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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
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5.ふざけんなよな

体から全ての空気を抜くように、深く長く息を吐き出した。


落ち着こう、私。全部、仮定の話だから。


マアラさんがマジでヤバいことをしてしまった、というパターンだってある。元凶がマアラさんという最悪のパターンが。まぁ、その場合も、子供に罪はねぇだろ! とは思うけどね。


ただ、色々憶測で決めつけるのはよくない。私はペットとして、ルカくんの笑顔を守ればいいのよ。


「フェレルさんが、私を受け入れた理由が分かりました。私ならルカくんを守れると判断されたんですね」


「そうだよ。狂花した虎を倒した実力があり、ルカラウカが懐いている。私にもしものことがあったとしても、リリならどうにかしてくれると思ったんだ。後は、単純に君に興味がある」


わぁ。この状況じゃなかったら、ドキッとしちゃう台詞。恋に落ちちゃう。実際は冷めきっているけどね!


「もしもなんて、絶対にやめてください。ルカくんにとって、フェレルさんは居なくてはならない人ですよ。もう身近な人が消えてしまうっていう傷を、増やさせないでください」


咎めるような口調になってしまったが、本当のことだから仕方がない。小さな子供に、これ以上寂しさを植え付けるかもなんて許せない。言葉のアヤでも口にしていいことではない。


ルカくんは「家族」という言葉に反応していた。さっきも「明日も一緒」と確認してきた。ずっと寂しい気持ちを抱えていて、いつか1人になるかもって怯えているということだ。


ふざけんな! 子供にそんな思いさせていい訳ねぇだろ! 大人だったら、子供の不安を全部消してやれ!


フェレルさんは辛そうに微笑み、「ごめん」と呟いた。


反省しているようだし、素直に非を認めてくれたからね。これからは、ルカくんの笑顔を守る仲間として認めてあげようではないか。


「フェレルさんの違う方向から調べるって、何を調べているんですか?」


「『狂花』についてだよ。マアラが『狂花』を調べていたからなら、同じように『狂花』を紐解けば答えが見つかると思ってね」


「それで、冒険者として活動しているんですか?」


「そうだよ。どこに行っても仕事はあるし、ギルドでは噂話が絶えない。依頼ついでに色々調べていても、冒険者だから身の安全を確保するためにって言い訳が通る。植物学者の興味本位だと、蔑ろにされることが多いんだよ」


なるほどねぇ。隠れ蓑に冒険者はうってつけなのね。


「疑問に思ったんですが、どうして師匠さんの家に来られたんですか? 隠れるのなら、宿とかの方がよくないですか?」


「師匠は、私の性格を知っている。だから、動き出した私宛に、どこかの家に手掛かりを残すかもしれないと思ってね。それに、師匠かマアラが滞在をしていた痕跡があれば、2人が生きているという証拠になる」


「この家は埃がありませんでしたが……」


「それは、師匠が掃除を面倒臭がって、家に付けた機能だよ」


マジか!? そんな機能? 機能って言っていいの? 怪奇現象と変わらないんじゃないの? 意味分からんてー。


ともあれ、前世よりも色々進んでいるのかもしれないな。あれ? だったら……


「手紙以外に、やり取りする手段は無いんですか?」


メールとか、電話とかさ。パソコンみたいな物があったよね。ここまで進んでいるんだから、スマホもあるんじゃないの?


「手紙以外だとメバセードという通信機があるけれど、あれは商業ギルドからしか送れないし、記録が残ってしまうんだよ。手紙だと両方のギルドから送れて、記録に残らない。まぁ、届くかどうかは冒険者や商人次第だけれどね」


おん? メバセードって、電報とかFAXの類いってこと? いや、じゃなくて、インターネットないの? 電気もある……違うわ。電気じゃない可能性が高いんだった。


「フェレルさん、話は変わるんですけど、部屋をどうやって明るくさせているんですか? 後、水とかは、水を引っ張ってきているんですか?」


以降、フェレルさんの回答である。


電気と思っている物は、夜光石(やこうせき)という石だそうだ。街にあった街灯も、全て夜光石とのこと。夜光石は、周りの暗さに応じて明るさを変える石らしい。寿命は石の大きさによって変わるそうで、家とか施設においては、スイッチでオンオフをして消費を抑えているとのこと。


冷蔵庫とかの家電に関しては雷電石(らいでんせき)という石で、水に関しては湧水石(ゆうすいせき)という石が使われているとのこと。浮いていた車や船は浮遊石(ふゆうせき)を使用とのことで、この世界の動力は全て石ということなのだろう。


ちなみに、使えなくなったら、魔力を補充するだけでいいそうだ。フェレルさんが見たことある大きな石は、満タンに補充して10年程の寿命のものなんだと。貴族は5年以上の石を持っていることが多いが、大体は2年保てばいいそうだ。


ここで私はハッとした。


クークーさん達の家は永久に使えると、グレーさんは教えてくれた。どこからそんな石を持ってきたの? と怖くなり、これから家を建てることがあるならば、広く普及されている石を使ってほしいと伝えようと、心に固く誓ったのだった。


なお、ついでにお金のことも聞いている。とても簡単だった。円をマルーに変えれば解決したのだ。


1円→黒い小さな硬貨1枚・10円→白い硬貨1枚・100円→大きめの黄色の硬貨1枚・1,000円→長方形の赤い紙1枚・10,000円→長方形の青色の紙1枚・100,000円→長方形の薄紫色の紙1枚・1,000,000円→長方形の濃い紫色の紙1枚だった。計算方法は同じで、10枚で1つ上のお金になる。


フェレルさんは10,000マルー紙まで持っていたので、実物を見せてもらっている。100,000マルー以上の紙なんて、滅多に持ち歩かないそうだ。


お金はどこの街だとしても、両方のギルドから出し入れが可能とのこと。報酬や売上は振込形式で、ATMみたいな機械があるそうだ。


ここまでできるなら携帯もできるんじゃない? と思うが、私には知識が無いので口にするつもりはない。そのうち誕生するでしょう。






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