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 Side:橘八重



 「そもそも一般人と同じ感覚なら、無実の罪で犯人に仕立て上げようなんてしませんよね?

 それをしている時点で、一般人の感覚とはズレ過ぎてます。

 それが分かっていないんじゃ、社会とは隔離されていると言われても仕方ないでしょ」


 「「………」」


 この人達ってマジで理解してなかったんだな?

 無実の罪で犯人に仕立て上げられるのが当たり前、なんて事は流石に無いだろうけど、そういう事もあるって時点で狂ってるとしか思えない。

 でも内部に居たら、それが狂ってるとは思えなくなるわけだ。


 一般常識に照らし合わせれば、無実の罪で犯人に仕立て上げようとしている方が犯罪者だ。

 この場合は、俺を犯人に仕立て上げようとした刑事の方が犯罪者なんだよ。

 まあ、俺に対して発砲した時点で殺人未遂なんだけどさ。


 「!!!」


 「しまった!?」


 俺の一言で思い出したのか、刑事はもう一人の手が緩んでいたので俺に銃を構え、そして……


 パァン!!


 その銃口から出た弾は、見事に俺の頭部に直撃。

 そして俺は意識を完全に失った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:エルトアリア



 「!? ……グレーテ・ファナ・ルヲンヌ!」


 我は彼が死の間近であるという事を感じ取り、即座に彼の下へと転移した。

 いつもの【転移魔法】は通常のものだが、こちらは緊急用の【転移魔法】となる。


 通常の【転移魔法】だと壁に埋まったり、何かの障害物と重なったりという危険性があって使い辛い。

 なので魔力をかなり消費するが、緊急用としての【転移魔法】が開発されたという経緯がある。


 これは単純な発想で作られており、転移先が危険なら先に魔法で吹き飛ばしてから転移すればよい。

 という極めて力技な方法で解決しているものとなる。

 当然、土の下などの危険な所には意味が無いので、そういう場所へはそもそも使ってはならん。


 まあ、そんな所へ転移しようという阿呆はおらぬがな。


 「ファルフォーディア・ヴェクスセディーラ・トゥルヴォクス・エルリクスアーラ!!」


 これは【最上級治癒魔法】となるが、これでも短縮形で発動している。

 流石は最上級というべきか、死んでいても復活は可能な魔法なのだ。

 流石に死後1時間ほど経っていては無理だが、仮に死んだとしても三分も前ではないのだ。

 余裕で復活させられる。


 それよりも彼の頭から何やら出て来たな。

 我はそれを手に取って確認すると、変形しているものの銃とやらの弾である事が分かった。


 「う、うう……」


 「ふむ、そこでまだ生きているゴミの所為か。

 二匹いるがどちらでも構わぬな、片方が関わりなかろうが連帯責任だ。

 舐めた事をしおって………!!」


 彼が本当に死にかけた。

 それを今更ながらに理解した我は、己の全てが沸騰するほどの怒りに見舞われる。


 それでも【憤怒】に変わらぬ我は、やはり<色欲の悪魔>なのであろう。

 それよりも万死に値する事をしてくれたのだ。

 覚悟してもらおうか。


 「ルヲンヌ」


 我はゴミ二匹と彼を転移で屋敷に連れて来ると、まずは彼を我のベッドへと連れて行く。

 しかしこうも何度も彼が命の危険に見舞われるとは、あの国はいったいどうなっておるのだ? 幾らなんでもおかし過ぎるぞ。

 やはり一度半数は滅ぼさねばならぬか。


 我は彼をベッドに寝かせた後、拷問部屋に戻りて拷問を始める。

 ビデオカメラは適当に三脚とやらで立てておき、高次圧縮精神触媒を作製するつもりで拷問を開始。

 苦痛と絶望を与えていく。


 …

 ……

 ………


 「まったくもって、クズが考えそうな事だ」


 話の中身としては単純な事であった、が複雑に絡んではいる。

 まず片方の刑事とやらは<人間解放同盟>なる組織の一員であった。

 まあ、そのような組織の中でも木っ端だったようだが、こいつが警察署の所長の息子に頼まれたらしい。


