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 Side:エルトアリア



 ダダダダダダダダダ!


 先程の女と一人の男が走ってこちらに来た。

 が、あれは佐藤道明という男ではないな。


 ヤクザと抜かした男の言葉では、佐藤道明なる者はメガネを掛けて痩せたヒョロ長い見た目の者だと言っていた。

 今走ってきたのはデブのうえにメガネを掛けておらん。


 「お待たせしました。私はクレーム「お前ではない」担当の……」


 「我は佐藤道明という者を呼んで来いと言ったのだ。

 我の言葉が理解できなんだか? それとも我を舐め腐っておるのか?

 舐めておるのであれば構わん、今から我と全面戦争の開始だ」


 「お、お待ちを!!

 我々と致しましては、いきなり呼んで来いと言われても困ります。

 そもそも何の用かも分「ケェル」か」


 ドゴン!


 鬱陶(うっとう)しい戯言(ざれごと)をホザくので、横に居た受付の女の首から上を吹き飛ばした。

 男であれば精を搾る程度は使えるが、女など我らサキュバスにとって価値は無い。

 それに呼ばせに行ったのにゴミを連れて来たのだからな。

 死ぬのは当然だ。


 「お前は我を完全に舐めておるようだな?

 貴様らの意見など、どうでもよい。

 連れて来るか皆殺しか、好きな方を選べ。

 貴様らにはその選択肢しかない」


 「す、すぐに呼んで参ります!!」


 ダダダダダダダダダ!!


 汗を掻いたデブは走って行ったが、役立たずはこれだから困るわ。


 「無能め。己がゴネれば我が折れるとでも思っているのか?

 あまり邪魔臭いようだと、日本人の半数を殺すぞ。

 そうすれば残った者は己らの身分を理解するであろうからな。

 家畜如きが調子に乗るとは……」


 「まったくもって己らの立場を理解しておらぬようですね。

 私達が全てを管理し、牧場とやらにしてしまった方が良いのでは?

 人間牧場というヤツですが」


 「私も賛成でーす。無能に自由意志なんて要らないでしょう。

 家畜は家畜だと分からせるべきだと思いますよ?

 しないから調子に乗るんですし」


 「まったくだな。

 あの女王も何を考えているのか知らんが、一部の役に立つ者にだけ自由意志を与えればよい。

 大半の者は家畜にしてしまうべきであろう。

 それこそ有能を示した者だけ上にあげればよい。

 この日本という国には面白い物も多いのだ。

 その中にあるではないか、Sランク認定がどうとかいう作品がな」


 「なるほど。

 Sランクだけに自由意志を与えればよく、後は家畜として扱うって事ですね。

 それぐらいで丁度いいのでは?

 人間なんてすぐに調子に乗る猿のようですし、腰だけ振らせればいいでしょう」


 「それよりも搾精機のような物でも作った方が良いのではありませんか?

 磔(はりつけ)にして搾り取った方が手っ取り早いでしょう」


 エギルターサもグラドウェムも当然だが分かって言っている。

 サキュバスは精だけではなく、心や魂の波動も喰らうのだ。

 だからこそ無機質に搾精する意味は無い。


 とはいえ人間どもには多少の絶望を理解させねばならん。

 己らの立場が危うい事を理解せぬから調子に乗るのだ。


 ダダダダダダダダ!!


 走ってくる音がしたが、今度は人間の中でも年寄りに近い者が来たな。

 どうやら完全に我を舐め腐っておるらしい。

 血祭りにあげられねば分からぬなら、血祭りにあげてやろうぞ。


 「はぁ、はぁ……お、お待ちください!

 佐藤道明なる人物は確かに我が局の者なのですが、今日は出社しておらず、更には連絡にも出ぬのです!

 ですので、今現在どこに居るのかが全く分かりません!!」


 「局の者は全員が携帯電話を持っていますが、佐藤道明の携帯にかけても一向に繋がらないのです。

 その所為でどこに居るかが全く分からず……」


 ウーーーッ! ウーーーーッ!


