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 Side:橘八重



 ドンドンドンドン!!


 「早く出て来いクズ野郎!!

 潰される価値しかねーゴミは、さっさと出てきて潰されろや!!」


 「クズはクズらしく、さっさと惨(みじ)めな姿を出せ!!」


 何を言ってるんだと思うが、今はもう既にPM20時だぞ。

 つまり夜の8時だが、まだやってやがる。しつこ過ぎるだろ。


 なんでここまで粘着出来るんだ?

 こいつら自体の頭がおかしいからか?


 「貴方達、いったい何をやっているんですか!

 迷惑ですから、さっさと帰りなさい」


 この声は七尾さんか?

 そういえば管理人の七尾さん、今日は居ない日だったはず。

 にも関わらず、こんな時間に来たのか?


 「ああ?

 テメーには関係ねーだろうが、引っ込んでろ!!」


 「私はここの管理人です!

 貴方達がやっているのは不法侵入ですよ。

 さっさと出て行かないと警察を呼びます。

 それでもいいのですか?」


 「はははははは!

 オレ達は朝からいるが、警察は来ねえぜ。

 なんたって警察は市民の味方であって、ゴミの味方じゃねーんだよ!!!」


 「どういう事ですか?

 まさか貴方達が何かしたのではないでしょうね」


 「はっ! ゴミがさっさと出てきて潰されりゃいいんだよ!

 それより橘とかいうゴミ!! さっさと出てこいや!!」


 「テメーが出てきてオレ達のオモチャになれば全て綺麗に収まるんだよ!

 さっさと出て来いっつってんだろうが!!」


 「そんな事を言う相手の前に出てくるわけないでしょう!

 いいからさっさと出て行きなさい。不法侵入ですよ!」


 「うるっせえ!!」


 「キャー!!!」


 おいおい、ちょっと待て。

 俺ならともかく、関係の無い七尾さんに何やってんだ!!


 ガチャ!!


 「おい、お前ら。

 俺ならともかく七尾さんに何やってやがる!!」


 「おっ、やっと出てきたかゴミ!

 おい、さっさとビデオカメラ回せ!!」


 「おう!!」


 「橘八重くんよう、お前は救助しなきゃいけない人を見捨てて逃げたよなぁ」


 「救助しなきゃいけないヤツなんて居なかったが?

 どこに居たんだ?」


 「ハッ! テメーみてえなヤツは、そうやって逃げるんだよ。

 だがな、オレ達はテメーみてえな卑怯もんを逃がしたりなんてしねえ!!」


 「卑怯も何も救助者が居ないんだが?

 俺から武器を奪おうとした盗賊は居たがな」


 「ケッ!!

 テメーには人の心も何もねえってのがよく分かるぜ。

 なぁ?」


 「本当にな、テメーが最低のクズだって事がよぉく映ってるぜ?」


 こいつらがそういう風に映してるだけだろうが。


 「俺もよく分かったよ。

 お前達に法律の知識が欠片も無いっていうのがさ。

 話にすらならないから、今のこの時間が無駄でしかない」


 「そうやってとぼけて逃げようってハラだろうが、そうはいかねえぞ!」


 「逃げてるのはお前らだろうに。

 正式に、法律で、武器を奪おうとしたヤツは盗賊だ。

 って書いてあるんだぞ? そこをとぼけてるのは、お前らだろう」


 「ハッ!

 法律に書いてあろうが、やっちゃいけない事はやっちゃいけねーんだよ!!

 そんな事も知らねえのか!!」


 「確かにやっちゃいけない事をやってるな。

 だってお前らがやってるのは不法侵入だし」


 「そういう事を言ってんじゃねえ!!」


 「俺のは法律で合法、お前達がやってる事は法律で違法。

 これマジで弁護士に相談した方がいいですかね?」


 俺は七尾さんにそう言って相談する。


 「ええ。

 ここまで話にならないなら、弁護士に相談した方がいいわ。

 流石にこれは迷惑行為だし、完全に不法侵入だもの」


 「………チッ!!」


 そう舌打ちをして、迷惑行為をしていた連中はオンボロアパートの敷地から出て行った。

 裁判沙汰になると不利になるんで、あいつらもそこは強気に出られないんだろう。


 「ここも監視カメラを付けた方がいいのかもね。

 あの連中はビデオカメラで撮影してたし、監視カメラが無いと一方的に向こうの言い分が通ってしまうもの」


 「そうですね。

 明日ビデオカメラを買ってきて、俺も奴らを撮影しますよ」


 「それぐらいした方がいいと思うわ。ああいう人達ってしつこそうだから。

 そもそも橘君のやった事は、いたって普通の事よ。

 私だって現役の頃は何度も同じ事をしてるもの。

 もしかしたら橘君の持っている武器なんかが羨(うらや)ましくてやっているのか、それともやらせている人が居るのかもしれない。

 気を付けてね」


 「はい、ありがとうございます」


 とにかく今日はこれで済んだとはいえ、明日からは気を付けないといけないな。

 まずはトイレに行ってコンビニに弁当と飲み物を買いに行こう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日。

