27…再会
「―――リアっっ!!!」
裂け目からこちらに駆け寄ってきたハリアスは、ぐいっとセシリアの腕を掴み暗闇の中から体を引きぬくとぎゅっと強く抱きしめる。
「ハリー!?何故…」
まさか見つけてもらえると思わず、放心状態のまま抱きしめられていた。
力の抜けた声音でセシリアは呟くことしかできない。
「私の聖魔力を感じたから…きっとここにいると思ったんだ。見つけられて本当に…本当によかった!」
セシリアは闇魔力によって作られた空間に閉じ込められていたらしい。
どうやらハリアスは聖属性の魔法剣で闇の空間を切り裂き、強引にセシリアを救い出してくれたのだ。
「――ぅうっ…こわっ…かった…」
ハリアスの言葉に気が緩み、ぐすぐすと力なく泣き始めるセシリアを、優しく背中を撫でながら抱きしめるハリアスは、周りに的確に指示をだしている。リュシードとアイにも指示を出し終わると、セシリアを横抱きに抱えて馬車まで連れていき王宮へと向かうのだった。
「――ハリー…みんなを置いて私だけ離脱して…よかったの?」
「大丈夫だ。リアをあの場に留めることの方が危険だったからね。」
馬車の中でもハリアスに横抱きにされたまま彼の膝に座るセシリアは、頬を染め上げながら彼の言葉が正論過ぎて返す言葉もなく俯き視線を彷徨わせる。
(――だからって…な…何故こんな座り方させられているの?!!)
こちらの動揺など気づいてもいないかのように、堂々と抱き続けるハリアスに頬を染めたまま眉根を寄せる。
「…さっきは…ありがとうございます…」
すでに助け出されてから半刻は過ぎており、今更ではあったが絶対に感謝の気持ちだけは伝えたかった。見上げて思いを告げると、ハリアスは優しく微笑みを返してくれる。
「あの…本当によかったんですか?…もしかしたら魔神が皆を襲うのでは…」
「大丈夫だよ。その為にリュシードとアイ嬢を置いてきたのだからね。」
「そうなんですか?」
「あぁ、今魔神に対抗できるのは聖魔力の強い者だけだ。神官たちもいたが、訓練慣れている2人の方がきっと役に立つ。アイ嬢もかなり能力が上がったから任せて問題ない。」
「――それなら良いのですが…」
「――私はそれよりもリアの方が心配だ。まずは国王陛下へ報告して、今後の事を早急に対策を考えなければならないだろう。」
「――その件ですが、報告を先にしても良いですか?」
「魔神との対話したことかい?」
「はい、魔神だけでなく女神様とも対話しました。」
「――女神?!」
「はい、最初に魔神に闇に囚われた時には自分で逃げたいなら勝手にしろと言われました。
その時に魔神は、自分は人間を操っているのではなく、勝手に人間が操られているのだと言っていました。」
「勝手に?」
「―はい、魔神の意思ではなく、気持ちの弱っている者や、親和性が近い者が石碑へ近寄った際に魔神の闇魔力にあてられ魅入られてしまったようなのです。
恐らく起こしている魔獣事件は、魔神の言っていることが正しいのであれば、その闇魔力を吸収し、魅了された人間の独断の行動と思われます。」
「闇魔力の魅了…執着心や独占欲を拗らせたような愛情を持つ者たちということか?」
「…恐らく…どの程度かは私にはわかりません。
しかし、魔神の思考に近い者が闇魔力を手に入れて暴走しているのだと思います。
闇魔力に魅入られた者でも、魔力が高い者でないと吸収した闇の魔力は扱えないようなのです。ですから、予測通り4名の誰かが闇魔力に魅了されているのではないかと推測できます…。」
「――やはりそうなのか…リアから見て公爵は闇に魅入られそうな言動はあれからしていたかい?」
「いいえ…いたっていつも通りでした。とても何かに執着しているようなそぶりは見ておりません…。」
「そうなんだね。私も影に確認はしたが、確かに公爵は怪しい点は見つからなかったようだ。
王国騎士団の団長2名もいたっていつも通りで怪しい点は見つかっていない。
…しかし…教会はかなり怪しい…アイ嬢からも報告は受けたが、言動が直情的で、女神の意向以外は悪という思考で物事を判断している部分が多く見受けられた。…まさかとは思いたいが、教会側が闇魔力に魅了されている可能性は少なからずある…と判断している。
先日のチェオリア湖での公爵からの報告も、その日のうちに確認していたのは大神官と団長2名だった。
今後も4名は監視対象とはなるが、特に大神官は要警戒で影に見張らせている。」
「――そうなのですか…アイは大丈夫でしょうか…」
「聖魔力の強い者は闇をはねのける力があるからね。余程精神的に落ち込んだりしない限りは問題ないだろう。大神官の事は警戒するようにすでに伝えてあるよ。大神官は聖魔力の使い手にも拘わらず、万が一闇魔力に魅入られたのだとしたら…それはとんでもない拗れた愛情を抱えていることになる…何をするかわからない…」
大神官の拗れた愛がどんなものなのか想像もつかないが、聖魔力を持っていても抗えない程の魔神との親和性があったのだとしたら、それはとんでもなく危ない感情だろう。
セシリアは想像しただけで背筋が凍るような思いだ。
「…そうですか…。
私はその後魔神に暗闇の中で放置されたのですが、闇の中で1人彷徨い精神的に辛くなってしまったんです。その時にネックレスに無意識に手をあてて助けを願った瞬間、女神様が現れました。」
「…魔法石に込められた聖魔力に反応したっていうことかな?」
セシリアがネックレスに手をあてて話すと、ハリアスも思い当たったかのように言う。
「はい、女神様もそうおっしゃっていました。…その…聖魔力に…ハリーの…愛も込められていたと…」
「えっ!!」
突然のセシリアの暴露にハリアスは驚愕し、頬はうっすら朱を帯び耳は真っ赤だ。
(――女神様の言っていたことは本当だったの?!)
ハリアスの慌てふためく顔を見て、自身まで顔を真っ赤に染め上げ2人共言葉を失ってしまう。
――どのくらい時間がたったのだろう。口火を切ったのはハリアスだった。
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