が呆れたように尋ねてきた。


「さあな。でも、共通の趣味があるのはいいことじゃないか?」


「そういう問題かしら……」


 京子は大きなため息をついた。


「健三! そろそろ行くぞ!」


 俺が声をかけると、健三が勢いよく振り返った。


「ま、待たれよ! 知也殿! まだ見ていない商品があるのでござる!」


「さっきから十分見ただろ!」


「これだけは譲れませぬ! この限定ルルリちゃんを、拙者の目で確かめねば!」


「健三さん、また今度ゆっくり見ようね!」


「美穂殿まで、そのようなことを……!」


「ほら、行くわよ!」


 京子が健三の腕をつかんだ。


「おおっ! 京子殿、せめてあと少しだけ!」


「駄目よ。みんな待ってるんだから!」


「ルルリちゃーん! 必ず迎えに来るでござるぞー!」


 健三は何度も商品棚を振り返りながら、京子に引っ張られていった。


「健三、別れを惜しむ相手が商品ってどうなのよ……」


 京子の呆れた声に、俺も苦笑するしかなかった。


 次は観覧車に向かうことになった。


 ところが、乗り場の前まで来ると、健三が急に足を止めた。


「拙者は高いところが少々苦手でござる。四人で楽しんできてくだされ」


「えっ、健三さん乗らないの?」


 美穂が尋ねる。


「うむ。皆が楽しんでいる間、拙者はここで待っておりますぞ」


「じゃあ、行ってくるね!」


 美穂は佳苗と手をつなぎ、俺と京子も一緒に観覧車へ乗り込んだ。


 ゆっくりと上昇していくゴンドラからは、遊園地の景色が広がっていく。


「わあっ! あんなところまで見えるよ!」


 美穂は窓の外に夢中だった。


「本当だね。あっちにはさっき乗ったジェットコースターも見えるよ」


 佳苗も楽しそうに景色を眺めている。


「こうして見ると、遊園地って広いのね」


 京子も窓の外を見ながら微笑んだ。


 俺たちは景色を楽しみながら、ゆっくりと一周した。


 観覧車から降りると、待っていた健三の姿が見えた。


「おかえりなさい!」


 美穂が駆け寄る。


「ただいま戻りましたぞ!」


 健三の両手には、いつの間にかお土産の袋が増えていた。


「……健三、また買ったの?」


 京子が袋を見て呆れた声を出す。


「いや、その……。先ほどは時間が足りなかったゆえ、少々確認をしておりましてな」


「確認って、何を?」


「ルルリちゃんの魅力をでござる!」


「もう、健三ったら!」


 京子が呆れる一方で、美穂は袋の中を覗き込んでいた。


「わあっ! こんなに買ったの?」


「美穂殿、こちらをご覧くだされ!」


 健三が袋から取り出したのは、ルルリちゃんのぬいぐるみだった。


「美穂殿に進呈いたす。今日の記念でござる!」


「えっ! 私に?」


「うむ。気に入っていただければ幸いでござる」


「わああっ! ありがとう、健三さん! すっごく可愛い!」


 美穂はぬいぐるみを抱きしめた。


「健三さんって、やっぱり優しいね!」


「おおっ! そう言っていただけるとは、拙者も嬉しいでござる!」


「おい! さっきまで呆れてたのは誰だよ!」


 俺が突っ込むと、美穂は何事もなかったように笑った。


「うんうん、そういう時ってあるよね!」


「おい! さっきまでの話はどうなったんだよ!」


 京子も佳苗も笑い出した。


 その後、少し休憩してから園内を歩いていると、徹のことが話題になった。


「徹さんも来れたらよかったのにね」


 美穂が少し残念そうに言った。


「そうね」


 京子も頷いた。


「次はきっと来るさ。そしたら美穂がちゃんとエスコートしてやれよ? アイツきっと遊園地苦手だから」


「うん、私に任せて! たーっぷり楽しませてあげるから!」


「美穂殿に任せたら、拙者も安心ですな」


「うんうん、そうだね」


 佳苗も笑顔で頷いた。


 そのとき、美穂が園内のキャラクターを見つけた。


「あっ! ルルリちゃんだ!」


 大きな着ぐるみのルルリちゃんが、子どもたちに囲まれて手を振っている。


「健三さん、佳苗ちゃん! 一緒に写真撮ろうよ!」


「おおっ! それはぜひお願いしたいでござる!」


「うん、行こう!」


 三人はルルリちゃんのところへ駆けていった。


 俺と京子は、近くのベンチに腰を下ろした。


「今日はありがとね。楽しかった」


 京子が俺に微笑みかける。


「おおっ! でもな、まだパレードもあるぞ」


「ええ、そうね」


 しばらくすると、近くを通りかかった遊園地のスタッフが目に入った。


「あの、すみません!」


 京子がスタッフを呼び止める。


「よろしければ、写真を撮っていただけませんか?」


 京子は自分のスマホをスタッフに手渡した。


「さあ、知也撮るわよ。笑って」


「おうっ!」


 京子は俺の腕を取ると、ぴったりと寄り添った。


 スタッフがカメラを構え、シャッターを切る。


「ありがとうございます!」


 スマホを受け取った京子は、画面を確認した。


「うん、いい写真!」


「やっぱり、俺という存在が写真のクオリティを上げるんだな」


 俺は腕を組みながら、うんうんと頭を上下させた。


「ぷっ、何を言ってるのかしら? ここはモデルの私がいるからでしょ?」


「それだと俺の手柄がないじゃん」


 京子は声を出して笑った。


「おかしな知也ね」


 京子はもう一度スマホの画面を眺めていた。


 画面には、俺の腕に寄り添って笑う京子が写っている。京子はその写真を、しばらく嬉しそうに見つめていた。


 やがて健三たちも戻ってきて、俺たちはパレードを見るために場所を移した。


 音楽が流れ始めると、色鮮やかな衣装をまとったキャラクターたちが、笑顔で手を振りながら進んでくる。


「わああっ! ルルリちゃん!」


 美穂は大きく手を振った。


「おおおっ! ルルリちゃーん!」


 健三も負けじと手を振っている。


「健三さん、すごい声!」


「美穂殿も負けておりませんぞ!」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 佳苗も楽しそうに手を振り、京子はそんな二人を見ながら微笑んでいた。


 俺は少し後ろから、みんなの様子を眺めていた。


 パレードが終わると、あっという間に帰る時間になってしまった。


「もう終わりなの? まだ遊びたい!」


 美穂が名残惜しそうに言った。


「また来ればいいじゃないか」


「絶対また来ようね!」


 美穂はみんなの顔を見回した。


「そうね。今度は徹さんも一緒に来られるといいわね」


 京子が笑顔で言う。


「拙者も異存はござらん!」


「私もまた来たいな」


 佳苗も頷いた。


「よし、次もみんなで来よう。約束だぞ!」


 俺たちは笑顔で頷き合った。


 美穂の満面の笑顔。佳苗の優しい表情。ルルリちゃんに夢中になっていた健三。京子と一緒に撮った写真。


 今日一日、みんなと過ごした時間が、心の中に残っている。


 これから先、また大変なことが待っているかもしれない。俺たちには、まだやるべき研究もある。


 それでも、こんな時間を何度でも過ごしたいと思った。


 異世界もきっと楽しいだろう。だけど、今日のことは一生忘れないだろうな

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