0059
Side:橘八重
「そもそも一般人と同じ感覚なら、無実の罪で犯人に仕立て上げようなんてしませんよね?
それをしている時点で、一般人の感覚とはズレ過ぎてます。
それが分かっていないんじゃ、社会とは隔離されていると言われても仕方ないでしょ」
「「………」」
この人達ってマジで理解してなかったんだな?
無実の罪で犯人に仕立て上げられるのが当たり前、なんて事は流石に無いだろうけど、そういう事もあるって時点で狂ってるとしか思えない。
でも内部に居たら、それが狂ってるとは思えなくなるわけだ。
一般常識に照らし合わせれば、無実の罪で犯人に仕立て上げようとしている方が犯罪者だ。
この場合は、俺を犯人に仕立て上げようとした刑事の方が犯罪者なんだよ。
まあ、俺に対して発砲した時点で殺人未遂なんだけどさ。
「!!!」
「しまった!?」
俺の一言で思い出したのか、刑事はもう一人の手が緩んでいたので俺に銃を構え、そして……
パァン!!
その銃口から出た弾は、見事に俺の頭部に直撃。
そして俺は意識を完全に失った。
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Side:エルトアリア
「!? ……グレーテ・ファナ・ルヲンヌ!」
我は彼が死の間近であるという事を感じ取り、即座に彼の下へと転移した。
いつもの【転移魔法】は通常のものだが、こちらは緊急用の【転移魔法】となる。
通常の【転移魔法】だと壁に埋まったり、何かの障害物と重なったりという危険性があって使い辛い。
なので魔力をかなり消費するが、緊急用としての【転移魔法】が開発されたという経緯がある。
これは単純な発想で作られており、転移先が危険なら先に魔法で吹き飛ばしてから転移すればよい。
という極めて力技な方法で解決しているものとなる。
当然、土の下などの危険な所には意味が無いので、そういう場所へはそもそも使ってはならん。
まあ、そんな所へ転移しようという阿呆はおらぬがな。
「ファルフォーディア・ヴェクスセディーラ・トゥルヴォクス・エルリクスアーラ!!」
これは【最上級治癒魔法】となるが、これでも短縮形で発動している。
流石は最上級というべきか、死んでいても復活は可能な魔法なのだ。
流石に死後1時間ほど経っていては無理だが、仮に死んだとしても三分も前ではないのだ。
余裕で復活させられる。
それよりも彼の頭から何やら出て来たな。
我はそれを手に取って確認すると、変形しているものの銃とやらの弾である事が分かった。
「う、うう……」
「ふむ、そこでまだ生きているゴミの所為か。
二匹いるがどちらでも構わぬな、片方が関わりなかろうが連帯責任だ。
舐めた事をしおって………!!」
彼が本当に死にかけた。
それを今更ながらに理解した我は、己の全てが沸騰するほどの怒りに見舞われる。
それでも【憤怒】に変わらぬ我は、やはり<色欲の悪魔>なのであろう。
それよりも万死に値する事をしてくれたのだ。
覚悟してもらおうか。
「ルヲンヌ」
我はゴミ二匹と彼を転移で屋敷に連れて来ると、まずは彼を我のベッドへと連れて行く。
しかしこうも何度も彼が命の危険に見舞われるとは、あの国はいったいどうなっておるのだ? 幾らなんでもおかし過ぎるぞ。
やはり一度半数は滅ぼさねばならぬか。
我は彼をベッドに寝かせた後、拷問部屋に戻りて拷問を始める。
ビデオカメラは適当に三脚とやらで立てておき、高次圧縮精神触媒を作製するつもりで拷問を開始。
苦痛と絶望を与えていく。
…
……
………
「まったくもって、クズが考えそうな事だ」
話の中身としては単純な事であった、が複雑に絡んではいる。
まず片方の刑事とやらは<人間解放同盟>なる組織の一員であった。
まあ、そのような組織の中でも木っ端だったようだが、こいつが警察署の所長の息子に頼まれたらしい。
