序章
短編作品の『異世界に行きたい男の苦悩』を改変した作品になります。
前作はあっさり過ぎたので、もう少し脚色してみました。
アナログ時計の針が、カチカチと音を立てながら時を刻んでいく。
その無機質な音に耳を傾ける者など、誰もいない。
秒針は今日も変わらず、同じ場所を回り続けている。
誰も、時間が過ぎていくことを気にしていないのだろうか。
……ああ、退屈だ。
何も変化が起きない毎日というのは、退屈でしかない。
そんな俺の日常は、毎日平凡に時間が過ぎていくだけ。
このまま何も変わらず、ただ歳を重ねていくのだろうか。
あまりに滑稽で、どうしようもなく不器用な人生だ。そして、いつか何も成し遂げられないまま、無念のうちに生涯を終えるのかもしれない。
たった一度の人生。これでいいのかと自問する。
誰もが一度くらい、そんなことを考えたことがあるんじゃないだろうか?
人生に恵まれた人間なら、そんなことは思わないかもしれない。だけど、そんな連中ばかりじゃないはずさ。
しかし、悲しいことに人間というか、生物は食べないと死んでしまう。だから、あくせく働いて金を稼ぐ。余裕もなく日々の生活に追われているうちに、そんな思いも薄れてしまうってわけだ。
これではいかんと俺は思った。
今年で25歳になる俺は、このまま歳を取っていけば、あっという間に人生の折り返し地点を迎えることになる。
できれば残りの人生は、悠々自適な生活か、活力に満ちた暮らしを送りたいもんだ。
そもそも、俺には昔から夢があった。
それは、異世界で生きることだ。
剣と魔法、見たこともない景色、出会ったことのない人々。そんな世界に自分が立っている姿を、何度も何度も想像してきた。
ライトノベルやアニメで描かれる異世界の物語。その世界に自分も行けたら、どんなに素晴らしいだろう。
もちろん、ただの妄想だと言われればそれまでだ。
だけど、俺は本気で憧れている。
速水知也の人生は、こんなものではないはずだ。
だから願った。憧れを持って輝いていた多感な頃の学生時代のように、もう一度彩を取り戻したいと。
惰性のような暮らしに、とうとう我慢の限界がきた。
だから俺は行動に移してみた。
そう、仕事を辞めた。きっぱりとね。
俺は行くんだ。誰もが一度は妄想したことのある世界へ。
異世界に。
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