8…相談
―――コンコンコン
「お父様、セシリアです。お話したいことがあるのですが。」
「――入りなさい。」
静かな部屋の中には執事もおらず父は1人執務を行っていたようだ。
「石碑調査の後もお仕事とはお忙しいところ申し訳ございません.」
「気にすることはない。どうしたのだ。」
調査の最中とは違い、優しく声をかけてくれる。
「――実は今日の調査の件で非常に重大なことがわかりまして・・」
「なるほど?・・・では座って話を聞こうか。ソファにかけなさい。」
父は執務室のソファに腰かけるように勧める。
「――それで報告とは?」
「魔神グリムディアが復活しそうです。」
「!!!なんだと?・・・本当なのか?・・根拠は?」
「石碑の前で精神干渉魔法を使われたのだと思います。姿は見えませんでしたが、話しかけられました。」
「・・・」
父は苦々し気な表情で黙り込む。
「・・信じられないですよね・・」
「いいや、私は信じる。」
「お父様??」
セシリアの不安げな問いにも父は優しく肯定してくれる。
それはセシリアの為とかそういう類の感情ではなく、まるで分っていたかのような言い方に感じる。
「あの石碑の前に行けば・・そうなる可能性があることを私は知っていた・・。
守り人の継承として【対話】は絶対に必要なことだったのだから。」
「・・どういうことですか??」
苦々しい表情を見せた後嘆息すると覚悟を決めたかのように父は話し始めた。
「――私がまだ守り人を継ぐ前、前守り人であった先代の公爵夫人から継承前に真実は告げられた。
あれは私がバトネ公爵となり、魔法使いとしても認められた頃だった。
前守り人から引き継ぎの方法を伝授していただいた。
それは魔神グリムディアの石碑の前に立って対話するということだった。」
「――対話?!」
「そうだ。私たちは素晴らしい能力を持った魔法使いの一族のように言われているが、実はそんな大層な一族ではない。
我々は魔神グリムディアと似た思考を持っていたからこそ【守り人】に選ばれたのだ。」
「・・・まさか・・似た思考とは【執着心】などのことですか?」
「――そうだ。私たちバトネ公爵家の人間は一途に1人を愛し続ける気質の人間が多い一族だ。
だからこそ魔神グリムディアとの親和性が高いのだ。
魔神グリムディアは女神ネフレテだけを愛しているからな・・。
300年程前の封印時、大神官は強引に封印された魔神グリムディアを見張る必要があった。
そのために魔神と話をすることができる人間が必要だった。」
「・・・そんな・・なぜ教えてくれなかったのですか!」
「――誰だって魔神グリムディアと対話しろなんて言われたら怖いだろう・・」
「それはそうかもしれませんが、もし私の心が弱ければ今日憑依されていたのですよ。
――魔神からそう言われました。」
「すまない。私も次ぐ前に対話したが、すぐに対話は終わったから侮っていた。
・・・あと年頃の娘に一途な愛の話をするのは躊躇われた・・・不甲斐ないな・・。」
「・・まだ納得はできませんが、その話はおいおいで構いません!
魔神グリムディアの話に戻しますが、対話の際に近いうちに私の体を器として使うつもりのようです。
万が一憑依された場合・・・私の魔力と魔神グリムディアの力を考えればとんでもない脅威だとご理解いただけるはずです。」
「――セシリアに狙いを定めているのか・・」
父はより一層険しい表情で思いを巡らせているようだ。
「それでご相談なのですが、これからしたいことで助言をいただいてもよろしいでしょうか?」
「――助言?・・勿論私でよいのなら相談には乗る。話してみなさい。」
「実は――――。」




