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Side:エルトアリア
家電量販店とやらで購入したが、どうやら異界探索者であればハンディタイプよりも便利な物が使えるようだ。
帰って研究せねばならぬであろうが、同じような物をナノマシンや専用機器も必要なく作れると思うがな?
そもそも魔製貴族がそれに気づいていないはずがあるまい。
魔力を動力源にすればよいし、メガネか何かに付ければ視点と同じものは写せよう。
となると、どこかから制限でも掛かったか?
異界探索者を贔屓する為……ではないな。
悪魔がそのような事を考えるはずが無い。
という事は、おそらくそれでは職人的に気に入らんという事であろう。
我もそうだが研究者や職人というのは、己の拘りを強く持つからな。
なんでもいいから、とりあえず作る者。
じっくりと思考して図面を書いてからしか作らぬ者。
適当にこねくり回してから、徐々に形にしていく者。
アプローチの仕方は数多あるものよ。
それはともかくビデオカメラをエギルターサに持たせた我は、映せている事を確認してから目的のテレビ局に向かう。
なお、一度タワーマンションに戻り、もう一人従者を追加した。
何故なら横でノートパソコンとやらに繋ぎ、ネット空間に配信せねばならんからだ。
今回のものはライブ配信というヤツで、録った映像を加工してから流す物ではない。
そちらはライブ配信が終わった後に流す事になろう。
一応は個人情報とやらに配慮せねばならんらしいからな。
「エギルターサ、準備は出来ているな?」
「はい。
…………既にライブ配信中でございますので、ご自由にどうぞ」
「そうか。ではまずは自己紹介からだ。
我が名はエルトアリア。
最高位悪魔である十三柱の一柱であり、気に入ってはおらぬが<無貌のエルトアリア>と言われておる。
無貌とは顔の無い、つまり正体不明を意味する言葉だが、実際には我が淡々と無表情に敵を始末していった事に由来する二つ名だ」
「ちなみにですが、その事は<無貌の虐殺事件>と虚界では言われております。
その時に主様が虐殺したのは全て高位悪魔であり、それらに傷を受ける事も無く淡々と始末していったのです。
つまり高位悪魔ですら抵抗も許されない、圧倒的な実力差があったという事でございますね」
「いちいち説明せんでもいい。
とはいうものの、人間どもは知らぬ故に教えてやる必要はあるか。
そも悪魔とは下から下級、中級、上級、高位級と分かれておる。
その高位級の頂点が、最高位悪魔と呼ばれる我を含めた十三柱だ」
「ちなみにメイド長兼主様の右腕である私は、高位悪魔に分類されております。
映らないので自己紹介をしておかないと、私が誰か理解もされませんので」
「知っておる者は声を聞いただけで震えあがるがな。
ちなみにビデオカメラを持っておるのは、我の右腕である<静止のエギルターサ>だ。
知っている者には<死を齎す者>と言った方が分かりやすいかもしれん」
「そちらの二つ名は好きではないので、お止め下さい。
そもそも死というのであれば、ノートパソコンを弄っているそっちでしょう」
「メイド長には負けますよ?
ちなみに私はグラドウェムという、木っ端のしがない悪魔でーす♪」
「副メイド長であり、<爆砕のグラドウェム>という二つ名を持つでしょうに。
何を自分は普通だというフリをしているのですか。
そもそも主様に従ってきた我らが弱いはずが無いでしょう。
そんな事はあり得ないのですよ」
「まあ、弱いと生き残れない事は沢山ありましたからねえ……。
今思い出しても、よく生きてますよ。私達」
「ゴホン!
