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第204話 ケットシー三姉妹の仕事を見よう

 ムート君のお家に、新しいメイドさんが3人来ました。

 カエラス子爵家に仕えていた、ケットシー三姉妹が、サリエルちゃんの代わりにムート君やフワエル様達のお世話をするのです。


 そして今日は、空中神殿に帰るサリエルちゃんの送別会です。


 まあ、いつもよりちょっと贅沢な食事をしましょうって事だけどね。料理は近所のレストランからのテイクアウトですが、お菓子や飲み物はタマが用意をしてくれています。レストランから料理を貰って来るのはクロの役目です。

 ミケはその間に、庭のお掃除をしてもらいます。


「さて、料理が来るまでの間に、この前の事で聞きたい事があるんだけど」

 あたしが子爵邸で、グンタイを削った攻撃がなんだったのかを、ポチャリーヌに尋ねてみようと思いました。

「うん? なんだ?」

「グンタイの体を削って行った球体は、何だったんだろうね?」

「あれか? どうやら反物質だったみたいだな。魔力で出来た球体の内部空間の酸素や水素が反物質化したのだろう。触れた物を対消滅させて、最後は圧縮してエネルギーを放出したみたいだぞ」


 ……うん、分からん。

 つまり、あたしの持つ女神の力で、凄い事が起こったって訳だね。


「あれは女神の力の正しい使い方じゃないので、あまり過信しないようにね。歪んだ力の使い方をしていると、自身の有り(よう)も歪んでしまうから」

「は……はい」

 ディアナ様に注意をされてしまいました。

 やんわりとした言い方ですが、言ってる内容はけっこう怖いです。これからは気を付けよう。

 使い過ぎると精神にも影響して、闇落ちとかしちゃうんだろうか? 格好良くて憧れなくもないけど、自分がなるのはちょっとゴメンだ。


 タマがあたしの前でお茶を入れてくれるけど、この子も話の内容は理解出来ないようだ。偉い人の言う事は分からんって顔をしてる。



「ミケとクロの様子も見てみるか?」

 と言ってポチャリーヌが、魔法で四角い画面を空中に出しました。

「これで影魔(えいま)が見ている光景が(わらわ)を通して見れるのだ。まずはミケからだな」

 すると画面に、庭掃除をしているミケの姿が映りました。

「まあ、これは便利な魔法ですね」

 ディアナ様が感心しておられました。

 ポチャリーヌを見ると、ちょっと得意げな顔をしてた。


「さ~て、真面目にやってるかな?」


 画面の中のミケは、庭の落ち葉をホウキで集めていました。

 大きめなチリトリに、落ち葉を掃いて入れているけど、風でうまく入らないようです。すぐに飛んで行ってしまいます。

 何度やってもうまくいかないので、ムキーってなってたよ。


 最後はチリトリにホウキで蓋をして、なんとか飛ばないようにして、落ち葉を集めていました。

 庭の隅に置いてあるゴミ箱に捨てて、落ち葉掃除を終えました。

 次に何をやるのかと見てたら、花壇の雑草を取っていました。雑草と間違えてお花を抜いてしまう……なんてボケはやらずに、ちゃんと雑草だけ抜いていました。



「思ったより真面目に仕事してますね」

「だな。貴族の家でメイドをしていただけの事はあるか」

「じゃあお次は、クロちゃんの方を見てみましょう」

 ディアナ様がノリノリです。


「クロは、テイクアウトの料理を受け取りに行っているのだったな?」

 そう言ってポチャリーヌは、画面を切り替えました。

 そこには街を歩いているクロの姿が。

「無事に受け取れたようだね」

「そのようだが、まだ油断は出来ないぞ。奴が摘み食いしないとは言い切れないからな」

「ああ……なんか分かる……」


 あたし達の心配をよそに、クロは真面目にお使いをしていました。

 これなら問題無いんじゃないかな。



『ヒャッハー! ちょいと待ちなお姉ちゃんよォ~』


 おおっと、なんか下品な事を言う奴が現れたぞ。

 影魔(えいま)がそっちを見ると、画面に映し出されたのは、いかにもな格好をした3人の男だった。革のジャケットとズボンで、簡単な防具を付けていたので、たぶんハンターなんでしょう。


 しかも、すんごい悪人顔だ!

 こいつ絶対悪人!

 まさしく、ヒャッハーだ!


『高そうな服を着てるって事は、どこかのお金持ちのメイドさんかな?』

『しかも、美味そうな匂いのご馳走を持ってるじゃないの』

『オレたちゃ腹がへってよぉ~。ちょっくら食わせてくんねぇかぁ~~』

『『『ヒャハハハハ!』』』


 言う事がいちいちヒャッハーだ!

 ヒャッハーのかがみだね!


「ドラゴニアにも、こんな奴がいるんだね」

 ムート君は呆れていた。

「まあ、お下品ねぇ」

 ディアナ様にも顰蹙(ひんしゅく)を買っているぞ。

「どこにでもこういう輩はいるものよな。そしてナナミィは、なんでそんなに目を輝かせておるのだ?」

「なぜって? 異世界にもヒャッハーがいたのよ!」

「う……うむ、そうか……?」


 あたしの勢いに、ポチャリーヌが引いていたよ。

 でも、気にしない。


『え? ダメですよ』

 クロはきっぱりと断りました。

『あぁ? なんだって?』

『そうか、イヤか。じゃあお姉ちゃんの方をいただこうかな』

『おお! いいなぁ。けっこう胸も大きそうだしなぁ』

『『『ヒャハハハハ!』』』


 どこまでも悪い奴らだな。

 大きな胸って、残念ながらそこにオッパイは無いのにね。


 3人の悪人は、ジリジリとクロに迫って行きます。

 さすがにこれは、助けた方がいいのでは?


