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 Side:警視庁幹部



 まさか警察内部にここまで<正義警察>と言われる連中と、事もあろうに<人間解放同盟>なるテロ集団が紛れているなど思ってもいなかった。

 挙句に、その愚か者どもが悪魔の方を激怒させてしまうとは………


 今現在、幹部が集まって対応を協議しているが、もはや我々の中でも抑えが効かないレベルになりつつある。

 悪魔にとって契約というのは非常に重要だ。

 それは我々も聞いているので知っている。


 だからこそ<人間解放同盟>が少年を目の敵にしたのも、理由だけは理解できるのだ。

 理由だけは。


 「それで件(くだん)の少年はどうなったのだ?

 少なくとも警察署内で発砲、床に血が残っていた事までは分かっているのだろう?」


 「はい。

 ですが取調室の監視カメラが、少年の取り調べの時だけ録画されていません。

 内部の者が意図的に停止させています。

 既に停止させた犯人も所長の息子も拘束済みですが、未だに我々を舐め切っているようですね。

 人権を叫んでいます」


 「馬鹿が………!

 悪魔に支配されている現在において、人権に何の価値も無いわ。

 そんな事すら理解しておらんのか。

 頭が悪すぎて嫌になってくるな」


 「悪魔に支配されたあの時より、社会構造は一変しておる。

 それを悪魔の方々が分かり難くしておられるから、我らは今までと変わらないように生きていけておるだけだ。

 相手の慈悲に対して調子に乗るとは、日本人の恥にしかならん連中めが!」


 「この者どもは下っ端だ。しかし下っ端であるが故に理解していない。

 国家というものの意味も、国家として存続するという事の意味もな。

 悪魔の方々の慈悲で、日本は未だに日本として在れるのだ。

 それを揺るがしかねんこの事態。

 我々は重く受け止め、愚か者どもを潰さねばならん」


 「国家の権力と暴力が自分達には向かわぬと、バカどもは勝手に思い込んでおるのだ。

 だったら見せてやろうではないか、国家の権力と暴力がどのようなものなのかをな。

 我々は自衛隊と同じく、今の世では遠慮など要らんのだ。

 愚か者どもを叩き潰すぞ」


 「うむ。ヤクザどももそうだ。

 今や我らが国家の権力と暴力を十全に駆使して潰しても、何ら咎められぬ世だという事を思い知らせてやる。

 かつては雁字搦(がんじがら)めで動けなんだが、今は違うのだ」


 「そうよ。かつては一般人や政治家に最大限の配慮をせねばならなんだ。

 なのでマスコミどもが調子に乗って書き立てておったが、今は違う。

 我らが最も配慮せねばならんのは悪魔の方々なのだ。

 そしてあの方々は不正を潰せという方々でもある。

 ならば我々警察は今こそ不正と戦わねばならん。

 真正面からな」


 「真っ向から堂々と叩き潰してくれるわ!

 いつまでも我らが甘いと思うなよ。

 阿呆どもなど、まとめて悪魔の方々の所へ送り込んでくれるわ。

 日本の法で裁いてなどやらん、直接悪魔の方に差し出してやる!!」


 まさに容赦なしだな。

 日本の法で裁くとなると、どうしても甘い部分が多々ある。

 かつてからその甘さは指摘されてきたが、政治家が厳しくせんので何も解決できなかった。


 我々は犯人を捕まえる側であって、刑法を新たに作ったり書き換える側ではない。

 現行法で何とかするしかなかったのだ。


 しかしこれからは違う。

 それこそ悪魔の方々に差し出せば済むのだ。

 それで十分に重い罰を与えられる。


 悪魔の方々は日本の法のように甘くは無いからな。

 これを機に警察内部の膿も出してしまうべきだろう。


 「提案がございます。

 我々警視庁の中にも、警察の中にも愚か者は多く居るでしょう。

 その膿もついでに出してしまうべきだと思います。

 今こそ我らは正道に戻るべき。

 そう考えますが、如何(いかが)でしょうか」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 自分達に矛先が向くと黙るのか? それとも本気で考えているのか。

