めでたしめでたし、のはずだった
リリアーナ・ヴァイオレット、無事に破滅回避!
──そう、私はついにやり遂げたのだ。
三年前、私は前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢として転生していたことに気づいた。
我がヴァイオレット家は、平民出身の聖女エレナを預かり、いびり倒す悪徳貴族。
そして物語のラストでは、父アルフレッド、母セシリア、そして私が――聖女を貶めた罪で貴族籍を剥奪され、辺境へ追放されるという、テンプレ破滅ルートまっしぐらの運命にあった。
もちろん、そんな未来まっぴらごめんである。
だから私は、家族総出の破滅劇を回避すべく、全力で抗った。
まず、“王族ルートに備えたスパルタ教育”――世間的には“聖女いびり”と誤解されるアレ――を撤廃!
代わりに“ゆとり教育”を導入した。
結果、聖女エレナは王族ルートを外れ、教会のイケメン司祭ルートで見事ハッピーエンド。
平和的かつ健全な青春を謳歌してくれた。
次に、世間に誤解されきっていた両親の名誉回復である。
父アルフレッド・ヴァイオレットは、鋭い眼光と白髪まじりの黒髪がトレードマークの渋いイケおじ。
立っているだけで悪巧みをしていそうに見えるが、実際はただの極度の人見知りだ。
母セシリアは、真紅の髪と圧のある美貌で知られる社交界の女王……に見えるが、こちらも口下手で気弱なチキン。
夫婦そろって「壁の花どうし」で意気投合した恋愛結婚組である。
領地には国の特産品・希少宝石の鉱山があり、彼らは環境保護と工員の安全を最優先に経営していた。
その結果、産出量をあえて制限し、加工技術の向上で単価を上げた。
つまり“牛耳っていた”どころか、“誠実にやっていただけ”なのである。
宝石まみれのファッションも、領地製品のアピールという涙ぐましい営業努力にすぎなかった。
父の趣味は植物の世話。母は刺繍が好きな癒し系。
誤解されるビジュアルに反して、根は優しすぎるほどの人格者夫婦だ。
私は聖女エレナや婚約者にも協力してもらい、両親の趣味を生かしたチャリティイベントを開催。
刺繍や観葉植物の展示・販売を通じて両親の温かさをアピールした。
おかげで世間の評価は激変し、もはや「立ってるだけで悪巧み扱い」は過去のものとなった。
そして、聖女に心を奪われるはずだった私の婚約者――第六王子アウレリオ殿下。
彼は「傾国の美少年」というキャッチコピー付きの攻略対象。
本来のルートでは、その美貌ゆえにトラブルが多発し、ついには誘拐未遂まで発生。
心を閉ざした彼は人間不信となり、派閥を持たない我が家との縁組を「見放し」と誤解。
やがて、我が家を没落させるキーマンとなる――はずだった。
だが私は、誘拐を未然に防ぎ、両親譲りの“威圧オーラ”で彼を守った。
結果、彼は見事にトラウマを克服。性格まで明るくなり、今では息をするように甘い言葉を吐いてくる。
「君の瞳は紫宝石よりも美しい」
「月も君を見て輝きを増した」
……もはやポエム製造機である。
ともあれ、破滅は回避! 家族は安泰!
ああ、めでたしめでたし――
完璧だ。破滅は去り、ヴァイオレット家は前代未聞の繁栄期へ。
……そう、思っていたのはほんの一瞬だった。