 それが彼を犯罪者に仕立て上げる事であり、その理由は所長の息子とやらが彼の装備を奪う事であったという。

 ローブなどの一式が無くなっておるからおかしいとは思っていたが、そんな下らぬ事が理由であったとは。

 流石はゴミどもだな、もはや畜生と変わらぬ。


 「どうやら己らが何をやったかも理解しておらぬらしい。

 アレは我がアロハヌス家が送った物であり、我が送った物でもある。

 それを奪おうという事は、我に宣戦布告したということ。

 なれば滅ぶ覚悟が出来ておると見做(みな)す」


 我はビデオカメラを片付け、拷問部屋を出てメイドを呼ぶ。

 すぐに駆け付けたので、我は拷問部屋の中に居る者は好きに食えと言っておいた。

 ただし殺すなとも言っておいたので大丈夫であろう。

 死んだら死んだ時だし、畜生がどうなろうが知った事ではない。


 我は即座に新宿のタワーマンションに飛ぶと、そこに居たエギルターサとグラドウェムに詳細を説明。

 両者共に嗤(わら)いながらも、目が一切笑っておらぬ。

 我と同じように激怒したらしいな。

 とりあえずグラドウェムに動画を流させ、我はその間にどうするかを考える。


 未だ沸騰するほどの怒りを抱えておるが、それ故に奴らの末路は考えねばならん。

 唯の串刺しで終わらせるほど、我は優しくないのでな。

 しっかりと地獄への道を考えてから突き落とさねばならぬ。


 「動画、完了しました。

 ゴミどもの末路は如何(いかが)しますか?

 メイド長から聞いていますが、主様が契約した方は【精魂の雫】の所持者と聞きます。

 その方を殺しかけた以上、生易しい事で済ませる訳にはいきません」


 「当然だ。

 それ以前に、遠くない未来において我が夫となる者に手を出したのだぞ?

 我がどれほどの怒りに塗れているか分かろう。

 憤怒にならぬは、我が魂の奥底から色欲の悪魔だという証明でもあるがな」


 「なればこそ、此度の報復は最大級に苛烈なものとせねばなりせん。

 最高位悪魔の夫となれる方。

 それがどれほど希少な存在なのか、ゴミどもは全く理解しておらぬようですしね」


 「特に主様の器を満たせるとなれば、数万年現れなくても納得できるほどです。

 それほどまでに主様の精の器を満たすのは難しいというか、ほぼ不可能ですからね」


 「精を注いでも時と共に失われますし、何より多種多様な精が混じると子は成せません。

 少ない人数で、しかも似たような種の精でなければ子は成せない。

 しかし主様の精の器はあまりに大きすぎます。

 それこそが最強の証でもあるのですが」


 「我はかつての村の婆様からも言われておる。

 「お前が子を成す事は不可能だ。大人しく諦めろ」とな。

 ハッキリと子に突きつけるところは、実にあの婆様らしかったが」


 思わずあの婆様を思い出してしまい、多少の怒りは減った。

 それでも未だ、精神の奥底から煮え滾(たぎ)る怒りが噴出してくるがな。


 「それはともかくとして、人間どもの末路を如何(いかが)しましょう?」


 「…………邪魂縛鎖結晶にしてしまうべきか?

 ゴミ掃除のついでに邪魂縛鎖結晶にし、それをゴミ集めの商品としてくれてやるか」


 「アレを作るのですか?

 まあ、怠惰の者達は喜ぶでしょうし、地獄に落とすという意味では正しいのですけども……」


 「それが駄目なら、やはり牧場でしょうか? 捕縛した者を徹底的に家畜として扱う人間牧場。

 主様の作られる、肉魂単一環を付ければ良いと思いますよ?

 案外と怠惰の連中が大挙して来そうな気もしますが」


 「ふむ、それなら同胞も文句は言うまいな。

 それに死ぬまで地獄を味あわせる事も出来る。

 我に喧嘩を売った以上、簡単に高次圧縮精神触媒にしてはな。

 あっさりと終わり過ぎる。

 そこまで温い罰では今後も困るのでな、最大級にする為にも女王を動かすか」


 「家畜牧場には用地なども必要ですからね。

 王都の近くに作れば同胞も喜ぶでしょう」


 「あの女王が干乾(ひから)びるまで搾り取らぬか心配ですけどね」


 アレも同胞から睨まれたくはないであろうから、おそらく大丈夫であろうよ。


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