『待ちなさい! こんな往来で何をしているの?』

 そこに颯爽と割って入る人が現れた。

 しかも女性だ。


 すっとクロの前に立ち塞がると、その姿が映し出されました。

「あれ? スピネルさん?」

 そうなのです、エルフのスピネルさんなのです。一連の事件が終わった後も、あたしの近くにいるのです。それと言うのも、リヒテルがあたしを狙ってるので、近くにいて護衛や情報収集をするためです。


『おお、今度はエルフのお姉ちゃんか。オレらと遊ばねえか?』

『あなたも達ハンターでしょう? ハンターならもう少し、礼儀をわきまえなさい!』


 スピネルさんが説教モードだけど、あの3人はやっぱりハンターなんだ。よく見たら首からハンターギルドのライセンスプレートを下げてます。

 しかもCランクだ。


『お姉ちゃんもハンターか? いくらハンターでも武器も無く、一人で3人も相手に出来るのかな?』

 3人の中で一番悪そうな奴、むろんモヒカンだ、そいつがニヤリと笑いながらスピネルさんに迫った。


『私が一人で居ると思ったの?』


 どういう事だろう? どう見ても彼女は一人きりで来たけど?


 なんて思っていたら、画面からザワザワ・カサカサと聞こえて来ました。

 その音は徐々に大きくなっていき、ガサガサガサガサ……と。


『え? な……なんだこれは?』

『む、虫か?』

『うわぁ! やめろ! 来るな、来るんじゃねぇ~!』

『『『ぎゃぁ~~~!』』』


 ヒャッハー3人組に襲い掛かる黒い何か。

 5cmくらいの黒い何かに、大量にたかられています!

 黒光りしているこれは、G……


「きゃあ〜〜! ゴキブリ〜〜!」

 画面を見ていたサリエルちゃんが、正体に気付いちゃったよ。

「ディアナ様は見ちゃいけません〜!」

 サリエルちゃんが急いで、ディアナ様の目を隠していました。


 3人組はGにまみれて、姿が見えなくなっちゃった。

 まさに地獄絵図!


『もういいよ、みんなご苦労様〜』

 スピネルさんがそう言うと、G達はさぁ〜っと離れて行きました。

 ヒャッハー3人組は、魂が抜けたようになっていたよ。ご愁傷様。


『これに懲りたら、礼儀正しくすることね!』

『『『ひぃい〜〜〜〜!』』』

 3人組は()()うの(てい)で走って行っちゃいました。


『大丈夫だったクロ?』

『ありがとうです。危ないところでした』

 見ていたあたし達もほっとしました。色んな意味でね。


「クロもよく我慢出来たわね〜。スピネル様のおかげね」

 一緒に見ていたタマが言いました。

 うん? 我慢?


『もう少し助けてくれるのが遅かったら、私が3人ともぶっ殺しちゃうところでしたにゃ〜。タマから人は殺しちゃいけないって言われてたから、危なかったにゃ』

 いい笑顔で言うクロ。

 危ないってそう言う意味か!

「ああ……Aランクのケットシーなら、Cランク程度のハンターなぞひとたまりも無いだろうな」

 ポチャリーヌ呆れながら言った。

 あと、ケットシーはGが平気なのか、タマもクロも平然としていたね。ミケは苦手みたいだけど。



 その後、みんなでご馳走を食べて、サリエルちゃんをねぎらいました。

 今日だけは特別に、ケットシー三姉妹も一緒にパーティーに参加です。

「ナナミィもポチャリーヌもありがとうね、私の為にここまでしてもらって」

 サリエルちゃんが感激しています。

 いつもは裏方の仕事しかしないので、自分が主役になる事がないからですね。


「いいのですよ、これからも使徒の役目に励んで下さいね」

「そうなのですよ、あなたの能力は女神様の助けになるのですからね」

「勿論ですディアナ様、フワエル様!」

 女神様と先輩使徒様にお言葉を貰い、サリエルちゃんは益々感激していました。


 そして1時間ぐらいで、送別会パーティーは終わり。

 あたしは涙ながらにハグして、送り出してあげます。


「じゃあ皆さん、色々ありがとうございました〜」

 と言ってサリエルちゃんは、空中神殿に転移して行きました。




 2日後、ペギエル様がムート君のお家に来られました。

 どう言う訳か、あたしやポチャリーヌも呼ばれました。

「今まで私が皆さんのサポートをして来ましたが、今度からは彼女にサポートを任せます」

 そして紹介されたのが……


「どうも〜、ペギエル様に代わって私がサポートしますね〜」


 めっちゃ気安く話す女の子。

 それもそのはず、サリエルちゃんだった。


 あたしの涙を返して……


「あ、じゃあ歓迎会をしなくちゃなのですよ」

 フワエル様が楽しげに言うのだった。

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