 俺は朝から家電量販店にビデオカメラを買いに行こうと思ったのだが、その朝から鬱陶(うっとう)しい事になっていた。

 簡単に言うと、家の外にテレビ局の車が何台も止まっていて、こっちを映してるんだ。

 おそらく中継車ってヤツだろうけど、なんでこんな事になってるんだ?


 ドンドンドンドン!!


 「橘さーん、取材に答えてくれませんかねー?

 橘さーん!」


 ドンドンドンドン!!


 昨日のクズどもと同じ事をテレビ局の連中もやってきているが、よくよく考えればクソ親と同じ仕事のクズ仲間かと考え直す。

 それなら仕方ないわな。

 他人の迷惑より自分達の欲しかないんだから、クズで当たり前なんだよ。


 ドンドンドンドン!!


 「橘さん、だんまりだとずーっと続きますよー?

 早く答えた方がいい思うんですがね。橘さーん!」


 ドンドンドンドン!!


 やってる事が普通に脅迫だと思うのは気のせいか?

 これってテレビカメラの前で答えるまで、永遠に嫌がらせをし続けるって事だよな?

 どう考えても普通に脅迫じゃん。


 ナチュラルにクズな連中だな。

 今までも同じ事をしてきたから、そんな言葉が当たり前に出て来るんだろう。


 とてもじゃないけど、まともだとは思えないな。

 マジでゴミのような思考回路をしていないと、ナチュラルにあんな言葉は出てこないだろ。

 改めてクソ親もクソ親だったのがよく分かる。


 ドンドンドンドン!!


 「橘さーん、ネット上である事ない事を書かれてますけど、ちゃんと反論した方がいいんじゃないですかー?

 じゃないと既成事実化しますよー」


 ドンドンドンドン!!


 既成事実化するんじゃなく、既成事実化してやる、だろ?

 完全にさっきからナチュラルに脅迫してやがる。


 昨日の2人組はチンピラだったけど、今日のテレビ局はヤクザだな。

 普通に脅迫してくるし、電波ヤクザと言われる理由がよく分かる。

 本当にヤクザと変わらない連中だ。


 …

 ……

 ………


 朝っぱらからテレビ局の連中が大挙して来たが、流石に番組も無いからか玄関の外からは居なくなった。

 なので今の内にビデオカメラを買いに行くかと思い外に出ると、途端にワラワラと集まってきた。


 「いやー、やっと出てきてくれたんですね。

 それじゃインタビュー始めるぞ! 準備しろ!」


 なんで俺がインタビューとやらに答えると思ってるんだろう?

 やっぱりメディア関係ってナチュラルに頭のおかしい連中しか居ないんだな。


 そう思いながら玄関に鍵を掛けると、俺はさっさと出かける。

 テレビ局の連中が大量に居て出にくいが、俺はその隙間を縫って外へと出ようとすると肩を掴まれた。


 「ちょっと、ちょっと。いったいどこへ行くんですか?

 独占インタビューまで時間が掛かるんで、ちょっとこっちで待っててもらえますかね?」


 そう言って、テレビ局の50歳ぐらいの人は俺を連れて行こうとする。

 笑顔だが胡散臭く、そのうえ目が笑っていないという、どう考えてもヤクザの関係者にしか見えない人物だ。


 「そもそも、その独占インタビューとやらを受けるとは一言も言っていないんですがね?

 後、どこへ行くかと聞かれたので答えますけど、家電量販店に行きます。

 ビデオカメラ持って証拠を映しておかないと、何をされるかわからないので。じゃ」


 俺はそう言ってテレビ関係者の間を抜け、外へと出て歩いていく。

 どこでもいいんだけど、とりあえず家電量販店でビデオカメラを買わないとな。

 無駄な出費だが、仕方がない。

 こっちが証拠も持ってないと、一方的に連中の都合の良いように加工されてしまう。


 そうなったら、こっちは不利にしかならない。

 少しでも武器を手に入れるには、映像という証拠を持つしかないんだ。


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