55.再び花祭りへ
ギルドを出ると、何人かの冒険者達が「よく頑張ったな」とルカくんにお菓子をくれた。荒っぽいイメージがあった冒険者だけど、優しい人が多いようだ。
まぁ、フェレルさんをはじめ、ロントさんも心優しい人だからね。ハゲはアレだから、業種関係なく善い人もいれば悪い人もいるってことだよね。
これ、人間の真理。
「ルカラウカ。家に帰らず、今日も花祭りを見に行くかい?」
ルカくんは私が乗っていない方に首を倒してから、私を撫でてきた。
「リリ、どうする? 歩きたい?」
ルカくんがどうしたいかでいいんだよ。私の意見は「行く」の一択になるんだから。
ルカくんの気持ちを配慮することを考えていたのに、フリフリと尻尾を嬉しそうに振ってしまっていたようで、小さく笑ったルカくんは「行く」とフェレルさんに答えていた。
花祭りの本番は昨日で、前夜祭と後夜祭があり、全部で3日間祭りが催されている。後夜祭になる今日は昨日よりも人は少なく、ルカくんも歩きやすそうだ。周りを見る余裕もあるっぽい。
「夜になったら、飾っている花は参加者に配られるんだよ」
素敵。捨てるより全然いいと思う。枯れるまでは大切に飾ってあげていたいもんね。栞やドライフラワーにしてもいいんだしね。お花の可能性は無限大だよ。
ん? あの屋台……花の絵が描かれた折り紙の中に何等か書いているだなんて、私が大好きなくじ引きじゃない。うわー、やりたい。一等は入っていないと分かっていてもやりたい。
「ん? リリは何にくぎ付けなんだい?」
「リリ、何か見てるの?」
顔の横に居るから、ルカくんには私は見えないよね。あれだよ、あれ。ルカくんもやろう。くじ引きって楽しいよ。
「あの花くじみたいだね。ルカラウカもやってみるかい?」
「花くじ? 昨日のゲームとは違うの?」
「違うよ。どの花かを1枚選んで、中に書いている賞品をもらえるんだよ。ただし、ハズレがあるからね。何ももらえないこともあるよ」
「楽しそう。リリはどれが欲しいの? 僕、当てるよ」
そうだよ、そうだよ。くじ引きは楽しいんだよ。ただね、欲しい物があるわけじゃないの。引いて「何等だったー」って、落ち込んだり喜んだりするのが楽しいの。あの瞬間、マジでプライスレス。
『ルカくんが欲しい物はどれですか?』
「なんだろ? 師匠、どれかな?」
「んー、リリは、ルカラウカが欲しい物を狙えって言っているんじゃないかな」
おお! 正解だよ、正解! フェレルさんを正式に【ルカくんの幸せを守り隊】の末席に加えてあげるよ。喜んでね。
「僕は、リリと一緒に遊べる物がいいな」
はあーん。ルカくんってば、いっつも私のハートをぶち抜いてくるんだからぁ。好きにさせられすぎて、どうにかなってしまいそうだよ。
おもちゃが並べられている屋台に到着し、フェレルさんは「2回」と伝えてお金を渡している。
明るい笑顔のお兄さんが、「一等は水が出る魔法の杖だよ」とルカくんに説明しながら、折り紙で作られたくじが入っているカゴをルカくんの前に置いた。並べられている景品の上に、箱とか籠って置かれがちだよね。
杖から水って水鉄砲って解釈でいいのかな。私も小さい時お世話になったおもちゃだけど、1個じゃなぁ。パニカくんと一緒に遊びにくいし、レッドさん達相手だと当てられないから楽しくないだろうしな。それなら、2等のシャボン玉が出る杖の方が、みんなで遊べそうな気がする。
うん、2等を狙おう。当たらなかったらグレーさんに作ってもらおう。
ルカくんは真剣に悩みながら、水色の折り紙を選んだ。「はい」とお兄さんに渡している。
お兄さんはニコニコ顔で花を崩し、バッと開いた中を見せてくれた。【スライム賞】と書かれている。
「そこにあるスライムの中で、好きな物を選んでね」
お兄さんが指した一角には、色とりどりの小さなバケツのような箱がある。
どうやら、私の前世のスライムのおもちゃと変わりなさそうだ。本物のスライムなわけないよね。
というか、ファンタジーの定番のスライムって、この世界にいるのかな? いたら見てみたいな。本物を触ってみたい。
「もう1回できるよ。きっと当たるよ」
お兄さん、本当に当たるんですか? 私、2等狙ってますけど、絶対5等までしか入っていないでしょ。
「リリ、どれがいい?」
「そのリスかな? 選ぶのかな?」
お兄さん、私、モモンガ。可愛い可愛いモモンガ。おっちゃんの子供達も知らなかったし、モモンガの知名度は低いのかもな。
「うん、リリが選ぶの。箱の中に入れてもいい?」
「いいよ」
ルカくんが箱を触ったので、腕を伝って箱の中に入った。
「賢いね」
「リリは賢いんだよ」
ルカくんが自慢をしてくれている。ここは、無いと分かっていても、神引きをするしかない。
さあ、私の手よ。2等を掴み取りたまえ!
『君に決めた!』
ピンク色の折り紙を掴もうとして掴めず、バシバシするだけになってしまった。紙なのがいけないんだ……
大笑いしたフェレルさんによって、無事にピンクの花はお兄さんの手に渡り、開封の儀が行われた。バッと向けられた内側には【5等】の文字が記載されている。
「リリ、すごいね! すごいよ!」
ルカくん、褒めてくれてありがとう。でも、私はシャボン玉の杖を狙ってたんだよ。この事実は、もう墓まで持っていくけどね。あたかも5等を狙っていたかのように、後で振る舞うよ。その時も褒めてね。
「5等、当たりだよ! レインボー玉だよ」
はて? スーパーボールみたいな物かな? 壁にぶつけて遊んでも怒られないかな。
って、けん玉かい! どこがレインボーなのさ! 教えておくれよ!
けん玉改め、レインボー玉を受け取ったルカくんは、「後で一緒に遊ぼうね」と笑ってくれたので、グレーさんに私用のレインボー玉を作ってもらうことを決めた。
何を隠そう私は、けん玉のリリと家族内だけで呼ばれたことがあるほど、一時期けん玉に夢中になった時期があるのだよ。
そう、あれはまだ私がルカくんくらいの年の頃、けん玉を変身道具にしてレンジャーごっこをしていた。けん玉の技が決まれば変身できるという設定だ。簡単な技よりも難しい技の方がカッコいいと思い、日本一周を極めた後、世界一周も身に付けた。灯台や飛行機だって、もちろんできる。
ふふふふふ。またルカくんに「リリ、すごいね」って褒められちゃうな。照れるぜ。
私が口の端を上げてニヤついているうちに、ルカくんは近くにあった花柄の型抜きをフェレルさんと挑戦していた。
私も人前でなければ自分の爪で、型抜きをしてみたかったな。絶対に失敗せずに花を抜き取れたはずだもん。
ルカくんはもう少しのところで割ってしまい、フェレルさんは難なく成功していた。
久しぶりの更新になりました。
これからも更新できる時に……という感じになります。
のんびりとお付き合いくださいましたら幸いです。
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