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勇者アイドル百合ハーレム ~アイドルな勇者が百合ハーレム率いて魔王討伐~  作者: 浦和マサツナ
第2章 百合ハーレム 〜ヴァルキュリウルス・セラグライオ〜
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第37話 熱き想い

新作「女装レイヤー俺氏。女の子になってしまったので女子レイヤー仲間増やして百合百合するです」

https://ncode.syosetu.com/n6110ey/


百合エルフは科学と魔法で無双する

https://ncode.syosetu.com/n6224ex/


上記二作品もよろしくお願いします。

 ヴァルキュリウルス・セラグライオの発足から初ライブまでの数週間。私は何をしていたのかというと……。


 「ユーリ! もっと重心を下げる!」

 「あいったぁ!!」


 マティルドに毎日のように投げ飛ばされ……。


 「ユーリ! 魔法起動の順番を間違えてますよ!」

 「あだだだだ!」


 ユスティーナに弱いながらも電撃魔法を喰らい続けられていたのであった。


 「戦闘訓練もういやだー!!」




 マティルドからは徒手格闘訓練に加えて、儀仗を物理的武器とした総合格闘訓練を。ユスティーナからは儀仗を使った魔法戦闘訓練を。歌やダンスの練習の合間に受けていたのだ。


 私の魔導儀仗はユスティーナ、ウルシュラちゃんとシニッカの三人が共同で開発した、私専用カスタマイズ品となっている。防衛用の魔法に加え、アイドル的に必要な魔法も仕込まれたマイク機能付きマイクスタンド型魔導儀仗である。


 アイドルとしても、勇者としても大事な『武器』だから、普段から肌身離さず持っていろと厳命されていた。おかげで今ではすっかり私の体の一部ともいえる存在になっていた。


 しかしそれはそれ。これはこれ。毎日ボロボロにされる私の身にもなってほしい。



 「うわあああん、二人共本気出しすぎだよぉ!」


 ようやっと休憩時間になり、私は事務所の庭の地面にドサッと座り込んだ。ダンスの練習よりシンドい。クタクタである。そりゃそうだ。私はアイドルであって兵士ではないのだから。


 今日も今日とて私を豪快に何度も投げ飛ばしたあとで、ふう、と、汗が流れてもいない額をタオルで拭うマティルド。彼女は全力の数パーセントも出してないのはご存知の通り。


 そんな私の毎日の抗議を受け流して、マティルドは言う。


 「まぁ、来週はライブだし、戦闘訓練は暫くお預けね」


 うぉおおおおんん!助かった!ようやくアイドル業に専念出来る!


 「そこ、やったー!って顔しないの。 ライブが終わったらまた訓練再開だからね」


 「うえぇー」


 「これから先、いつ敵襲があるか分からないんだから。ユーリには最低限自分の身は守れるくらいの技術を叩きこむつもりだから。引き続きよろしくね」


 にっこりと笑うマティルド。くそう、このドSロリ元姫め……。



 今では公共の場では、私はマティルド姫の事は「マティルド」と呼ぶようにしてある。彼女はすでに姫の身分を捨てた事、更には彼女自身がそう呼んで欲しいとベッドの中で願ったからだ。ならば私はそれに従うまで。


 同じように、私の今の身分は「ユーリ副座長」だから、マティルドやユスティーナ達からは「ユーリ」と呼ぶようにしてもらっている。


『勇者・富士見ゆりか』役は影武者が担当するので、私が「ゆりか」と呼ばれるのはよろしくないのである。




 「さ、ユーリ、シュラちゃん達が待ってますよ」


 私を立たせ、お尻についた土埃をぱっぱと払ってくれるユスティーナ。


 「ありがと!」


 戦闘訓練でクタクタだったはずの私も、ダンスや歌の練習ともなれば活力が戻ってくる。私達は、シュラちゃん……ウルシュラちゃんとシニッカが待っているダンス練習部屋へと向かった。


 シニッカだけ「さん」付けなのは変だとシニッカ本人から文句を言われたので、今では彼女の事も呼び捨てである。ウルシュラちゃんはウルシュラちゃんなのでそのままだ。


 さぁ、今日から来週のライブまで、ダンスと歌の練習三昧!ようやくアイドルらしい生活が送れるよやったね!……決して戦闘訓練から逃れられて嬉しいワケジャナイヨ?




 ライブ当日は晴れ。夏が終わりに近く、強い日差しの割には涼しい。実にライブ日和である。


 首都最大の街広場に設置されたステージの裏から、こっそり表を覗き見る私。この臨時ステージの設営や、数々の新作魔導器具の取り付けの指示を行ったのは当然シニッカ。こういった裏方的な仕事はまだ彼女の独壇場だ。


 「うおおお! 人たくさんいる! 嬉しいなぁ!」


 ステージ前には既に大勢の人たちでごった返していた。出店も多く、さながらお祭りのようである。


 曲の前奏が始まり、人々の視線が一気にステージに集中しだした。舞台下が俄に熱気を帯びだした。


 この世界の人間は、まだライブという物を見た事はないはずだが、お祭り気分で浮かれているみたい。曲に合わせて体を動かしている人も多いようだ。いいよ! みんなじっとしているよりも、ノッてくれる方がよっぽど楽しいステージになるのだから!


