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スカーレットエージェント  作者: 佐伯 悠斗
第二章 - 無知と諦めない
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9 - 隠蔽

普段と変わらない朝、秘書が長官の部屋のドアを開けた。

「長官、お客さんがいます」

その長官は困惑した表情を浮かべた、長官は自分に来客予定がないことを覚えている。

「誰ですか?」

「それは、スカーレット小隊のメンバーです…」

「スカーレット小隊ですか…彼を中に入れて」

長官は、もしスカーレット小隊の人物なら、自分の以前の部下の人物だと思った。

しかし、ドアに入ってきた人物は、予想していた人物ではなかった。長官は少し驚いたが、まず挨拶をすることにした。

「初めましてだと思います」

長官はその人物に詳しくは知らなかったが、噂は聞いたことがあった。

その人物は冷たい表情で長官の質問に答えた。

「そうですね、初めましてですね」

自分の部下として働いたことがなかったにもかかわらず、長官は来客の名前を知っていた。

「私があなたを呼んだ覚えはありませんが、スカーレット小隊の…朱里さん」

長官は、朱里が自分を訪ねてきた理由がわからなかった、彼女たちは過去に接点があるわけではなかった。

「遠いところから来たのは、何かご用件があるのでしょうか?」

朱里は長官の言葉を聞いて、直接本題に入るつもりだった。

「あなたの指示でしょう」

長官は朱里の問題を理解できず、自分の指示を出したことがたくさんあったと思う。

「何のことですか?」

「まだ隠しているつもりですか、あの新しいメンバーのことです」

「新しいメンバーですか...」

長官は少し考えた後、おそらく朱里が何を尋ねたいのか理解しました。

「つまり、あのスカーレット小隊の新人のことですか?」

「そう、なぜ彼を推薦したんですか、何か目的があるんですか?」

「何の目的もないです、彼の実力がスカーレット小隊にふさわしいと思ったから彼を推薦しただけです、あなたに何か問題があるんですか?」

「実力...あの程度の実力か?」

朱里は言い終わって、手に持っていたファイルを机の上に投げた。

長官は、なぜ朱里が組織の上層部である自分に対してもこんなに無礼なのか理解できなかったが、彼女の地位を考えると、少しでも面子をつける必要がある。

「それは何ですか?」

「彼の成績です」

長官の顔に少し驚きの表情が現れ、朱里がその人の過去を調べたことに驚いた。

朱里は長官の表情の変化を見逃さず、彼女の行動は予想以上だったようだ。

長官の机の上には、朱里が見つけた証拠が置かれており、その人が実力でスカーレット小隊に入ったわけではないことが証明されていた。

「成績もやっと合格ラインのC。実績も何もなく、そんな実力ではスカーレット小隊に入れるわけがない!」

「でも、一つBを達成しているじゃないか、取り得はあるんじゃないか」

「現在の環境で、あの技術は何の役に立つ?」

朱里は長官を追及し続け、長官はこんな質問が来るとは予想していなかったため、何も答えることができなかった。

朱里は長官が返答しないのを見て、自分の考えをより確信する。

「それじゃあ、別の質問をしてみるわ。何か隠していることがあるでしょう?」

「何を隠しているというのか?」

長官は平静な表情で朱里の質問に答えたが、心の中ではすでに揺らいでいた。

「成績を隠しているということか?でも、それを隠しても何の意味もないだろう。すぐにバレるだろうから」

朱里は長官の反応を観察しながら、答えの可能性を推測する。

「じゃあ、実績を隠しているのか?」

「何でそんなことを思うんだ?彼は以前はただの普通のエージェントだった」

「それなら、彼の最後の任務は何だったんだ?なぜ記録に残っていないの?」

「半年前の偵察任務だけだ。記録には載っているはずだよ」

「違う、その後にもう一つ任務があったはずだ…その任務が終わった後、小隊は解散しましたね」

長官は朱里の言葉を聞いて少し立ち止まった。

「何か証拠があるのか?」

「小隊の名前があれば、組織の武器を使用した回数はすぐに調べられます。そして、その小隊のメンバー全員が行方不明になっています。ただそれだけです」

