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第71話「隣国への訪問」
一月になった。
新年の挨拶を兼ねた外交訪問として、ルシアンが隣国セルディアを訪れることになった。
セルディア王国はヴァルドラの東に位置する国で、長年友好関係を保っている。今回の訪問は、昨年のガルデニアとの問題で生じた外交上の空白を埋める意味もあった。
「一週間の予定だ」
ルシアンがエレナに言った。
「私は同行しますか」
「今回は、私と近衛兵だけで行く。お前は王都で待っていてくれ」
エレナは少し寂しかったが、頷いた。
「気をつけてください」
「ああ」
「食事は、ちゃんと取ってください」
「分かっている」
「眠れないときは、草薬茶の葉を荷物に入れておきます」
ルシアンが少し困った顔をした。
「……母親のようなことを言う」
「心配しているので」
「知っている」
出発の朝、エレナは荷物の中に草薬茶の葉と、小さく折りたたんだ手紙を入れた。
手紙の内容は短かった。
『待っています。急がなくていいですから、無事で帰ってきてください。エレナ』
ルシアンが馬車に乗る前、エレナは見送った。
「行ってらっしゃい」
ルシアンが振り返った。
「……行ってくる」
馬車が動き出した。エレナは見えなくなるまで見送った。
一週間。初めて、これほど長く離れる。
エレナは自分の部屋に戻り、仕事を続けた。
しかし——七日が過ぎても、ルシアンは帰ってこなかった。




