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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
97/150

第97話「朝の空白」

朝、アグネスがエレナの部屋を訪ねた。

書類の確認があったからだ。

扉を叩いた。返事がない。

扉を開けると、部屋は片付いていた。

荷物がなかった。

机の上に、一枚の手紙があった。

アグネスはその手紙を見た。宛名は「ルシアン様へ」とあった。

アグネスは手紙を手に取り、廊下に出た。

執務室に向かった。

ルシアンはすでに仕事を始めていた。

「殿下」

「何だ」

「エレナさんが——また、いなくなりました」

ルシアンの手が止まった。

「……手紙があります」

アグネスが差し出した。

ルシアンは手紙を受け取った。

開いた。

読んだ。

二度、三度——読んだ。

部屋に沈黙が落ちた。

「……探します」

ルシアンが立ち上がろうとした。

アグネスが言った。

「殿下」

「何だ」

「今回は——」

アグネスが少し間を置いた。

「今回は、陛下が関与しています」

ルシアンの目が、鋭くなった。

「……また兄上が」

「王妃様も同席されていたと聞いています。エレナさんは、説得されたのだと思います」

ルシアンは手紙を見た。

忘れてください——その言葉が、目に刺さった。

「忘れない」

低い声で言った。

「殿下——」

「忘れない。絶対に」

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