「任務そのものの記録を消去しても、武器の記録はきれいに消せなかったようですね」

長官は朱里の言葉を聞いて心がざわつき、朱里がその痕跡を発見できるとは思っていなかった。

この時、長官は突然笑い出し、場にいた全員が驚いた。

「そうか、もうここまで調査されたのか…」

「確かにこれは盲点でしたね、次回からはもう少し用心しましょう」

「あなたは、それを認めたのですか…」

朱里は長官がそんなに早く認めるとは思っていなかった、まだもっと証拠を出して真相を知らせようと考えていた。

「ここまで調査したなら、相当な把握があってこそ私と対面しに来るわけでしょう。もう知っているのにぼんやりしているのは失礼ですね」

長官は急に表情を変え、鋭い眼差しで朱里を見つめた。

「さすがはあなた、噂通りですね。組織にはあなたみたいな人材がいると本当に助かります」

「そうですか、では私の質問に答えてください。何か隠していることがありますか?」

「焦らないでください、若者。Kはあなたに何か言いましたか?」

「いいえ…何も言っていませんでした」

「そうですね、あなたの直属の長官も何も言っていないので、私も何も言えません」

その回答に激怒した朱里は、長官が早々に自分の質問に答えようとしないことに驚いた。

「逃げないでください、Kは私が直接あなたに問い合わせるように言いました」

「あの人が、こんな手を出すか…」

長官は首を振り、Kがこの問題を自分に押し付けたことに驚いた。

「それは組織の極秘事項で、あなたには知る権限がありません」

「他に何か手段はないのですか? 今度は権限の問題ですか?」

朱里は凶暴な目つきで長官を睨みつけ、その行為は長官に危険を感じさせた。

長官はその視線を感じると、手で隣にいる秘書に気にしないでと合図し、ため息をつきながら話を続けた。

「しかし…」

「ここまで来たら、何も成果が出なければあなたを戻すわけにもいかないでしょうね」

朱里は長官の意図が理解できず、警戒心を保ちながら応じる。

「何を言いたいのですか?」

「もし任務の記録だけなら、少しは言えるかもしれません」

「それは、普通の隊員からスカーレット小隊に入れるようになった任務です」

長官は、朱里が興味を持つ話題を提供し、朱里が去らないようになったと理解した。

朱里は、確かにこの話題に興味を持っており、実際に彼女がここに来た理由でもある。

「それなら聞かせて」

朱里は、先程の凶暴な目つきを引っ込めた。

(釣られた)

長官はそう思い、その後、その事件を平然と説明し始めたが、全ての情報を明かすつもりはなかった。

「それは普通の偵察任務でした。3つの小隊が協力して行ったもので、目標は社会の安全を脅かす存在でした」

「その任務は、目標の行動を調査することでした、目標を発見すれば、任務は達成されたのです」

朱里は任務内容を聞いて、それがただの普通の任務であることを理解した。

「それで、何か特別なことがあったのですか?」

長官は朱里の質問を無視し、話題を元に戻した。

「彼らはそれぞれ三つの方向から進んで、ターゲットエリア内を検索し、そして特別な状況が発生した」

「特別な状況?」

朱里は長官の特別な状況が何を意味するのか理解できなかった。

「全員が同時に連絡が取れなくなり、無人機もすべて制御不能になったんだ」

「それはどういうことですか?」

朱里は組織の通信システムが安定していることを理解しており、すべての人が連絡が取れなくなることはありえないと考えた。また、無人機が制御不能になることはさらに不可能だ。

このような状況では、結論は2つしかない。システムが侵害されたか、現場に強力な電子妨害があったかだ。

「もちろん、私たちはその危険性を理解していたので、システムをチェックしながらすぐに現場に派遣したんだ」

「支援の小隊は30分で現場に到着した」

長官は息を吸ってから続けた。

「そのチームが目にしたのは、地獄の光景だった」

「地獄?」

朱里は長官がなぜ「地獄」という表現を使ったのか理解できなかった。地獄は人によって定義が異なり、それを使うと曖昧すぎると思った。

「そうです…地獄でした。当時の現場写真はありますが、見せるべきものではありません」

長官は続けるが、その場所の状況を話すのは嫌だった。だが、長官は朱里がそれを追及することを諦めないことを理解していた。そのため、重要な点を避けて話をしなければならなかった。

