30 いざ第七通路へ
気まずい空気は続いたまま、俺たちはリーデの後を歩く。
ロッカールームを出て少ししてからだ。不意にリーデが振り返った。
「それぞれ落とし穴を落ちてから今までの状況を、お互いに共有しておこう」
「あ、ああ。確かに、まだ説明していなかったな」
「そ、そうだね。うん」
リーデは徹頭徹尾何事もなかったように振舞うので、逆に俺たちの方が焦ってしまう。
平常心、平常心だ。
俺もミスラもこっそりと息を深く吸う。
「では、私から」
リーデの話はほぼ俺と同じだった。広場に落とされ、出口が二つあったから勘で選んだほうが格納庫へつながっていた。そして、俺たちと合流した。
彼女が一番先に格納庫に到達していたようで、ぐるりと見て回った所、出入り口は四つあったらしい。
それで彼女の説明は終わり。もちろん、ぴょこたのことは一言も話さなかった。
俺が見た情報では、落とし穴の先は四つの広場に振り分けられていた。なので、格納庫の出口はそれぞれ広場に繋がっているのだと思う。
俺は自分の経緯とともにその推測を付け加えて話した。
「なるほど、ではミスラはどうだ?」
「うん……それなんだけど」
さっきのぴょこたショックが尾を引いているのか、直前の記憶が曖昧らしく、どこの通路から来たか以外の情報は得られなかった。
「ごめんね」
ミスラは困ったように謝った。
「仕方がない。では、ミスラが落とされた広場をまず探索してみるか」
「そうだな。ミスラが無事だったってことは、危険はないってことだろうし」
俺たちは、ミスラの案内で格納庫を出る。
広場へと延びる通路は、俺が歩いてきた通路と大差はなかった。所々にゴーレムの残骸が転がっている。
ただ、こっちの通路の方が残骸の数が多いように思えた。そして。
「うっ……」
ゴーレムにやられた犠牲者だろうか、残骸に混じり朽ちた装備品や人骨も落ちていた。
千年以上の時が経ち、白骨化したり風化したりではあったが、それでも俺は声を漏らしてしまう。
戦いに敗れて墜落することになった浮遊島だ。戦死者たちの骨やら遺品やらが落ちていても当然なんだろうが、この先こんな光景がまだまだあるのかと思うと、少し気が重くなる。
「ここだね」
できるだけそういったものは見ないように歩いていると、そう時間もかからずに広場へと出る。
ここも俺が落ちてきた場所と変わりはない。ゴーレムと人骨が散らばる、大広場だ。
「私が落とされた広場と、変わらないな」
リーデも同じことを思ったようだ。
俺も頷いて、同意を示す。
「起動しているゴーレムもいないようだし、三人でそれぞれ探索するか」
俺もミスラも異存はなかったので、散らばって探索を始めた。
ちなみにだが、合流した時点でミスラの【ライト】に切り替えたので、証明範囲がぐっと広くなった。
光源であるミスラと離れても、よく見通せる。
だが、俺たちが落ちてきた広場はどこも作りが同じなので、目を引くような物もなさそうだ。そう思った時、一台のゴーレムの残骸が目に付いた。
これだけ、他のゴーレムよりもきれいな感じがする。
もちろん大きく破損はしていた。というより、他のゴーレムよりもさらに激しく損傷していたぐらいだ。が、破損した部分がさび付いたりしておらず、なんならさっきまで稼働していたかのようにすら思えた。
なにかここだけ、劣化具合が違う原因があるんだろうか。
「おーい」
ステータスオープンして調べてみようかと思ったが、ミスラに呼ばれて俺はそちらへ向かう。
「この部屋は、出口が三つあるな」
すでにリーデも合流していて、指さす方向にはそれぞれに出口が開いていた。
「一つは格納庫に繋がる道だけど、あと二つはどこだろうね?」
「じゃあさっそく調べてみるか」
俺は残りの二つのステータスを調べる。
向かって右側の出口は第三通路、左側の出口は第七通路に抜けると書いてあった。
「第三通路は、俺の広場からも繋がってたな」
「なるほど……では、第三通路は広場同士を繋いでいる通路ということか。戦力状況により、不利な広場に別の広場の余剰戦力を送っていたのだろうな」
「じゃあ、リーデちゃんの所の出口も……」
「ああ、第三通路に繋がってる可能性が高い」
「つまり、第七通路の方が別の場所に出れる可能性が高いというわけか」
ミスラとリーデが黙ってうなずく。
「一度戻って、俺たちが落ちていない残りの広場を調べるって選択肢もあるけど」
俺たちは三人、広場は四つ。まだ探索手付かずの広場が残ってはいる。
「そうだな……」
「私は、このまま進んだ方がいいと思うな」
ミスラが出口を覗き込みながら言った。
「うむ。広場は敵を迎え撃つべき場所だから、稼働しているゴーレムがいるかもしれない」
リーデもミスラの意見に同調する。
もしもう一つの広場にどこかに繋がる通路があったとしても、直接重要な施設には繋がってないだろう。
それだったら、リスクを冒して戻る必要もない。
俺も二人の意見に賛同し、いざ第七通路へと進むことになった。
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