それが彼を犯罪者に仕立て上げる事であり、その理由は所長の息子とやらが彼の装備を奪う事であったという。
ローブなどの一式が無くなっておるからおかしいとは思っていたが、そんな下らぬ事が理由であったとは。
流石はゴミどもだな、もはや畜生と変わらぬ。
「どうやら己らが何をやったかも理解しておらぬらしい。
アレは我がアロハヌス家が送った物であり、我が送った物でもある。
それを奪おうという事は、我に宣戦布告したということ。
なれば滅ぶ覚悟が出来ておると見做す」
我はビデオカメラを片付け、拷問部屋を出てメイドを呼ぶ。
すぐに駆け付けたので、我は拷問部屋の中に居る者は好きに食えと言っておいた。
ただし殺すなとも言っておいたので大丈夫であろう。
死んだら死んだ時だし、畜生がどうなろうが知った事ではない。
我は即座に新宿のタワーマンションに飛ぶと、そこに居たエギルターサとグラドウェムに詳細を説明。
両者共に嗤いながらも、目が一切笑っておらぬ。
我と同じように激怒したらしいな。
とりあえずグラドウェムに動画を流させ、我はその間にどうするかを考える。
未だ沸騰するほどの怒りを抱えておるが、それ故に奴らの末路は考えねばならん。
唯の串刺しで終わらせるほど、我は優しくないのでな。
しっかりと地獄への道を考えてから突き落とさねばならぬ。
「動画、完了しました。
ゴミどもの末路は如何しますか?
メイド長から聞いていますが、主様が契約した方は【精魂の雫】の所持者と聞きます。
その方を殺しかけた以上、生易しい事で済ませる訳にはいきません」
「当然だ。
それ以前に、遠くない未来において我が夫となる者に手を出したのだぞ?
我がどれほどの怒りに塗れているか分かろう。
憤怒にならぬは、我が魂の奥底から色欲の悪魔だという証明でもあるがな」
「なればこそ、此度の報復は最大級に苛烈なものとせねばなりせん。
最高位悪魔の夫となれる方。
それがどれほど希少な存在なのか、ゴミどもは全く理解しておらぬようですしね」
「特に主様の器を満たせるとなれば、数万年現れなくても納得できるほどです。
それほどまでに主様の精の器を満たすのは難しいというか、ほぼ不可能ですからね」
「精を注いでも時と共に失われますし、何より多種多様な精が混じると子は成せません。
少ない人数で、しかも似たような種の精でなければ子は成せない。
しかし主様の精の器はあまりに大きすぎます。
それこそが最強の証でもあるのですが」
「我はかつての村の婆様からも言われておる。
「お前が子を成す事は不可能だ。大人しく諦めろ」とな。
ハッキリと子に突きつけるところは、実にあの婆様らしかったが」
思わずあの婆様を思い出してしまい、多少の怒りは減った。
それでも未だ、精神の奥底から煮え滾る怒りが噴出してくるがな。
「それはともかくとして、人間どもの末路を如何しましょう?」
「…………邪魂縛鎖結晶にしてしまうべきか?
ゴミ掃除のついでに邪魂縛鎖結晶にし、それをゴミ集めの商品としてくれてやるか」
「アレを作るのですか?
まあ、怠惰の者達は喜ぶでしょうし、地獄に落とすという意味では正しいのですけども……」
「それが駄目なら、やはり牧場でしょうか? 捕縛した者を徹底的に家畜として扱う人間牧場。
主様の作られる、肉魂単一環を付ければ良いと思いますよ?
案外と怠惰の連中が大挙して来そうな気もしますが」
「ふむ、それなら同胞も文句は言うまいな。
それに死ぬまで地獄を味あわせる事も出来る。
我に喧嘩を売った以上、簡単に高次圧縮精神触媒にしてはな。
あっさりと終わり過ぎる。
そこまで温い罰では今後も困るのでな、最大級にする為にも女王を動かすか」
「家畜牧場には用地なども必要ですからね。
王都の近くに作れば同胞も喜ぶでしょう」
「あの女王が干乾びるまで搾り取らぬか心配ですけどね」
アレも同胞から睨まれたくはないであろうから、おそらく大丈夫であろうよ。




