第33話:受験シーズン到来!ヴィーザルの靴で滑らないぞ!
【翌朝・ダンジョン前広場】
ソラ:
うわぁ……すごい!
一晩でこんなに集まるなんて!
ティアグラ:
ふん。素晴らしい「汚さ」だ。
人間の汗と脂が染み込んだ、
極上の摩擦素材たちよ。
【コメント欄】
: 汚さ褒めるなw
: 確かに臭そうw
: 俺の安全靴(5年モノ)届けたぞ
: フェンちゃんのためなら!
: 頑張れー
: 視聴者参加型楽しい
ルナ:
よし、やるわよ!
スキル発動——『鑑定』!
——シュババババッ!
ルナが高速で靴を左右に仕分けていく。
ルナ:
これは……郵便屋さんの革靴!
10年履き潰されてる! 採用!
こっちは……工事現場の地下足袋!
滑り止めSランク! 採用!
◇
——広場の物陰…
その作業を、柱の影から覗く男がいた。
手には、
ドス黒く光る液体
が塗られた
靴を持っている。
氷室(インカムの声):
いい? カイト。
その
「特製潤滑オイル」
を染み込ませた靴を混ぜなさい。
それを素材に使えば、
あのワンコロは一生滑り続けるわ
カイト:
へへっ、了解っす。
エグいっすねぇ氷室さん。
カイト:
(ほらよっと……!)
(っ・-・)⊃ ⌒ο ポイッ。
オイルまみれの靴が、
採用ボックスに投げ入れられた。
カイト:
(へっ、大成功! ちょろいぜ!)
◇
ティアグラ:
ん?
( ̄^ ̄)ゞ——ピタリ。
ティアグラの手が止まった。
ティアグラ:
……臭うな。( •́ฅ•̀ )クッサ
ソラ:
え?
そりゃ臭いますよ。
古靴ですから。
ティアグラ:
違う。
「努力の汗」
ではない……
「不純な悪意」の臭いだ。
私の神聖な素材の中に、
ゴミが混ざっている。
ティアグラが指を鳴らす。
——パチン( ・д・)⊂彡☆))Д´)ウッ…
ティアグラ:
不潔な物は消毒だ。
——汚物焼却。
ボッ!!!(炎炎炎)
すると、採用ボックスの中から、カイトが投げ入れた靴だけがピンポイントで発火した。しかも、まだカイトの残り香(魔力)を追尾して——ドォォォォン!!火柱が、物陰のカイトに向かって走った。
カイト:
ぎゃあああああ!!
あちちちちち!!
ドカーン!
( ∩ ˙-˙ )=͟͟͞͞⊃
カイト:
燃える! ケツが燃えるぅぅぅ!
お助けアレ〜
カイトは火のついたロケットのように、
ダンジョンの彼方へ走り去っていった。
ε=ε=ε=ε=┏(゜ロ゜;)┛
ソラ:
あ、流れ星★彡
【コメント欄】
: 今カイトいなかった?w
: 燃えてたぞw
: 妨害工作失敗www
: ざまぁwww
◇
ティアグラ:
さて、邪魔者は消えた。
始めるぞ。
錬成開始。
——カッ!
革が、
ゴムが、
人々の想いが、
一つに溶け合う!
——ギュイイイイイイイン!!
光が収束し、そこに現れたのは……
ピンク色の、
プニプニした、
——4つのブーツだった。
底面には、可愛い肉球のエンボス加工。
ソラ:
か、可愛い〜!
これが……!
ティアグラ:
完成だ。
名付けて
【神器:肉球エア・ヴィーザル】
あらゆる床で絶対滑らん!!!
ソラ:
これ、受験生が絶対欲しがるやっだ!
さあフェン!
履いてみて!
フェンリル:
クゥーン?(これなに?)
——スポッ ×4
……ギュッ。
フェンリル:
!
ワンッ!(滑らない!)
……ギュッ、ギュッ。
これで第一志望も合格だ!
【コメント欄】
: 縁起がいい!
:合格必須
:ご利益すぐる
: これを読んだ君は滑らない!
: 88888888
フェンリル:
ワフッ!(最高!)
ドォォォン!!
フェンリルがソラに飛びつく。
今度は足が滑らないので、
全力のタックルだーー!
ソラ:
ぐえっ。
お、重い……幸せ……。
◇
【荒井中注エージェント・事務所】
氷室:
……チッ。
使えない男ね、カイト。
単なるお笑い要員じゃない。
氷室はギリリと歯噛みする。
だが、
その目にはどす黒い炎が宿っていた。
氷室:
いいわ。
小細工はもう終わり。
次は……逃げられない!
潰してあげるわ。
氷室の手元には、
——企画書
『ダンジョン〔季節外れの〕水泳大会』
の文字が躍っていた。
(第33話 完)




