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オズ  作者: 紗パカルギ
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臆病者と不器用③

今回は光視点です。

お互いのことを暴露しあえという課題を出された翌日。


僕は恋にどう接していいのかがわからなかった。


でも、授業はそんなことにはお構いなくあるわけで。




「………恋、おはようございます」

僕は目の前の真っ赤な瞳を見つめつつ掠れた声でそう呟く。


すると、恋は何故か瞳を輝かせて「お、おはようっ!!」と言ってきた。



返事をされずに無視をされることは確定しているかな、などと思っていた僕は恋の行動に驚きを隠せなかった。



「光、何でそんなに驚いてるの?」


恋は少し不服そうな顔をしながらそう聞いてきた。


僕は慌てて笑顔になる。


「いえ、ただ、その…昨日のこと」

「昨日?あぁ、……き、昨日のことなんて、わ、忘れちゃったなぁっ!!!」

「………」



明らかに嘘だとわかる程の棒読み口調で恋はそう言って顔を僕から逸らした。



僕は思わずフッと息を漏らす。


僕は何をしているんだろう。女の子に気を使わせるなんて。



「恋が覚えていなくても、僕が覚えているんです。昨日、君に失礼な」

「してないっ!!」


謝ろうとしたら恋に遮られてしまった。


僕は気を取り直して再び口を開く。


「え、えぇっと…僕がきn」

「光?私、止めたよね?何でまた話し始めるの?」

「………で、ですが」

「光???」

「わかりました」


………ものすごい真顔で恋が僕を見つめている。


なんというかすごく迫力がある。というか、どうして謝る事で怒るのだろうか。



僕は訳がわからないまま恋の迫力に気おされで口を閉じた。


すると、恋は満足したのかニンマリと笑う。


「れ、恋?」

「光、私ね……決めたんだ」

「決めた?」



何をですか?と聞く前に恋が「ふっふっふー!!」とわざとらしく言ってから僕に一歩近づく。


僕と恋の距離はいつもなら恋が嫌がる程近いはずなのに、何故か今日は恋自ら近づいてきた。


「私、赤姫恋は………若宮光のほ、本当に大切な、とっ、と………」

「……れ、恋?大丈夫ですか?」


何故か恋は自分から何かを宣言しようと勢いよく話し出したようだが、行き詰っていた。


顔が林檎みたいに真っ赤になっている。


熱があるのではないかと疑う程に赤い顔をしていたので僕はもしや本当に風邪でも引いてしまっているのではないかと考え始めた頃に恋が再び口を開いた。



「若宮光の本当に大切な友達になれるように、頑張ることを誓いますっ!!!」

「……………へっ?」


あまりにも予想外の言葉に僕は思わず声を漏らしてしまった。




僕の本当に大切な友達……?



「わ、私は昨日、光の王子スマイルではない表情を初めて面と向かって見ました。そして、昨日、光のことをもっとよく知って、話して、仲良くなりたいって思いました!!光にもっと表情豊かになってほしいと思いましたっ!光は無関心じゃないって気づかせてあげたいと思いました!!だから、……だ、だから決めました!私からもっと光に近づいていくって!光が嫌がってもな、馴れ馴れしく?……な、なんか違う…光に警戒されないように?……~っ!!兎に角っ!!!私は、光と仲良くなりたいのっ!!!!」



