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仁藤の二戦は苦戦で激戦

二戦目の相手は粗忽洋子。ぼさぼさのロングヘア―にロングスカートという現代的には大分イケてない格好をものともしない美貌の持ち主で、かなりの実力者だ。何しろ仁藤様とのにらみ合い、いわゆるフェイスオフの段階から170000時間もかかった。当然これは体感時間で実際には一瞬である。でも待って欲しい。実際には、と言ったがそれでは体感時間は偽物という事だろうか。本当の時間とは一体何なのか。時間とは一種類しかないのだろうか。いや、そんなはずはない。

僕たちがそんな風に思いを馳せている間にも、仁藤様と粗忽洋子の戦いは第二段階に進んでいた。粗忽洋子はあからさまな媚びを売り、仁藤様に上目遣いで色目を使いながらしなを作る。仁藤様の武術ではなく40歳無職な所を攻撃に来たのだ。武術に卑怯の文字は無い。相手の強い所で戦わず、弱点を執拗に狙うのは初歩の初歩だ。これには仁藤様もたじたじだ。あまりの無様さに僕たちもバキュンキャンセル、略してバュンャンしかけたものの、意外な形でバュンャンキャンセルされた。

粗忽洋子も所詮は初心な女子高生であった。つまり、若い娘である自分の見え見えの演技にたじたじになる仁藤様の無様さに耐えられなかった。媚びに綻び、しなもしなしな、こうなっては生粋の40歳無職である仁藤様も流石に正気に戻り、とうの昔に地に落としたはずの哀れなチェリー心を弄ばれた怒りから宇宙破壊爆弾を生成した。武術で爆弾を生成するのは中レベルの技術だが仁藤様の爆弾は桁が違いすぎる。全宇宙が滅びの時を迎えた。

だが粗忽洋子も頑張った。弱点を執拗に狙うのは武術の初歩だが、一方で相手の強みに触れ絶体絶命の危機に瀕する事で生まれる恋もある。武術式恋愛工学は、愛とは拳で証明する物と定義する。仁藤様の宇宙破壊爆弾という暴威(BOOWY)は粗忽洋子の乙女心を覚醒させた。そして彼女は本気と書いてマジと読むしなを作り仁藤様にアピールする。演技ではない初恋の威力に、仁藤様もたじたじだ。今度こそ地に落とし手掘りで埋めてお墓を作ったはずのチェリー心を掘り返したくなるほどに。粗忽洋子の初恋が勝つか、仁藤様の宇宙破壊爆弾が勝つか。紙一重の戦いは佳境を迎えていた。僕たちは固唾を呑んで見守るしかできない。

と、固唾に両者が反応した。先に動いたのは粗忽洋子だった。

僕たちの固唾によって宇宙の粘性が増した結果宇宙破壊爆弾の威力が減衰した。

それでも宇宙は破壊されるが僅かな猶予が生まれる。その隙を見逃す粗忽洋子ではない。差し違える覚悟で作られるしなの破壊力。それは肌の露出。スケバンらしいロングスカートを捲り上げ、ふくらはぎ、膝、そして太ももを露わにする。偽りの媚びではバレバレすぎて控えていた。それに乙女の矜持としても何で40歳無職のキショイチェリー心を誑かす為に肌まで晒したらなあかんねんとなるのもやむを得ない所だ。つまりマジ恋だから発揮できる大胆さ。これには仁藤様もたじたじだ。このままスケバンが勝利するのか。それでは宇宙が守られてしまう。いや、その方がいいのか?

混乱する僕たちをよそに、仁藤様は不敵に笑う。粗忽洋子はバキュンされながら宇宙破壊爆弾という名の鉄拳制裁を受けつつ悟った。後の先を取られたのだと。

後の先。武術の基本にして奥義の一つであり、これを取られたものは必死となるので絶対に取られてはならない。

ヒヤヒヤさせちゃって全く、不器用なワルね……。と思った僕たちは甘かった。仁藤様は計算通りだった。全ては仁藤様の掌の上だったのだ。目的は、戦いの中での成長。武術において戦いの中での成長は必須であり、これができなきゃ武術やめろ3億か条の1792番目にもはっきり記載されている。

つまり仁藤様は自身最大の弱点である40歳無職の気色悪いチェリー心を克服するためにこの戦いを利用していた。粗忽洋子にとっては死闘でも、仁藤様にとってはレベルアップイベントに過ぎなかったのだ。

かくして仁藤様は自ら選んだ苦戦をしつつも戦いの中で成長を遂げ、見事な勝利を収めたのだった。

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