 その辺りは分からないが、幹部達はともかく警視総監の腹は既に決まっているように見える。


 今この時に出来得る限りの事をやっておかないといけない。

 後の者達に渡すにしても、なるべく良い形で渡さねば。


 警視総監は常々そう言っておられる方だ。

 だからこそ賛成してもらえると思い提案したのだからな。

 そして幹部達も目線を合わせてから、前を向いて姿勢を正す。


 「「「「「「「「「「異議無し」」」」」」」」」」


 「では先程の、我らの膿も全て出す。この大方針は硬く堅持させていただく。

 徹底的に潰すぞ、我らは警察なのだからな!!」


 「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」


 どうやら動き出したみたいだが、何故か軍隊のノリになってしまったな。

 とはいえ私以外の幹部連は相当に腹に据えかねていたらしい。


 私は異例とも言える早い昇進でこの地位に来たからな。

 まだそこまでの理不尽に晒された事は多くない。

 しかし他のベテラン幹部はな……


 おっと警視総監がこちらに来られたか。


 「海藤君、いいタイミングでの提案だった。

 君なら内部の掃除を提案してくれると思っていたよ。

 幾ら頑張っても内部に膿を抱えたままでは、上手くいく事なんてないからね。

 これでより良い形で後輩に任せられる。

 少しは肩の荷が下りた気分だよ」


 「それは良かったです。

 私もそれなりには色々と見てきましたので、アレらを何とかしなければいけないと思っていました」


 「うんうん。

 法以外の裁きに我々警察が加担する、その事に対する思いが無いわけではない。

 とはいえ現実に対応しなければいけないのも我々の仕事だ。

 今の現行法ではな、とても対応できん事が多すぎる。

 臨機応変にやっていかないとな」


 そう言って警視総監は去って行ったが、相変わらず会話と見せるのが上手い方だ。

 私は彼が<正義警察>と関りがあるのを知っている。

 とはいえ癒着しているんじゃない、連中を叩き潰す為だ。

 つまりは情報集めだな。


 <正義警察>はそもそも悪魔が地球に来る前から問題になっていた。

 警察や司法関係の一部に居たのだが、彼らは正義の名を履き違えている。

 自分が信じる正義ならば許されると思い込んでいるのだ、それによって自白の強要や意図的に罪を軽くしたりとしてきた。


 特に殺人事件に対する司法の愚かさを見れば分かりやすい。

 人一人の人生を奪っておきながら、のうのうと生き永らえるような判決を出すのだ。

 トチ狂っているとしか思えないし、あんなものはメチャクチャに過ぎる。


 司法の愚か者どもは、そもそも日本の刑務所が快適だという事実を分かっていない。

 刑務所という場所に閉じ込められるだけで罰だと勘違いしているのだ。

 そんな事は無い、アレは行動範囲の制限に過ぎん。

 あんなものは罰とは呼ばんのだ。


 本当の罰とは<鞭打ち>であったり<棒叩き>であったり、そういうものこそが本物の罰となる。

 唯の行動範囲の制限は罰とは呼ばんのだ。

 それが終われば出所してくるのだから、遺族の怒りというのはよく分かる。

 それでも我らにはどうする事も出来なかった。


 法律以上の事は出来ないので仕方ない、そう己らを慰めるしかなかったのだ。

 しかし今は違う、上位者が悪魔に変わったのだ。

 我らはその上位者にお伺いを立てるという体(てい)で物事を進める事が出来るようになった。


 悪魔の方々なら言われるであろう、「不正をする奴らは食い物でよい」と。

 悪魔の方々の食い物になるほど重い罰はあるまい。

 人間だと手加減するが、悪魔の方には手加減をする理由が無いからな。

 徹底的にやってくれるだろう。


 政治家どもも含めて思い知るがいい。

 我々とて人間、ただの歯車ではないのだ。

 今まではそう在らねばならなかったが、これからは違う。

 我々は本当の警察に戻るのだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:警視総監



 海藤君もまだまだ若いねえ、きっとこれからは自分達が正しい道に行けると思っているんだろう。

 しかし、その正しさは誰が証明するんだろうねえ?

 君も十分に膿になる素養はあるんだよ? 気づいていないみたいだけど。


 さて、それよりも“女王陛下の側近”の方に情報を上げておかないといけない。

 私は警視総監として、これから先も日本を良くしていきたいんだ。

 ならば何千年も生きる方に託すのが正しい選択というものさ。


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