表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/36

第32話:ヴィーザルの靴でフェンの腰痛を救えの巻

ヴィーザルの靴——それは、神ヴィーザルが履く沈黙のブーツ。悠久の時を経て人々が捨ててきた「靴の端切れ」を繋ぎ合わせて作られた。その強度は鉄をも凌ぎ、ラグナロクにおいては魔狼フェンリルの巨大なあごを踏み砕いたという。



【昼下がり・ログハウスのリビング】


ソラ:

 おーい、フェン!

 おやつだよー!



フェンリル:

 ガウッ!(おやつ!)


       ズサーc⌒っ゜Д゜)っ——!


 カシャカシャ(爪の音)




 ツルッ! 



 ズサー⊂(・∀・と⌒ヽ


         ——ドォォォォォン!!



フェンリル:

 キャイ〜ン……(痛い……)



ソラ:

 フェン!?



 だ、大丈夫!?



ルナ:

 ……あーあ。またやった。



 見てこれ。



 爪が滑って踏ん張れてない。



ソラ:

 うぅ……可哀想に……。



ルナ:

 これ、大型犬あるあるなのよね。



 フローリングとか大理石って、

         犬の足には最悪なの。



 このままだと……股関節やるわよ? 

          ヘルニアコースね。


ソラ:

 ええっ!?



 ヘ、ヘルニア!?



 そんなのダメです! 



 フェンが歩けなくなっちゃう!



ティアグラ:

 むぅ。



 魔王城の床としては、この



     「鏡面仕上げ」



        こそが至高なのだが……。



 我が愛玩動物ペットの足腰には合わんか。



ソラ:

 こうなったら、床を変えましょう!



 カーペット! 



 全面カーペットを敷き詰めましょう!



 フカフカなら滑りません!



ルナ・ティアグラ:

 却下。



ソラ:

 えっ?



 なんでですか!? フェンのためなのに!



ルナ:

 ソラ、あんた忘れたの?



 今は「換毛(カンモウ)期」よ。



ソラ:

 あ……。



 ソラはフェンリルの背中を見た。



 少し撫でただけで、フワァ……

        と舞い上がる大量の銀毛。



 伝説の魔獣フェンリルは、

       抜け毛の量も伝説級だった。



ルナ:

 カーペットなんて敷いたら最後よ!



 毛が繊維に絡みついて地獄を見るわよ。



 ダイソン(魔導式)でも吸いきれないよ。



 洗濯機も壊れるし、

     コロコロの消費量で破産するわ。



ティアグラ:

 うむ。



 私の——漆黒のドレスも毛だらけじゃ。



ソラ:

 ううっ……確かに……。

 でも、このままだとフェンが……!



 カシャッ・カシャッ……ツルッ……

    ─=≡Σ(╯°□°)╯ズサァァァァ



 また足が滑ってへたり込む


         ——魔狼フェンリル。



ソラ:

 フェ〜ン……可哀想に……。



 どうすれば……



ティアグラ:

 ふむ。



   床が変えられぬなら、



     足を加工するしかあるまい。



ソラ:

 足を加工!?

 サイボーグにするんですか!?



ティアグラ:

 違う、馬鹿者。靴だ。



 かつて神話の時代……



   我がライバルである神の一柱、



     ヴィーザルという男がいた。



 奴はフェンリルの顎を



   踏み砕くために、



     ある特別な靴を履いていたのだ。



ソラ:

 へ、へぇ……どんな靴ですか?



ティアグラ:

 人間たちが履き潰し、

      捨てた革靴の端切れだ。



ソラ:

 ゴミじゃないですか。



ティアグラ:

 侮るな。



 使い込まれた革やゴム底は、

    凄まじい摩擦グリップ係数を持つ。



 人々の「歩み」の歴史が、

   絶対的な「踏ん張り」を生むのだ。



ルナ:

 なるほど……。



 つまり、ヴィーザルの靴の理論で、



 フェンリル専用の



    「滑り止めルームシューズ」



            を作るってこと?


ティアグラ:

 その通りだ。



 だが、それには大量の




     「使い古された靴」




            が必要になる。



 新品ではダメなのだ。滑るからな。



ソラ:

 使い古された靴……大量に……。


 あ! それなら!







 ソラはポンと手を叩き、

       スマホを取り出した。




ソラ:

 私たちには、


     頼もしい味方が


        いるじゃないですか!





[配信を開始しますか?]


[はい]





◼️【緊急生放送】うちのフェンちゃんが、ズサーc⌒っ゜Д゜)っ——!のし杉!! ヘルニアの危機から救え!





ソラ:

 ——というわけで!



 緊急のお願いです!



ソラ:

 うちのフェンの腰がピンチなんです!



 そこで、皆さんの家の靴箱に眠っている、



 『もう捨てようと思ってるボロボロの靴』



 を譲ってください!



ティアグラ:

 新品は送るなよ?



 欲しいのは、



  お前たちの汗と泥が染み込んだ


    

        「摩擦」


              ——だ。



 汚ければ汚いほど良い!



ルナ:

 言い方!



 でも、本当に困ってるの。



 協力お願いします!




 明日、ダンジョン前広場に

    回収ボックスを設置します!





【荒井中注エージェント・事務所】



薄暗い事務所の片隅で、モニタ越しにソラ達の放送を見る氷室。




【コメント欄】

: あー、わかるw

: 大型犬あるあるだわ

: うちのレトリバーもこれで腰やった

: フェンちゃん可哀想に……

: 古靴でいいの?

: 親父の安全靴(10年モノ)があるぞ

: 部活で使い潰したバッシュ送るわ!

: ゴム底ならグリップ最強だしな

(視聴者数:11,011 ↗↗)



《来場者数が10,000人を突破しました》

《ランキング入り:『ペット』カテゴリで1位にランクインしました》

《注目の番組としてトップページに掲載されました》




氷室:

 何よこれ、貧乏臭いわね!


   こんな廃品回収みたいな企画で、


      なんで数字が出るのよ!!




 ( ゜皿゜)キーッ!! 




 許せないわ。こんな企画ぶっ壊してやる!




氷室(電話):

  プルルル……


      プルルル……


          プルルル……


 あ、カイト?


 見てるわよね、そう。ソラの配信。



 そうよ……


 「ゴミ」を集めるイベント……。


 そこに



     「悪意あるゴミ」



  が混ざっていたら、どうなるかしら?



 そうよ。

 

 わかったら、さっさと用意しなさい。



(第32話 完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