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 Side:エルトアリア



 「すみません。

 彼は被害者ですが、一応事故当時の状況を聞かねばなりませんので……」


 「ふむ。それが寝ている最中でもですか?」


 「申し訳ありません。

 事故や事件の際には、被害者や加害者に関係なく聞かねばなりませんので……」


 「仕方ありませんね。

 私もやらねばならない事がありますので構いませんよ。

 時間も掛かるかもしれませんし、私は一旦これで戻りましょう。

 では後で……ルヲンヌ」


 【転移魔法】で戻ったのは虚界の屋敷です。

 彼の身を危険に晒したゴミの事を思い出したので、まずはそいつを拷問に掛けて聞き出さねばなりません。

 ま、心も読むので私の拷問に耐えられる者は居ませんけどね。


 ガチャッ! ………バタン!!


 「クソッ!!

 なんでこんな訳の分からねえとこに閉じ込めやがった!!

 どこの組のモンか知らねえが、さっさと出しやがれ!!」


 「組というのがよく分かりませんが、これからお前には聞かなければいけない事がありますからね。

 じっくりと聞かせてもらいますよ」


 「ハッ! どこのどいつか知らねえが、草田組を舐めるんじゃねえぞ!

 悪魔どもにやられたとはいえ、壊滅なんぞはしてねえんだ。

 オレ達ヤクザもんが減った事で調子に乗ってやがるんだろうが、覚悟しておけよ。

 テメェの家族も含めてズタズタにしてやる」


 「ほう! 人間如きがどうやるのか知りませんが、ぜひやってみせて下さい。

 この最高位悪魔の一柱たる私に何が出来るのかは知りませんがね?」


 「は? ……あ……ああ………!」


 どうやら私が悪魔だとようやく気付いたようですね。

 着ている服が悪いとしても、日本の者と違って私は白髪なので見分けはつくでしょうに。

 この者は目も節穴のようですね。

 まあ、暴力で生きてきたゴミのようですし、それ以上の暴力で潰されるのは本望でしょう。


 「あ、いや、オレは悪魔の方だなんて思っておらず……」


 「おやおやおやおや、いけませんねえ。

 先程あれだけの啖呵(たんか)を切ったのですから、ぜひ頑張って耐えて下さい?

 ここは私専用の拷問部屋。ここで数多の私に歯向かったゴミが拷問を受けて潰されてきました。

 実に数千年もの間、ね?」


 「ま、待ってくれ。

 オレは悪魔の方に敵対なんてするつもりはねえ!!

 さっきのは言葉のアヤってヤツであって、決して本心ってワケ「見苦しい」じゃ………」


 「お前は私達悪魔に嘘が通じると思っているのか?

 だとすれば随分と舐めてくれるな。

 人間如き木っ端に舐められては悪魔の沽券に関わる。

 覚悟しろよ、ゴミ。徹底的に潰してやろう」


 「い、いや、待って……オレはそん、ギャァァァァァァァァァァァァァ?!??!?!!」


 ゴミの悲鳴など聞いていても楽しくないのですがね。

 とはいえ、こいつには人間が高次圧縮精神触媒に使えるかどうかの実験も兼ねて、十二分に拷問の限りを尽くしてくれましょうか。

 ふふふふふふふふふふ………


 …

 ……

 ………


 「ゴミめが、随分といい度胸をしている。

 私の夫に対する攻撃である以上、それは私に対する宣戦布告に等しい。

 須(すべか)らく皆殺しにしてやるが、それだけでは飽き足らんな。

 何かもう一つ二つ、工夫を凝らさねば………」


 私は色々と思案を巡らせる。

 目の前には息も絶え絶えで死にかけているゴミが呻いているが、どうでもいい。

 どうせコイツは実験用のゴミに過ぎんのだ。

 それに高次圧縮精神触媒には使えそうなのでな、後で子孫に命じておく必要がある。


 「いや、そこはメイド長に言っておくべきか。

 あれも長いからな、私の意を酌(く)んで、しっかりとやってくれるだろう。

 それよりもゴミどもを徹底的に踏み躙(にじ)る為にどうするべきか………」


 そう思案にくれていた私の頭に、とある光景が思い出された。

 それはカメラを使って配信なるものをしていた光景だ。

 まだまだ少ないらしいが、地元の名産などを紹介している人間達が居たのだ。

 特にインターネット空間と呼ばれる電子空間でやっているらしく、たまたまそれを見たのが思い出された。


 中には地元で怖いと言われている心霊スポット? なるものを映していた者も居たのだ。

 ならば私もそれをすればよい。


 私に敵対すればどうなるのか?

