表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の檻  作者: 麗夜
77/150

第77話「フェルン町」

フェルン町に着いたのは、二日後の昼過ぎだった。

川沿いの小さな町で、橋を中心に商店と民家が並んでいた。活気はあるが静かで、よそ者を特別に珍しがらない雰囲気がある。

エレナは町の中心にある宿屋に部屋を取った。

「霧橋亭」という名前の、石造りの宿だ。コルヴィン村のヘルガの宿より少し大きい。女将は五十代の穏やかな女性で、エレナを見て何も余計なことを聞かなかった。

「長くお泊まりになりますか」

「しばらく、お世話になるかもしれません」

「ご飯は朝と夜、ついています。洗濯は自分でされるなら、裏に洗い場があります」

「ありがとうございます」

部屋は狭かったが、窓から川が見えた。

エレナは荷物を置き、窓を開けた。

冬の川の音が聞こえてくる。水が流れる音。それだけが、今のエレナには心地よかった。

翌日から、エレナは仕事を探した。

宿屋での経験と、草薬の知識——それを使える仕事を探した。町の薬草師が助手を探していると聞いて、訪ねていった。

「前にも薬草の仕事をしていたんですか」

六十代の薬草師、ベルタ老婆が聞いた。

「王都で少し。それ以前は、コルヴィン村にいました」

「コルヴィンか。遠くから来たね」

「はい」

「訳ありそうな顔をしているが——そこは聞かないよ。仕事ができれば、それでいい」

「ありがとうございます」

仕事が決まった。

午前中に薬草師の助手として働き、午後は宿に戻る。そういう生活が始まった。

コルヴィン村の頃に似ていたが——あの頃とは違う静けさがあった。

あの頃は出口を探していた。今は——出口の先で、立ち止まっている。

夜、エレナは部屋で一人、窓から川を見た。

ルシアンは今頃、手紙を読んでいるだろうか。

読んで——どう思うだろうか。

(怒るかもしれない。悲しむかもしれない。あるいは——国のために、と納得するかもしれない)

どれが正解か、エレナには分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