マイライフ ベッド
ヤバイ、死にそうだ。
なんせ俺は弾丸なしで帝国の正規兵と戦っているからだ。
「撃て!撃てぇぇ!」
ズガガガガっ!
いかにもテロリストくさい安物ライフルで俺を殺そうと発砲してくる。
「いい加減にしろ!いつまでもバカスカバカスカ撃たれちゃ腹が立つ!」
いつまでも撃ってくるものでついつい遮蔽物から出かけたその時、敵の攻撃が止んだ。
「どうなっている、気持ちが悪い。」
帝国軍人はいつの間にか血まみれになって倒れている。
顔面には深々とあいた銃槍が広がっている。
「おいおい、弾丸の節約はどんな辺境でも万国共通だろ?冷静さも弾もなきゃ話にならねえぞ。」
聞いたことある声だ。
まるで殺人を犯した人間のように深々と心に染み渡る声。
近くの建物の屋上にはスナイパーライフルを握ったシルエット。
口にはアメリカから取り寄せた高濃度のタールをぶち込んだタバコ。
「た、隊長!」
「久しぶりだな、相変わらずポーカーフェイスの裏側は情熱家か。」
「その憎まれ口、お元気そうで何よりです隊長。」
「心配してくれてたとは嬉しいね、長距離射撃で生き延びてからはハンブラビ帝国の情報集めさ。今からお前には帝国の機密情報を伝える、それに応じて行動してくれ。」
こんな返事をするのは久しぶりだ。
「サーイエッサー!」
俺は火虎隊長から帝国の情報を伝えられた。
この前ニュースでやっていた「武蔵が行方不明」というのは帝国がやったことらしい。理由は知らないが何かを企んでいるんだろう。
もう一つの情報は帝国最強の幹部が3人残っているということだ。
残りの雑兵はクーデター軍で鎮圧できるそうだ。
ここまでわかればあとは皇都を落とすだけだ。
隊長が敵から奪ったM1911 のマガジンを持っていたので俺はそれを受け取った。
数は何と18個、弾数は7×18で、…………。
そういえば馬鹿だから白夜と違う負け犬高校に行ったんだった。
こんな時に調子に乗る俺が嫌いだ。まったく…。
と、とにかく帝国の機密情報を得た俺はまさに鬼に金棒レベルだ。
「皇帝はイケメンらしいぞ?俺はイケメンが嫌いだから殺しといてくれよ。」
人を殺すというシリアスな展開でも俺たちはこんな明るい感じで話す。
どうにかしてるよ、まったくおかしいさ彼らも俺も。
「これより雪風勝人は敵対国総本部、ハンブラビ帝国皇都陥落作戦を決行します。」
「いい心構えだ、入隊直後のヘナチンとはまるで違うな。雪風勝人!貴様の武運を祈る!」
「これぞ本当の本土決戦一億玉砕、敵前逃亡死あるのみってやつですね。」
俺はそう言って喜んで皇都宮殿に突っ込んだ。
もう帝国も隊長たちも俺でさえもまともじゃない。
まともな奴がいない、かえって好都合だ。
どんなことをしても狂気の正当化をはかれる。
ガコッ
「オラオラァ!俺がクーデター軍の幹部だぁ!かかって来いや!タイマン張ってやるからかかって来い!殺してやるからかかって来い!」
俺は敵の揚げ足をとるためにあえて敵の逆鱗に触れることを叫んだ。
しかし宮殿の中には敵の大軍勢はおらず、3人の騎士の格好をした奴らが立っていた。
「ん?おかしい、騎士団はすでに壊滅したはずだ。」
「壊滅したさ。あの目つきの悪いスナイパーに全員殺された。」
スナイパーってことは隊長のことだな。
「俺たちは騎士団じゃない、騎士団から独立した特別親衛隊だ。」
特別ってことはそれなりに力を持っているってことだ。
「そうかよ、特待生ってところか?きらいだなそういう特別扱いされてチヤホヤされる人間が……嫌いだよ!」
ズドンッ!
ヘヘッ
エゲツない不意打ちを仕掛けてやった。
しかし相手は独立した部隊だ、どんなことをしてくるかわからない。
とにかく回避行動をとっておこうかと思った時、
敵の剣先が俺の頰をかすめた。
「やっぱり、騎士団に通じない手は手前らにも通じないか。」
「君には誇りがないようだね。」
口調が綺麗なやつもいたもんだ。
「俺たちがそんな下品な不意打ちに引っかかるとでも思うのか低脳が!」
口の汚いクソもいるようだ。殺そう。
「威勢がいいな、この馬糞野郎が。手前みたいなのは手前以下のクズに殺されるのがお似合いさ。」
「殺されるのは貴様だクーデター。俺の剣の前に刻まれな。」
「刻まれる?俺が?誰に?まさか、お前が?
プッ フハハハハハハッ アーッハッハッハ!手前が俺を殺すだって?やめてくれよアメリカンジョークはわからないんだよ。もしも俺がお前に殺されるときは俺のタマが堕ちたときだよ。」
散々馬鹿にしてやった。
「貴様にしつもーん、貴様の1番大切で仕方がないものはな〜んだ。」
訳のわからんことを言い始めやがった。こんな気狂いには関わりたくないが仕方ないな。
「俺の大切な物?決まってんだろ?ロッド(棒)とボール(タマ)だよ。」
「ブッブー、正解は貴様自身の命だ!!」
敵は自己紹介もなくいきなり斬りつけてきた。
「ほほぅ、不意打ちか。やるじゃないか名前も知らない馬糞野郎が。」
「おっと、自己紹介が遅れたな、俺は帝国一の豪剣、ハインケルだ。手前の命をよこせ!」
「命命って手前の言う事成す事が俺以上に下品なんだよ!」
俺は残りの2人を差し置いて勝手に、ご機嫌に殺し合いを始めた。
どっちが死んでも遺恨なしのガチの殺し合い、こんなにも命のやり取りが楽しいなんて思わなかった。
かかって来いハインケル、下品な言葉を吐きちらす口を綺麗に十文字に割いてくれるぜ。




