プロローグ
初投稿です
時は20XX。フルダイブ型VRMMOが主流になった時代。
多くのゲームタイトルが誕生し、今なお多くのゲーマーに遊ばれている。
そんなゲームタイトルの一つであるassault war online Ⅲ、通称AWO Ⅲは人型機動兵器assaultを自分でカスタムし実際に操作して戦うメカアクションゲームシリーズの三作目だ。
ロボット物とは往々にしてニッチなジャンルだが、初のオープンワールドであり、対人戦を推奨しているため、騙し討ち、待ち伏せなどなんでもありでありながらリアルな戦闘を楽しめるゲーム性と臨場感がコアなファン層を獲得している。
かくいう俺、麻雲修馬もAWOのプレイヤーの一人だ。
元々、父の影響でロボットアニメには幼い時からふれ、そこにAWO特有の自由度の高いカスタム性とアクションにすっかり惚れてしまった。
今日も学校から帰ってきてからすぐにログインし、フレンドの人達と合流しフィールドに駆り出していた。
時刻は夕暮れ、沈みかけの太陽が荒れ果てた大地を橙色に染め上げていた。
そんな幻想的な光景を狭いコックピットの中で眺めながら、刻々と予定の時間になるのを待つ。
予定だと、確かもうそろそろのはずなんだけど……
『おい、シュウ。見えたぞ』
「了解。ポイントまで誘導するから狙撃お願いしますね、もちもちさん」
『あいよー』
ヘッドセット越しの通信から、フレンドのもちもちさんから連絡が来る。
俺は機体を立ち上がらせ、目の前の断崖絶壁の下を見る
視界の先には、複数のassaultが陣形を組んでいる。
数は四機。軽量型が一機、重量型が二機、中量型一機か。
俺がフットペダルを前に踏むと、背部のスラスターを吹かして俺は崖を駆け下りる。
右肩の六連装ミサイルを放つ。
発射されたミサイルは重量型に集中し、爆炎を巻き起こす。
レーダーで居場所はバレるが、正確な位置が分かる訳ではない。
両腕のアサルトライフルを両手で構え、引き金を引いてぶっ放す。
レティクルが定まっていないせいか、弾丸は軽く掠るだけだったが、全く持って問題ない。
地面に着地すると、そのまま一目散で逃走する。
当然の如く、敵機からビームやらマシンガンやらミサイルが飛んでくる。
「ぬおおおおおおおおおおお!?」
俺は飛んで跳ねて、降りしきる殺意の雨を躱しながら目標の座標まで誘導する。
やがて目的の位置に辿り着くと、今までの物とは違った轟音が響く。
追いかけていた四機の内一機が、コックピットの位置に大きな風穴が開く。
HPが全損し、重量機の一機が無数のポリゴンとなって消滅する。
「もちもちさん! ナイスショット!」
機体を転身させ、高速で移動しながら狙いを軽量型の機体に定めてアサルトライフルを掃射する。ね
HPを四割程まで削ると、左腕のブレードを展開してコックピットを貫く。
残り二機……いや、またもちもちさんが倒したから残り一機、でもどこに?
その疑問に答えるように、後ろからアラートが鳴る。
「不味っ……!?」
俺は後ろを振り向くが、既に中量機はブレードを振り上げていた。
回避が間に合わない……!
俺はアサルトライフルの引き金を引こうとするが、それよりも敵機がブレードを振り下ろす方が早い。
そしてまともに抵抗する事ができず、ブレードが振り下ろされる━━━━ことはなかった
突如、動きを止めるとポリゴンとなって空気に溶けた。
目の前には、両腕にパイルバンカーを装備した紫紺のassaultが立っていた。
『もう、後ろも気をつけないとダメだよ。シュウくん』
「シラヌイさん……助かりました」
『おーい、俺のアシストがあったことも忘れるなよ』
かくして戦闘は、怒涛であったが呆気なく終わったのだった。
◇
「「「かんぱーい!」」」
場所は変わって、ロビー。
俺は、もちもちさんとシラヌイさんと共に祝賀会をしていた。
VR MMOではリアリティの為、大体のゲームでちゃんと飲食はできるようになっている。
ちなみに味はしない。
これはあくまで、ゲーム内での交流を深める為のツールだからだ。
「いやぁ、それにしても最後のシラヌイさんの一撃最高でしたよ」
「ははは、私は不可視ECSでこそこそアサシンプレイしただけだから。それよりもシュウくんの陽動ともちもちくんのアシストが効いてたわよね」
「そうだぞぉ! 俺の【ずんだmark.III】の精密射撃の有り難みに咽び泣け」
「いや、咽び泣けって……というか【きなこmark.II】はどうしたんですか?」
「……アイツは、最近のアプデで追加された大型スナイパーライフルを装備するには機体が軽すぎた」
「ああー、なら仕方ないですね」
assaultの武器の命中率は、本体重量と武装重量、そして武器の反動で決まる。