昔の思い出話は横に置いておけ。言われると困る奴らも多いからな。
脛に傷を持つ者は十や二十では足りぬほどだ。
それはともかく我の後ろに見えているは、愚か者の巣となる。
文京放送とかいう組織の建物だな」
我は手で指し示しながら、何故このような所に来たかを話していく。
「ここに来たのは難しい事ではない。
橘八重という名を聞いた事があろう。彼の者と我は契約をしておる。
つまり彼の者に手を出すとは、我に喧嘩を売るという事でもあるのだ。
当然、我が黙っておる事などあり得ん。
何故なら我は最高位悪魔であり、最高位悪魔が人間如きに喧嘩を売られて何もせぬなど沽券に関わるからだ」
「つまり愚か者どもは主様が動く大義名分を、知ってか知らずかこちらに差し出したという事ですね。
そして愚か者どもが知っているか知っていないかなど、どうでもいいのです。
無知は罪。知らぬから滅ぼされる」
「まあ、当たり前の事ですねー。
知らないなら黙っていればいいだけ。
地球に<沈黙は金、雄弁は銀>という言葉があるんですけど、人間どもは頭が悪いのか理解していないようです」
「彼の者の家に車が突っ込んだのだが、その事故が起こってすぐ我は彼の者の近くへと転移した。
その際に車に乗って突っ込んだ者を確保し、虚界の我の屋敷の地下。
それも専用の拷問部屋に突っ込んだ。
その後は彼の者を瓦礫の下から助け【治癒魔法】で治療。
そして我は戻って拷問を開始」
そこで一旦言葉を区切った後に、再び話し出す。
「我は色欲の悪魔である。当然ながら人間如きの心を読むなど容易い。
その結果、この文京放送の者がヤクザに依頼して起こさせた事が分かった。
つまり虚界十三傑である我に対して宣戦布告をしてきたわけだ。
ここに居るであろうゴミはな」
「主様に宣戦布告しておいて、無事に済むなどと思っているのでしょうかね?
それに、その愚か者だけではないみたいですので、私としては楽しみです」
「そうそう。
拷問ついでに食えるし、私達としてはありがたい限りです。
心配しなくても、その死体すら有効活用してあげますから、気にしなくていいですよ。
死食花などは、余さず肉を貪ってくれますからねえ」
「その前に奪血虫に血を抜かせるのが先だがな。
あれらなら短時間に人間の血の大半を奪うだろう。
その後に死食花に放り込んでやればいい。
骨まで溶かして食うであろうよ」
「最後まで手間が掛からず楽ですし、まともならまだしも、ゴミに生かす価値は無いですからねえ。
何故に主様に喧嘩を売って助かると思えるのか………。
ま、知らないんでしょうけど」
「それでは、そろそろ行こうか。
この配信を見ている者は、ゴミの末路をしっかり見ているがいい。
同じ目に遭わない為にもな」
我はそう言ってから建物に入り、受付にいた女に対して口を開いた。
「ここに佐藤道明という者がいるだろう? そいつを呼んでこい」
「はぁ? ……頭のおかしい人のようですので「ドゴォン!!」警察を呼びま」
「最高位悪魔たる我が呼んで来いと言っているのだ。
それとも今すぐ死にたいか?」
「た、た、ただいま呼んで参ります!!!」
ダダダダダダダダダ!!
受付の女は走って行ったが、我は正しく悪魔としての恰好をしているのだがな。
この恰好を見ても分からんのか? 流石に頭がおかしいとしか思わんぞ。
「我は悪魔だと分かる恰好をしているはずだがな。
何故この恰好を見て、相手が悪魔だと理解できんのだ。
我には意味が分からん」
「あの者の頭が悪いだけでは?」
「コメントには、
「テレビ局の受付なんてあんなもの。バカでも出来る仕事なので、コネで入ったバカにやらせる」
と書いてありますね」
「なるほど、縁故を頼りに雇われた無能というわけか。
通りで頭のおかしい事を言い出すはずだ。
ヤクザとかいう連中と関りがあるのは、この文京放送とかいう組織も同じなのかもしれんな」
我とてヤクザなる者がどういう者かは知っておる。
というより知識として得ておいた。
なのでそやつらと関りがあるというのが致命的だという事も分かっていて、先程の事をあえて言ったのだ。