そう一気にしゃべった恋は顔をまだ赤らめつつ僕を真剣に見つめていた。


そして僕が呆気にとられている間にそっと僕の手を握る。


小さい手が僕の両手をギュッと包み込む。


その手は震えていた、きっとものすごく勇気を振り絞ったのだろうな、なんて僕は考える。


真っ赤な瞳は僕を視界から離さずにじっと見つめている。


「だから、もっと、光のこと、話してくれないかな………?」


何とも言えない気持ちが僕の中に芽生える。


僕の両手をさらに強く強く握りしめて恋は言う。


「私は、光と、仲良くなりたい!!」

「…っ!」


繰り返される言葉に僕は何故か泣きそうになった。


どうして君はそんなに真剣に僕と向き合ってくれるのか。


どうして震えるくらい勇気を振り絞ってまで僕に近づこうとするのか。


どうして君は、まるで自分のことのように僕を見ているのか。



聞きたいことは沢山あるけれど僕は怖くて聞けない。


もし、聞いてしまったとしてせっかく近づいて来てくれた恋が離れていくのが恐ろしいから。


大切な者を失った時の苦しみをもう味わいたくはなかったから。


ならばいっそ恋と仲良くなどならなければいいと思う臆病な自分がいる。


でも、そんな逃げ腰の僕を恋は引っ張り出したのだ。



「光と仲良くなるの………ダメ?」



そんな、言い方ずるいじゃないか。



「………勿論」


僕は震える声でそう答えた。




その言葉を聞いて恋は本当に嬉しそうに微笑んだ。





この笑顔を失いたくないな、僕はそう思って微笑んだのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





それから一か月程過ぎた。


「よう、お前ら。今日は実践テストすっぞー」


僕と恋は身構える。


あれから恋は何かと僕に積極的に話しかけたり近づいたりすることが多くなった。


そして、僕もそんな恋の行動に戸惑いつつ次第に慣れていき、今では軽口を叩けるようになった。


「光、作戦Bでいこう」

「待ってください恋、なんですかその作戦Bって。初耳なんですが?」

「大丈夫、光ならわかる」

「無茶ぶりはよくないですよ!?」

「信じてる!」

「……わかりました、やってみます」



恋はまるでイタズラっ子のような笑みを浮かべて僕を見る。



僕は恋のことをこの短期間で沢山知った。


植物が大好きでよく自分で珍しい植物を作り出してしまうこと。

ホラー映画が好きだと言っていざ見るとなると泣く程嫌がること。

負けず嫌いで諦めがつくまでに時間が掛かること。

嘘が下手で本音しか言えないこと。

実は演劇部に興味があること。




本当に些細な事でも恋は僕に聞いてくるし話してくれる。



全部、僕の本当の大切な友達になるために。




「な、何だこりゃ!?」

焦る城戸先生の声で僕は我に返る。

城戸先生の驚く先には大きなヒマワリに似た植物が地面から生えてきたところだった。


それは恋が独自開発した植物(人食い花のように見える植物が生えるらしい…)でいつの間にか土の中に種を埋めていたらしく数十秒もたたないうちに地面から植物は生えてきたようだ。




ヒマワリのような花は全長十メートルはありそうだ。


とにかく大きい。恋、一体どうやってこんな植物を……



そう思っているとヒマワリの花びらの上にちょこんと人影が見えた。



「恋!?」

「光!受け止めて!」

「まさか」



受け止めるってまさか…そこから飛び降りるなんてことは



恋は思いっきり目を瞑りながら地面へジャンプしている。



やっぱりか!!



僕は冷静に氷を踏み台にして空中を駆け上がる。



そして今だ目を瞑って落ち続ける恋を抱きとめた。




そして恋は恐る恐る目を開けてから僕を見て何故か自信満々の表情。


僕は思わず大きくため息を吐いた。


「作戦Bってこれですか?」

「うん!上手くいったよ!」

「だからって突然飛び降りるのは危険ですよ」

「大丈夫だよ、光がいたから飛び降りたんだもん」



恋、僕が言っていいのかはわかりませんが人をそんなに簡単に信頼してはいけないと思うのですが…



その言葉を僕はグッと我慢してただ苦笑を浮かべる。




僕たちが地面に降りた頃、城戸先生の変な声が聞こえた。



「うわぁ!ちょちょちょっ!!!まっ!!待てっ!!俺を食べてもうまくないぞ!?」

悲鳴にも似た城戸先生の声。


僕が城戸先生の方を見るとなんと城戸先生があの化け物じみた大きさのヒマワリの花のような植物に捕まえられてまさに食べられそうになっていた。



「恋、あの植物は、人食い花なんですか?」

「さぁ?私も今日初めて見たからわからいけど、見た感じだとそうみたいだね」

「お前ら!!見てないで、助けろよっ!!」

「じゃあ、キドリン降参するのー?」


恋がそう問いかけると城戸先生はグッと悔しそうな表情。


「何も言わないなら助けてあーげない」

「くっそ!!わーったよ!降参降参!今回は俺の負けだっつーの!!だから、この化け物を消せ!!」

「はーい!!」



恋はニコニコしながら植物の根っこの部分に何か呪文を唱えた。

すると、植物はたちまちしゅるしゅると縮んでいき、しまいには種に戻ったのだった。



「今日は恋のお手柄ですね」

「前回は光のお手柄でキドリンに勝ったから、悔しかっただけ」

「負けず嫌いw」

「負けず嫌いで何が悪いのっ!!」



僕は本気で頬を膨らませて怒る恋を微笑ましげに見る。






いつか、君に言えるだろうか。

僕のこの気持ちを。










そんな光と恋を見て城戸はこっそりとため息を吐いたことは誰も知らない。


「やれやれ、やっと仲良くなりやがった」






真が演劇に誘われた時のお話の時、どうして演劇に参加したいと言った恋に光が即答でオーケイしたのかというとこんなことがあったからなんですよ~という感じで書いた軽そうで結構大事なお話でした。


ここまで読んでくれてありがとうございました!!!

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