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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第10章 復活の悪役令嬢
387/554

386.β世界線の痕跡

 模擬戦の授業が終わると、キャサリンは同級生たちに取り囲まれた。

 一瞬、エドワードがしたような非難を浴びるのではないかと身構えたが、違っていた。


 みんな口々に質問してくる。

「キャサリン様ー、あの魔法は何なんですか?」

「あんな魔力は誰からもらったんですか?」

「どうして攻撃の結果が、お花なんですか?」

「キャサリン様ー、……」

「キャサリン様ー、……」


「ちょ、ちょっと待ってください。

 今日の魔法のことは、私もよく分かっていないんです」

 キャサリンもどう答えてよいか分からず、困ってしまう。

 質問の数も多すぎる。

 でも、みんなキャサリンの答えが欲しくて一生懸命だ。


「あ、あのですね……さっきの魔法は、えーと……」

 キャサリンが困っていると、助手のキーラさんがやって来た。

「キャサリン様。先生がお呼びです。

 申し訳ありませんが、職員控室まで来ていただけませんか?」


「はい、分かりました」

 キャサリンは、助かったとばかりにキーラについて職員控室に向かった。

 キーラさんも何か聞きたそうだったが、わきまえているのか黙って案内だけしてくれた。



 職員控室に入ると、今度は教師たちに囲まれてしまった。

「キャサリン様、さっきの授業で見たこともない魔法を披露したんですって?」

「そんなことが出来るすごい魔力は、誰からもらったんですか?」

「どうして攻撃の結果が、お花なんですか?」

「キャサリン様ー、……」

「キャサリン様ー、……」


 模擬戦の指導教官が、みんなを止める。

「まあまあ、みなさん落ち着いてください。

 キャサリン様も困っておられますよ」


 教師を代表して、校長先生がコメントする。

「いや、しかしだね。我々は魔法を教える教師でもあるが、同時に魔法研究者でもあるんだよ。

 身近に未知の魔法の使い手がいることを知ってしまったら、興奮せずにはいられないよ」


 キャサリンは、申し訳なさそうに答える。

「すみません。どうしてあんな魔法が使えたのか、私にもよく分からないんです」


「じゃあ、せめて、その魔法を放ったという魔法石を見せてもらえないだろうか」


「はい、どうぞ」

 魔法石を受け取った校長は、分析器の上に置いて解析魔法をかける。

「こ、こりゃ、すごい。

 ものすごい量の魔力が蓄積されているだけではなく、その魔力量を秘匿するための隠ぺい魔法までかけてある。

 いや、本当にすごい。

 これだけの魔力量にもかかわらず、魔法術式はものすごく緻密だ。

 人間技とは思えない」


「は、はあ」

 校長の饒舌な説明にキャサリンは圧倒される。


「キャサリン様。ファルマイト公国は魔法学で後れを取っているというのが一般的な見識でしたが、これは認識を変えないといけませんな。

 いったい、どなたの魔力なのですか?

 その方は、エルフ? 魔人? よもや人間ヒューマンなどということは有りますまい」


 その言葉を聞いて、キャサリンの頭に浮かんだのは守護天使カルデラだった。

 だが、カルデラがどうして学校に持っていく魔法石におかしな魔法を仕込んだのかと考えると、説明がつかない。

 ただ、異世界トンネルに引きずり込んだり、爆発のチート能力付与など、理由も方法も分からないことをされたのは事実だ。


「うーん。この方の仕業だろうな、という人は思いつくのですが、その方は存在を秘匿されているので」

 キャサリンは、ちょっと誤魔化し気味に答える。


「存在を秘匿? 神のような存在なのだろうか?」

 校長は考え込んでしまった。


 ちょうどお昼休みの鐘が鳴ったので、キャサリンは昼食を言い訳にその場を逃れた。



 貴族用食堂で、一人で席に座ってため息をつく。

 ここなら、クラスの大部分を占める平民階級の人たちは入って来れない。

 もちろんナタリーも。


「はあー、夏休み前の楽しかった昼食時間が夢のようですわ。

 まあ、変に責められるよりは一人の方が気楽ですわね」


 食事していると、サナンダがやって来た。

「キャサリン様。お向かい、座ってもよろしいか?」


「はい、どうぞどうぞ」


「ありがとうございます。

 ところで、キャサリン様の魔法石、ナタリアさんに魔力注入をお願いされてましたよね」


「そうなのよ。

 でもあれは、絶対にナタリアさんの魔法じゃないわ。

 いつの間にか、誰かがコッソリ凄い魔法を入れたんだと思いますわ」


「心当たりは、ありますか?」


「さっき校長先生にも聞かれたんですけど、その時は思いつきませんでした。

 でも今、サナンダさんの顔を見て思い出しました」


「何を思い出したのですか?」


「アジサイさんですよ。

 私、夏休み中自分の部屋の机の上に、魔法石を魔力の遮断される箱に入れて置いていたのですが、アジサイさんがやたら興味を持っていました。

 それで、確か中身を見てみたいというので見せた覚えがあります。

 ほんの一瞬の出来事だったので忘れていましたが、アジサイさんならあの短い時間で魔力を注入するのも出来るかもしれません」


「やはり、そうでしたか」


「えっ? サナンダさんも、あの魔法はアジサイさんの仕業だと思ったのですか?」


「はい。アジサイさんは、自分のことを幻術師イリュージョニストだとおっしゃっていました。

 あの魔法障壁を破る強力な貫徹力を有しながら、人に当たると花を咲かせるという奇妙な作用。

 まさに幻術イリュージョンじゃないですか」


「でも、アジサイさんの仕業と決まったわけではありませんわよ」


「いえ。きっとそうです。

 アジサイさんが残してくれた、夏休み前の世界線の痕跡だと思いませんか?」

 サナンダは、確信を持っているようだ。

 キャサリンも、そう言われると何だかそんな気がしてきた。


次回更新は、1月19日(木)の予定です。

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