 ゴミどもの末路も含めて、全て日本の連中に見せてやろう。

 私に敵対する事がどういう事なのかをな。


 「くくくくくくくくく………覚悟しておけよ、ゴミども。

 徹底的に叩き潰してくれる。

 ついでに愚か者どもも共にな」


 私は思考がまとまったので早速動き出す。

 あのバカなヤクザとやらが彼の部屋へと車を突っ込ませたのは、それをしてくれと頼まれたから。

 そして頼んだのはテレビ局の関係者だった。

 何でも素人のガキ如きが、自分の命令に従わなかったからというのが理由らしい。


 何様のつもりか知らないが、ならば更に力のある私が命じてやろう。

 貴様を地獄へ突き落とす命令をな。

 そして他にも彼に迷惑を掛けたゴミどもが居るのだ。

 それらも全て暴き出して素材に変えてやる。

 ウチのメイドどもがついでに食うだろうが、それは好きにすればいい。


 最終的に高次圧縮精神触媒になれば何でもいいのだし、苦しみ抜いた方が質の良い物が出来る。

 なので苦しませるのは良い事なのだ。


 さっさと新宿区のタワーマンションに戻った私は、目を瞑り意識を手放す。

 こちらはまだ夜なので、ビデオカメラを購入する事もできない。

 まずは機械が手に入らなければ計画を実行に移す事も出来ん。

 それと一名メイドの中から助手を決めておかねば。


 撮影する者は別に必要なので仕方ないが、後で食わせてやるなら文句も言わずに撮影してくれるだろう。

 無駄な時間を待たねばならぬが仕方あるまい。


 …

 ……

 ………


 「御機嫌が宜しくないようですが、如何(いかが)されましたか?」


 「私の夫となる者を殺そうとしたゴミが居る。

 その者を潰すのだが、時を待たねばならなかったのでな。

 それ故に機嫌が悪いだけだ」


 「………昔のお話のされ方をするという事は、相当に御怒りのようでございますね。

 貴女様をそこまで激怒させるとは、人間もなかなかやるようで」


 「ふん! ゴミどもを地獄に落とす為に必要だから待ったのだ。

 日本中に公開してやろうと思ってな、ゴミの末路というものがどういうものかを」


 「あらあら、それは面白そうでございますね。

 誰か必要でしょうか?」


 「誰でも構わん。

 お前に昨日見せてもらった配信、あれをする事に決めたのでな。

 ビデオカメラを持って映してくれる者が居ればそれで良い。

 それと、その者には後で高次圧縮精神触媒を作り出す際に、死なせぬならば幾らでも食わせてやる」


 「それはそれは………なら私が行きましょう。

 かつては貴方様の右腕でございました、この私が」


 「………まあ、良いがな。お前も暇なのだろうし」


 「ええ、ええ! ここ千年は暇なのです。

 大して面白い事もありませぬので」


 こいつも私と変わらんな。

 かつて<静止のエギルターサ>と呼ばれていた高位悪魔とは思えぬ日々であったか。


 それ故にこちらに居を移す事を決めてからは、刺激があって楽しそうだ。

 もっと早く決めておれば良かったのかもしれぬが、そうであれば我が夫には会えていなかったかもしれんのだ。

 それは困るので、致し方ないのであろう。


 「まずはビデオカメラなど、配信とやらに必要な物を買いに行く」


 「お任せを。

 調べていましたので、何が必要かは分かっております。

 そのうえで店員に聞けば良いでしょう」


 「では行くか」


 私が外へと出ようとすると、メイドどもが一斉に私を見送る。

 そういえば、かつてはこうであったなと思い出しつつ、私はエギルターサと共に買い物へと向かう。

 ここ日本の金など幾らでも手に入れられる。

 虚界でも私にしか作れぬ物は多くあるのでな。


 なので、ぬ?


 「…………何の用だ、女王。我の邪魔をするつもりか?」


 「………その喋り方、久しぶりに聞いたけど激怒しているようね?

 アロハヌス家の連中が緊急で私の所に伝えて来たのよ、初代様の圧が凄いと。

 自分達ではとても抑えられない、とね」


 「そういえば屋敷の地下で拷問をしていたのを忘れていた。

 あの子達には迷惑をかけたようだな。

 とはいえ、それとこれとは一切関りが無いが」


 「そこまで貴女が激怒しているという事は、【精魂の雫】である彼に何かあったのね?」


 「ッ………!」


 後ろでエギルターサが息を呑んだ音がした。

 それはいいのだが……こいつ、我にブチ殺されたいのか?


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