威力の高い武装は重量も反動も大きく、もちもちさんの前使っていた中量型型の【きなこmark.II】では扱えなかったんだろう。
一撃の火力を重視するスナイパーにとっては、より強い兵装に変えて、その為に機体を新調するのは至極当然の話だ。
「でも、それで援護が遅くなってましよね?」
「ザクッ」
「それに火力なら前の奴で足りてますよね?」
「グフッ」
「おまけに、連射性が落ちてますよね? 前ならバックアップ間に合ってますよね?」
「ドムッ!?」
俺の連続の指摘に、もちもちさんはへなへなとテーブルに突っ伏した。
「よ、容赦ないわね。シュウくん……」
シラヌイさんは頬を引き攣らせているが、俺は気にせずドリンクを飲む。
この人は調子に乗らせると、非常にウザいのでこのぐらいの塩対応が丁度いいのだ。
「ところで来週から始まるランクマッチ、どうします?」
「うーん、私はちょっと無理かな」
「俺もお仕事あるからパス。はぁ……休日出勤マジくそ」
「右に同じく。ほんとお仕事するのは嫌だわー」
「あの……シラヌイさんや。会社運営しているアンタと比べられるのも、烏滸がましいほと別次元なんですが」
もちもちさんは苦笑しながら言い、俺は首を縦に振って肯定する。
だってシラヌイさん、超がつくセレブだもん。
どんぐらいセレブかと言うかと、昔オフ会で某高級焼肉チェーン店に、もちもちさんと一緒に連れられブラックなカードでお支払いするぐらいだ。
なんでも実家が元財閥の家系らしく、多くのVR MMOゲームにも使われているゲームエンジン【ユグドラシル】を開発した、葉月コーポレーションの開発主任……というか、生みの親そのものだ。
いやー、初めて知った時はマジで度肝抜いたのは覚えている。
天は二物を与えずというが、あれは絶対嘘だと思ってる。
でも実際、こうして一緒に遊ぶ仲になってるから、世界って何が起こるかわからないものだ。
「ははは、それもそうだね。そうこうしている内にこんな時間か。私そろそろ落ちるわ」
「俺も明日早いからまたな」
「そうですか、また今度」
そう、各々が別れを言った後、二人はログアウトした。
そっか……彼らと出会って早くも二年、出会った当初は二人は大学生だから都合がついたけど、今年から社会人になったんだからそりゃ忙しいか。
俺は学生だから、基本的に休日は遊べるけど二人はそういう訳にはいかないよな。
俺も来年には大学受験があるから人ごとではないが、なんだか少し寂しい気持ちもする。
おっと、いけないいけない。
いつまでもネガティブな思考は良くないよな。
とはいえ、どうしたものか。
明日は休日だから、もう少し潜っていたいけど何をしたものか。
「そうだ、ランダムミッションでもやるか」
このゲームは基本的に多人数推奨だが、当然ソロ用のゲームモードも存在する。
主に二つで一つはストーリーモード、読んで字の如く決められたストーリーをプレイし、世界観を体験できるモードだ。
そしてもう一つがミッションモード、これはプレイヤーが機体の強化に必要なアイテムや金銭を稼ぐためのゲームモードだ
その中でも週替わりで行えるミッションが、ランダムミッションだ。
難易度が高い代わりに、クリア報酬は高額な金銭の他にもレアなパーツなどもドロップするので上級者に人気がある。
ホロウィンドウを広げ、コマンドを操作する。
ミッション選択画面に移動し人差し指を上へスライドさせると、それをなぞるように画面が上へ流れる。
ぼーっと眺めていると、とあるミッションが目に留まる。
「なんだ、この《???》ってミッション」
試しにクリックして、ミッション詳細を見てみるが文字化けしていて読めたものではない。
バグ……と思ったが、もしそうならそもそも報告ボタンがある筈だ。
なのにその表示がないということは、正式にミッションを受けられるということだ。
しかしどうしたものか……報酬の20000クレジットは美味しいが、どこかで「騙して悪いが……」とか聞こえてきそうだ。
興味はあるが、このゲームのとあるシステムが邪魔してくる。
このゲーム、とある旧来型のゲームに影響を受けているのか、機体の修理費や弾薬費などは報酬から引かれる。
そしてAWOでは機体が全損した場合も支払い、そうなれば赤字は確定だ。
そうならないように、プレイヤーはミッションに合わせた装備を整えるのが定石。
けれど内容が分からないのに、ミッションを受けるのはいささかリスキーすぎる。
あ、でも今の残高は昨日荒稼ぎしたからかなり余裕があったけ。
いや、でも、無駄遣いしていいものではないしなぁ。
俺は腕を組んでしばらく考え込んだ後、決めた。
「ま、いっか。受けてみよう」
そう楽観的に、受領ボタンを押したその時だった。
プツン、と回線が切られたかのように視界が暗転した。




