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ハロー、バンドマンのキミ
ハロー、バンドマンのキミ。
あのさ、わたし結婚することになったんだ。
一応伝えとくね。
携帯端末に届いた通知は、
たった3行の、
僕にとっては、
さよならの連絡だった。
言葉にしても恥ずかしくないくらいに
大好きだった彼女と別れたのは、
技術も才能も人並みのバンドマンが、
首都圏にあるマイナーな音楽レーベルの、
オーディションに受かったってだけで、
大きく膨らんだプライドを
はじけ飛んでしまわないように、
割れてしまわないようにと、
何より大事に守ろうとした結果だった。
ハロー、ハロー、
めでたいねぇ
僕も元気にやってんよ
そっちも元気で
昔みたいに、ハローではじまって
でも君の呼び名は続けられなかった。
驚きと困惑と湧き上がる多幸感から
咄嗟にでたのは、
本心そのもの
何で連絡してきたのかと疑問に思いながら
僕は空元気で返事を書く
そんなメールを送る午前0時。
ふっと仕事の疲れを思い出す。