 うん? これは警察とか言う奴らの車両の音だな。

 何をしに来たのか知らぬが丁度いい。

 哀れな者の末路というものを教えてやる。


 ウィーン………ダダダダダダダダ!!


 「我々は警察だ! 動くな!!」


 「文京区の警察か?

 それはともかく、お前達には後で報復に行かねばと思っていたので都合がいい」


 「ほ、報復?

 しかも悪魔の方が、なぜ我々に報復など……」


 「何を言っている?

 お前達警察は橘八重、つまり我が契約している者が警察に相談したにも関わらず、全く動こうとしなかったではないか。

 つまり貴様らも我に喧嘩を売っておるという事よ」


 「えっ? ……相談?」


 「そうだぞ。

 何でも我の契約者をビデオカメラに写し、面白おかしく嘘と捏造を行う事によって、己が有名人になれると思っていた二人組がおったのだよ。

 そいつらはテレビ局が我が契約者に迷惑を掛ける前日に来ていてな。

 その事で契約者は警察に通報、何故か警察はまったく動いておらぬ。

 理解したか?」


 「ち、ちょっとお待ちを。

 我々はそのような事を聞いておりませんし、連絡が入らねば動けません。

 もしかしたら、どこかで止まっていたのかも……」


 「つまり、現場の兵には知らせず、どこかで握り潰した者が居るという事か。

 我が契約者は警察のホームページに一度、そしてその後に110番という通報もしておるのだ。

 それでも動かんのであれば、そんな組織は要らぬと思わぬか?」


 「いえ、あの、それを現場の我々に言われましても………」


 「ふむ、確かにそれもそうだな。現場の兵は上の指示に従わざるを得まい。

 となると警視庁とかいうヤツを潰すか。

 ゴミの如く処分されれば理解しよう。己らの立場が薄氷の上のように脆いとな。

 そもそも国家主権など無く、支配されているという事の意味すら理解しておらぬ」


 「え? 国家主権が無い………?」


 「当たり前であろうが。

 己らだけではない、この地球というもの全体が我ら悪魔の支配下にある。

 その事すら理解していなかったのか?

 あくまでも食料と異界探索の為に生かしてやっているだけだ」


 「どうやらこの者ども、今までと生活が然して変わらぬからと、随分と我々悪魔を侮っていたようですね。

 やはりこの程度の者など家畜として扱うが相応しいでしょう。

 家畜扱いされねば理解せぬならば、家畜として扱うのが当然です。

 その程度も分からぬ無能なのですから」


 「わ、我らが家畜だと!?」


 その一言に我は嘆息する。

 どうやらこやつらは本気で理解していなかったようだ。

 彼は正しく理解していたが、やはり有象無象は理解しておらぬらしいな。

 頭が悪すぎるわ。


 「とりあえず、この配信を見ている同胞よ。

 佐藤道明なる者を探してひっ捕らえ、そして鳥居の前の者に預けろ。

 そうすれば高次圧縮精神触媒をやる。

 量は200グラムだ。

 ああ、日本にいる悪魔ならば誰でも構わんぞ」


 「宜しいのですか?

 この国の政府が100グラム62億円で購入した物ですが」


 「「「「「「「「「「62億円!?」」」」」」」」」」


 「人間どもは生活に役立てる為に高い値で買っただけであろう。

 そもそも虚界においてすら、高次圧縮精神触媒を作れるのは我だけなのだ。その貴重性は極めて高い。

 そして作成者の我がどう使おうが我の自由でしかない。

 そうであろう?」


 「その佐藤道明やらの頭の中にある繋がりも、全て明らかにしなければいけませんしね。

 そいつが主様の契約者を殺そうとしたのですし、ヤクザに車を突っ込ませた張本人ですしね。

 つまりヤクザとも関りがあるということ」


 「「「「「「「「「「ヤクザ!!!」」」」」」」」」」


 「まさか悪魔の方々に壊滅させられたはずの暴力団員が、未だに生きて悪さをしているなど……!」


 「まさか佐藤君が暴力団と関わっていたなんて………」


 どうやら知らなんだようだな。

 とはいえ知らなんだと言えば許される事など無い。

 我に喧嘩を売っておるという事実は消えぬのだ。


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