第38話 今更のレクチャー2
マリアとルミナスの白虎はダンジョンを戦闘をせずにひたすら進み、いつもはルミナスの白虎が狩場にしているエリアまでやって来た。
「マリア嬢、ここからは気兼ねなく戦っても大丈夫だ」
ギルバートの言葉を聞いたマリアが嬉しそうに振り返る。
「やっとですわ! やっと戦えますわぁー!」
マリアが目をきらきらと輝かせて叫ぶと、今まではルミナスの白虎に合わせていたと言わんばかりに加速して魔物に向かって1人突っ込んで行く。
「ちょっと! 危ないわよ!」
「お嬢ちゃん! まずは俺の後ろに——」
ルミアが呼び止め、盾役のギャリアンが声をかけるがマリアは聞く耳を持たずに魔物に突進して行った。
「マリア嬢は大丈夫だ! 俺達はいつものように連携して戦うぞ!」
唯一マリアの戦闘を見たことがあるギルバートがそう言って指揮をとるが、他のメンバーはやはり見た目が箱入りお嬢様なマリアを心配するようにギルバートに抗議しようと口を開こうとした。
その時、ズドォン! という岩を砕くような音がダンジョンに響いた。
「……大丈夫みたい」
もしもの時は魔法で援護しようとマリアの方を見ていたペルカが言葉足らずにそう呟いた。
ギルバートに抗議しようとしていた面々が音のした方へ振り向くと、そこには頭をかち割られたアイアンゴーレムが地にひれ伏していた。
「一撃だった」
ただでさえ驚いているルミナスの白虎のメンバーはペルカの一言でこれ以上ないほどに目を見開いた。
「嘘よ……」
「一撃だって? なんの冗談だ?」
口々からそんな言葉が漏れるのも無理はない。
アーマーリザードほどではないが、アイアンゴーレムも防御が堅く、ルミナスの白虎が数時間かけて倒す魔物である。
そんな魔物を、マリアはだったの一撃で倒してしまったのだ。
「早くしないと俺達の稼ぎがゼロになるぞ! みんな、早く持ち場につけ!」
ズドォン!
ズカァン!
ルミナスの白虎が驚いて手を止めている間にも、マリアは次の一体、また一体と大きな音を立ててアイアンゴーレムを倒していく。
ギルバートの指示を聞いて、ルミナスの白虎はハッとした様子で陣形を組むが、時すでに遅く、目の前の最後のアイアンゴーレムの頭にマリアのメイスが振り下ろされた。
「あぁ、快感ですわ」
確認できる全てのアイアンゴーレムを倒し終わったマリアが、うっとりした表情でそう呟く。
「ハハハ、俺らの出番無し」
「ギャリアン、それどころじゃないわよ! ギルド?」
呆れて笑ったギャリアンに、ルミアがツッコミを入れると目を吊り上げてギルバートの方を見る。
「ギル、ここでマリアさんの狩りを解禁したら今度は私達の獲物が借り尽くされちゃうわ!」
「そ、そうだな……」
ギルバートは理解していたつもりだが、マリアの強さはそれを軽く超えて行ってしまった。
「まずはマリア嬢がどれくらいまでなら安全に狩りをできるのか。その確認が先なんじゃないかな?」
沈黙が訪れた所で、影の薄い剣士ラディがそう提案した。
「それがいいかもね。その方がマリアさんにとっても稼ぎが大きくなるでしょうし」
「今日は私達は見学役」
ラディの提案にルミナスの白虎が納得した頃合いで、マリアが鼻歌を歌いながら戻ってきた。
「皆さま、早く次に行きましょう!」
マリアは早く次の魔物へ向かいたくてウズウズしていそうだが、ギルバートが先ほど決まった今日の方針を説明した。
「それで、マリア嬢は普段はどの辺りまで行くんだ?」
「カバンがいっぱいになるまでですわ!」
元気よく答えるマリアにギルバートやルミア達は要領を得ない難しい顔をした。
「そうじゃなくて、苦戦するのはどの辺りなの?」
ルミアの質問に対してマリアは首を傾げる。
「分かりませんわ? みなさん大体一撃ですから」
その言葉に、ギルバート達の表情は驚愕に染まる。
「と、とりあえず、誰ともかち合わずに安全に狩りができて利益が高そうな所を探すって事で良いんじゃないかな?」
ラディの提案に、ギルバート達は無言で頷いた。
「楽しみですわぁ!」
1人だけワクワクを抑えられずに楽しそうにするマリアを見て、ギルバート達ルミナスの白虎は苦笑いを浮かべたのであった。




