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あとがき

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本作でも触れた「邪馬台国四国説」は、魏志倭人伝の行程解釈をはじめ、実際に多くの研究者や郷土史家の方々が、長年にわたって緻密な資料を積み重ねてこられたテーマです。本作に登場する地名の一致や音の類似、神社の構造比較などは、そうした先行研究や言い伝えを参考にさせていただきながらも、物語を面白くするために、作者の想像で大胆に繋ぎ合わせた部分も多くあります。学術的な検証や、より精緻な論証については、ぜひ、その道の専門家の方々の研究に触れていただければと思います。本作は、あくまで一つの「物語」として、楽しんでいただけたら幸いです。

第76話で、剣山の山頂に集った皆が阿波おどりを踊る場面を書きながら、ふと思ったことがあります。

天照大神が天の岩戸にこもったとき、その前で踊りが奉じられ、神々の笑い声が世界に光を呼び戻した、と神話は語ります。あの祭祀を取り仕切ったのは、阿波忌部の祖神、天太玉命です。そして阿波には、今も「踊る阿呆に見る阿呆」と、誰もが輪になって踊る祭りが、千年の時を超えて息づいています。

岩戸の前の祭りの記憶が、形を変えながら、阿波の踊りの中に残っているのではないか。そんな想像が、どうしても頭から離れませんでした。

もちろん、阿波おどりの起源は、盆踊りや念仏踊りと風流踊りが結びついたものとする説が一般的で、天の岩戸との関係を示す確かな史料があるわけではありません。これもまた、完全に、作者の勝手な空想です。

最後に、もう一つだけ、個人的な夢物語を書かせてください。

劇中、名方が最後まで「読めない」と語っていた、あの神代文字――船盡比賣神社の幟に記され、三木家の文書にも記されていたとされる、あの記号の正体です。

これは完全に、作者の勝手な憶測なのですが。

もし、あの文字が本当に解読される日が来るとしたら、そこにはきっと、何か恐ろしい呪文や、力の在り処を示す地図のようなものではなく――もっとずっとささやかな、けれど確かな言葉が、刻まれているのではないかと、私は思っています。

たとえば、こんな言葉です。

「麁服あらたえのように、幾重にも織り重ねて、王家を支え続けよ」

一本一本の麻糸が、幾重にも織り重なって、初めて一枚の神聖な布――麁服になるように。この土地に根を下ろした人々もまた、それぞれの祈りを持ち寄り、織り重ねることで、千年以上先の未来まで、国の在り方を支え続ける役目を、託されたのではないか。そんな想像です。

実際、忌部の末裔とされる三木家は、今もなお、天皇陛下の即位の折には、代々受け継がれてきたその技術で、麁服を織り、大嘗祭へと奉納し続けています。もし、あの神代文字に刻まれた約束が、本当にそういうものだったとしたら――三木家は、二千年近い時を超えて、今もなお、その約束を果たし続けていることになります。

海を渡ってきた人々が、たどり着いたこの土地で、託された使命。それは、争うためでも、奪うためでもなく、ただ、国の礎を、静かに支え続けるための約束だったのかもしれません。

忌部の「神の家に属する者」、三木の「王に仕える者」――そのどちらの一族も、結局は、この一言を守り続けるために、千年以上の時を重ねてきたのではないか。そんな想像が、物語を書き終えた今も、私の中には、ずっと残っています。

もちろん、これはあくまで、作者の願望に過ぎません。本当の答えは、誰にも分からないまま、剣山のどこかに――あるいは、誰かの心の中に、静かに眠り続けているのだと思います。

そして、この物語を読んでくださったあなたも、いつか麁服や、阿波忌部氏の歴史に触れる機会があれば――そこに込められた、千年を超える祈りと約束に、少しだけ、思いを馳せていただけたら、これほど嬉しいことはありません。



※活動報告にて、作者の完全な妄想による「もしも映画化されたら希望キャスト(笑)」を公開しました。お時間のある方はぜひ覗いてみてください!

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