「その小隊が現場に到着したとき、まず目にしたのは大量の赤い雪でした」

「赤い雪...誰かが負傷したのですか?」

朱里は血が雪に染み込んで赤くなったのだろうと考えたが

(本当に血で雪を染めることができるのだろうか…)

「そうではありません。現場の人々は、まずその可能性には気づきませんでした。なぜなら、人影は見つかりませんでした」

「彼らは遠くからは大量の赤い雪しか見えなかったので、不思議に思ったのです」

「彼らが近づいていくと、理由が分かりました」

朱里は静かに長官の話を聞いていた。何か重要なことが続く予感がした。

「ここで1つの質問があります。あなたは人が雪を完全に赤く染めるためにどのくらいの血液を必要とすると思いますか?朱里さん」

「私をからかっているのですか?」

朱里は突然の質問をされ、少し戸惑っていた。明らかに重要な場面で、なぜこんな意味不明の質問をするのかと思った。

しかし、長官の冷たい視線を見て、朱里は長官が冗談を言っていないことを知った。

(どのくらいの出血量が雪を赤く染めるかなんて、知らないわ、そんなことを経験したこともないし)

「えっと、重傷の出血量でしょうか…」

朱里の答えを聞いた長官は首を振り、朱里の回答が間違っていることを示した。

「地面を赤く染めるには多大な出血量が必要で、またその場所は雪が降っていたので、雪を赤く染めるのはさらに困難でした」

「では、正解は何ですか?」

朱里はこの質問の答えに興味がなく、今はその事件の後続に興味がある。

長官は朱里の態度を見て、軽く笑った。

「今の問題に意味がないと思っているんだろう?」

「現在の気分では、変な知識を知りたいとは思わないな」

「じゃあ、正解を発表しましょう」

「答えは、すべての血液です」

「それに加えて、あの赤い雪は確かに人の血液によって引き起こされています」

朱里は聞いて目を見開き、自分が聞いたことを信じられなかった。

問題の答えだけだったら、ただの奇妙な知識にすぎなかったが、長官の言葉が加わると、それは奇妙な知識ではなくなった。

「それはつまり…」

朱里は震える声で言葉を口にした。彼女は二つの関係をよく理解していたが、信じたくなかった。

「あなたは私の意味を理解しています。あなたの分析力で、さっきの人影のことも理解したでしょう?」

「いいえ…嘘をでしょう…」

朱里は力なく頭を振り、長官の意図は理解しているが、そんなことを想像したくないし、認めたくないと思っていた。

道具を使わない場合、人間は全身の血液を完全に排出することはできない。

「彼らが接近すると、敵の存在に気づかず、地面には人の一部分だけが残されました」

「もう聞きたくない…」

朱里は頭を振り、ここに来た理由はそんな情報を聞くためではない。

長官はその事実をはっきりと述べた。

「いいだろう、これがあなたが知りたかった真実だ。あの赤い雪は、三つの小隊の人の残骸が原因だ」

「あそこには人間の残骸が散乱しており、欠損した身体や切り離された頭部が一人や二人ではなく、十数人分ある」

朱里はもう聞きたくなかった。それは虐殺と変わらない状況だ。

いや、虐殺以上の非道であり、人命が目的であれば、人をバラバラする必要などない。

「総計14人が死亡しましたが、そこには1人の生存者がいます」

朱里はその言葉を聞いて気を取り直した。

「それは…」

「発見当時、周りの死体とあまり変わらなかった、その時はすでに命が危険にさらされていた状況でした、ただ、奇跡的に生き残ったんだ」

「ハヤブサ小隊の知者、それがその事件の唯一の生き残りだ」

「その事件で組織は三つの小隊を失い、15人のうち1人しか帰ってこなかった」

「そして当時の敵は事後の判断により、彼の能力がスカーレット小隊の入隊基準に達していたため、スカーレット小隊に推薦された。それが、君が知りたかった彼の最後の任務だ」

