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EP35 到着

 

 清也は紫色の魔法陣より投げ出された。

 すると、男が変身した黒い雲も、後を追って飛び出してきた。


「決着をつけるか!」


 清也は威勢よく雲に向かって叫んだ。

 すると雲は男の姿になり、高らかにこう言った。


「お前は俺が本当の姿になった時に殺してやる。

 そして、今はその時ではない。死の瞬間を楽しみにしとくんだな!」


 捨て台詞を吐いたその男は、清也の何倍も早い速度で走り去って行った。


「待てっ!」


 清也は雲を追いかけたが、深い山に包まれた森の中での追跡は難しく、すぐに見失ってしまう。


(だったら……!)


 別の方法での追跡を思い付いた清也は、操られていた人達の隊列を遡り始める。


 男が魔法陣から出て来たせいなのか、操られし者達は全員が地面に倒れ込んでいた。

 そして倒れ込む人たちの中に、清也は1人の男を見つけた。


「シン!起きろ!」


 清也は、倒れているシンを叩き起こした。気を失っているようだが、目立った外傷は無い。


「せ、清也……どうした?」


 シンは眠そうに起き上がった。目をこすり、眠気で張り付いた瞼をこじ開ける。


「今すぐ左腕を出せ!早く!」


「あ、あぁ……。」


 いつになく乱暴な勢いに押され、シンは左腕を見せる。

 しかしそこに、清也の期待する物はなかったーー。


「とりあえず、お前じゃ、ないか……。」


 溜め込んだ疲れと緊張が、一斉に押し寄せて来た清也は、その場で意識を失った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 意識が肉体から離れた清也は、不思議な夢を見ていた。


 1人の若い男が黒髪を風になびかせ、一振りの日本刀を持ち、何体かの巨大な影を切り裂いている。

 男が振り返ると、その瞳は清也と同じように琥珀色に輝いていたーー。




 男の目から放たれた強烈な光が清也の目を眩ませ、次に目を開けると、見えたのはテントの天井だった。


「あっ!清也!起きたのね!」


 覗き込む花の顔は安堵に満ち溢れ、清也の手を握っていたと思われる指先は、嬉し涙が溢れる瞼をこする。


「あぁ……そうだ!みんなは?攫われてない?」


「えぇ、みんな森の中で倒れてたわ。みんなは起きたけどあなただけ目を覚さなくて……本当によかった……!」


 優しく包み込むような声に、心が蕩かされそうになる。

 しかし清也はその包容感を振り払い、少し焦った様子で花に指示を出す。


「今すぐ民間人、護衛を問わず全員を集めてくれ!そして、左腕に外傷がないか確かめてくれ!」


 突然の指示に対して花は少し戸惑っていたが、清也の切羽詰まった表情に押され、急いでテントの外に出て行った。


~~~~~~~~~


 結果から言えば、旅団の中に誰一人として左腕に傷のある人間はいなかった。

 その晩、清也達は焚き火を囲いながら今日の件について各々の感想を述べていた。


「再生能力があるのか……。」


 事情を知ったシンは言った。彼もまた疑われている1人だが、そんな事には関心がないようだ。


「人狼が異界に通じてたなんて……。」


 唖然としたような、呆然としたような、不思議な虚脱感を感じさせる表情で、花は嘆息を漏らす。


「人狼は僕らが思ってるよりも、とんでもない奴なのかも……。」


 清也は体と心が支配される不気味な感覚を思い出し、震えが止まらない。

 あの感覚から抜け出せなければ、今の自分がどうなっていたか分からない。


「異界って、どんな場所だったの?」


「とにかく不気味なところだった。正直、もう二度と行きたくないよ。」


「人狼ってどんなやつだ?」


「顔が……無かった。本当に不気味なやつだったよ。」


 立て続けに問われた質問にも、同じ解答しかできない。今夜の出来事は、その全てが"不気味"の三文字に集約される結果となった。


 テントの中で花と良い雰囲気になったなど、彼は微塵も記憶していなかったーー。


~~~~~~~~~〜


 左腕の検査により1日遅れたが、翌日の夕方には隣町・"ドゴル"に清也達は到着した。

 各々が自宅へと帰っていく中、シンだけはその足先を酒場に向ける。


「よし!帰ってきた日は休暇って言われてるし、俺は飲みに行くかな!

 黄金の魔術師に会えるのは6時までだから、今からでも会いに行った方が良いぜ!」


 シンにそう言われ、2人は魔術師のいる宿に向かった。

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