 「せーの!」

 「「「頑張れー! マティルド姫!ユーリちゃん!シュラちゃん!」」」


 どこぞのアイドル親衛隊みたいに声を張り上げてくれるのは、踊り子商会タンシャージャ近くのカフェの店員さん達だ。私のファン第一号を自称するソルヤちゃん達が応援に駆けつけて来てくれたのだろう。心の中で感謝する私。


 その声援を背に、私は2人に両手を差し伸べた。


 「じゃあ……マティルド、シュラちゃん……用意は良い?」


 私の左右の手の平に、2人は頷きながらそれぞれの手を重ねた。程よい緊張感が手を通して伝わってくる。私の気持ちも、きっと2人に丸見えだ。


 何度も前世で真弓ちゃんとしてライブを重ねてきたマティルドは当然の事、シュラちゃんにも無駄な緊張は見えない。


 「じゃあ! いっくよ!」


 2人の手を引いて、聞こえてくる歓声の渦へと飛び込んだ。




 初ライブという事で、1時間未満のセットリストにしてある。この世界での流行りの歌のカバー曲をメインに、私達が日本で歌っていた物を数曲、こちら風にアレンジして入れ込んである。最初から最後まで盛り上げて続ける構成だ。


 この世界で馴染みのある歌と踊りから、馴染みのないアイドルソングまでを、1時間ぶっ続けで歌いきった。心配していたアイドルソングにも、観客達はノッてくれていた。


 三人だけの舞台に、大勢の観客。心地よい緊張感と高揚感。ステージ上で私達の汗が夏日の下に煌めく。


 「これからも私達、ヴァルキュリウルス・セラグライオの応援!よろしくね!」


 座長であるマティルドが代表して、最後を締めくくった。


 「「「うぉおおおお!!!」」」


 観客の雄叫びで震えるステージ。この世界における初のアイドル的ライブは大盛況に終わったのであった。





 数日後、私達は勇者府に招かれた。


 ヴァルキュリウルス・セラグライオ発足時の打ち合わせ通り、『アイドル的ライブを成功させた私達は勇者府にスカウトされ、各地で魔王軍と戦う王国連合軍の慰労ライブへ赴く』事になっている。


 私の代わりに勇者府で「勇者・富士見ゆりか」役を務めている影武者ちゃんとも、本日初めて会う手筈にになっていた。


 マリーイ様とマティルドが選んだという影武者ちゃん……一体どんな娘なんだろ。勇者府へ向かう馬車に揺られながら、色々なタイプの娘を想像する私。おっとヨダレが。


 「……ユーリ? 誰か別の女の子の事、考えてますね?」


 ジトっとした目線を射ってくるのはマティルド。


 「あー、えーと、ほら、例の影武者ちゃんがどんな娘なのかなって、気になっちゃって」


 マティルドの前では何も誤魔化せないと知っているので、正直に話す私。


 「ほら!やっぱり別の女の子の事を考えていたんじゃないですか!」


 私の考えを当てられたのが嬉しいのか、ニマニマとするマティルド。


 「でもまぁ、ユーリが気になるのも分かりますよ。マティルド姫、どんな娘なのでしょうか?」


 ユスティーナが隣で苦笑いをしながら尋ねた。


 「うふふっ、会ってからのお楽しみに。私とお母様が選んだ娘ですもの! 期待しててくださいね!」


 ニンマリするマティルド。




 やがて勇者府へと到着した私達を出迎えてくれたのは、かつて私が着ていたのと同じデザインの勇者制服に身を包んだ14歳程度の少女であった。


 ウェーブのかかった若草色のロングヘアに、透明感のある緑色の瞳は夢見るようにタレていて可愛らしさとセクシーさが同居してる。そして巨乳!!


 「ヴァルキュリウルス・セラグライオの皆さん。ようこそおいでなさいました。富士見ゆりかです」


 トロンとしてゆるふわ。うわぁ~!エロ可愛い~!守りたくなる~!さすがマティルドとマリーイ様が選んだ人材だ。


 数週間の戦闘訓練を経て、眼の前にいる人間の強さが多少は見て取れるようになった私でも分かるように、この影武者ちゃんはとても強い。それでもなお、兵士たちが騎士道精神を発揮したくなるような、守りたくなるようなお姫様的存在を勇者役に据えるとは!!


 さすがあの母娘である。


 同じお姫様でもマティルドが騎士達を率いて戦うタイプなら、影武者ちゃんは騎士達に守られながら進むタイプである。


 隣では、マティルドが『どうよこの娘、いいでしょ』とでも言わんばかりに胸を反らしていた。ドヤるロリ姫もまた可愛い。


 うん、とても良い。ウチに欲しいくらいだ!!


 しかし今は正式な場面である。影武者ちゃんへ向かって一礼をする私。


 「勇者ゆりか様、お初にお目にかかります。副座長のユーリです」


 自分の名前で相手を呼ぶのって、なんか変な感じ。


 私の眼の前でゆりかとして振る舞っている少女は、くすりと笑い、手を差し伸べてきた。それを握り返す私。


 「ユーリさまのお噂は、マティルド姫からたくさん聞いていますよ」


 握り返した私の手を、両手で包み込み、意味深に微笑む『勇者ゆりか』。 マティルドは一体なにを喋ったんだ……。


 「では、私の執務室までご案内いたしますね」


 そう言って「勇者ゆりか」は私の手を引いたまま、かつて私が使っていた部屋へと向かっていった。

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