朱里はその話を聞いて、なぜこの事件が閲覧禁止になっているのか理解した。この事件は組織にとって深刻な損失であり、しかも敵はおそらくそういう存在だったのだ。

(不死身…バケモノか…)

「君が知りたかったことは話し終えた、それでは戻っていいよ」

長官は話を終えると手を出して、朱里に退室するように合図した。

「待ってください、その事件の詳細と敵についてまだ説明されていません」

朱里はこのタイミングで長官が自分に退室を頼むことにあまり納得していなかった。

「私が話せることはここまでです。もっと詳細を知りたいなら、あなたの周りにはもっと適任の人物がいるはずですよ」

「彼女を退室させてください」

長官は朱里の隣にいる秘書に合図し、秘書が二人の間に立ちはだかった。

「待ってください、まだ話が…」

「困らせないでください、朱里さん」

秘書は笑顔を浮かべて言ったが、朱里は彼女には笑顔がないことを理解していました。

朱里は一部の情報を知ったが、相手がもう話したくないようだったので、渋々退室するしかなかった。

「いってらっしゃい、朱里さん」

朱里が秘書の言葉を聞いて、ドアを閉めた。

朱里が退室したことを確認した後、長官は安心して、隣の秘書に尋ねた。

「なぜ彼女を入れたのか」

「やはりスカーレット小隊だし、それにあの朱里さんの来訪だから、ちょっとは面子を保たないと」

「次回来たら、直接断って」

「承知しました」

長官は片手で頭を抱え、次の行動を考えていた。

「あの少年の状況はどうなっている?」

秘書は長官の質問を聞き、手元の機器で少し調べた。

「任務で負傷し、現在は組織の病院で昏睡状態です」

「負傷して、昏睡状態か」

「はい」

長官はこの回答にあまり驚かなかった。少年の過去の実績では、スカーレット小隊の任務については追いつけなかった。

「双方にとって、このままずっと目を覚まさなければいいのに」

「どうしてですか?」

秘書は疑問に思っている、なぜ長官は少年が昏睡状態にあることを望んでいるのだろうか。

「その事件については知っているだろう」

「もし、先ほどの長官が言われた事件なら、確かにわかる…当時あなたのそばでその報告書を見ていたから」

「あの状況で生き残れると思うか?」

「そうですね…その現場の状況では、生き残ることは不可能だと考えています」

秘書は事実を否定したくはなかった、誰かが生き残ったという事実があるのだから。ただ、秘書と朱里は異なり、現場の写真を見たことがある。

当時の秘書はただその写真を見た瞬間、当日の昼食をほとんど吐き出しそうになっただけだった。

「肉と血が飛び散り、内臓まで飛び出ている。人間にはできないことだ」

「さっき彼女には説明していなかったが、実際には切断された肢体以上なことが起きていた、それらは人間ができることではない、一部の死体は肉片すら残っていない」

「しかし致命傷を負った1人が生き残った、信じられるか?」

「確かに奇妙だが、あなたの意味は…」

「私はすべての可能性を排除しないので、その少年に一度チャンスを与えた」

「チャンスを与えた結果はもう出た」

「では、必要な時には『そうじ』しましょう」

「了解しました」

秘書は長官の指示を聞き、反論する言葉すら出てこなかった。ただ、その少年に同情するだけだった。

もし少年が本当に無実だった場合、彼の運が悪かっただけだろう。

「本来、精鋭小隊がこのような相手に立ち向かっても生存率は5割にも満たない。その少年の主張など話にすらならない、不可能なことだ」

「本当に、人々の時間を無駄にする少年だ」

長官はそう言いながら、コンピュータを操作し、少年のファイルにある写真に大きな赤いバツ印を付けた。

部屋の暗がりには、甲虫のような何かが横たわっており、長官たちに気づかれずにドアの隙間からそっと出ていった。

一方、部屋を出て間もない朱里は意外な知らせを受け取った。

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