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遥か彼方の放浪者 ~The one chosen   作者: Fuyu
第三章
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謎多き少女

学園の校舎を出た校舎通り


「んで。なんで私まで手伝っているのよ」


数冊本を持たされパープルレッドの寮通りを歩きながら


サーナがぼやく。


「どうせこの後時間あるんでしょ?」


先をあるくチグサが振り向き肩をすくめる。


「まぁ確かにそうだけど…」


サーナは小走りでチグサに追いつく。


「それにしても助けるだけならまだわかるけど、どうして


本を寮に持っていくなんていったのよ。本もあんた名義で


借りることにしていたみたいだし。なにか目的でもあるの?」


リノアスに聞こえないような声でサーナがチグサに問いかける。


「あなたこの本な内容わかる?」


そう言われ目の前にある一番上の本を見てみるサーナ。


「表紙だけでなんて書いてあるかわからないわ…チグサはわかるの?」


「なんとなくね。読めと言われれば多分ほとんど読めないと思う」


「その。私より常に一歩行くスタイルやめてくれない」


むーっと上目遣いで不機嫌になるサーナ。


「そんなことないわよ」


「そうかなぁ。まぁいいけどそれでそれとリノアスを


手伝うのどう関係があるの?」


「気にならないの?ほとんどの人間が読めない書物をあの子は


何となくって理由で手にして読もうとしているのよ?


それにいくら学園から名前登録されてないからといって


実技試験の時熟睡して失格になった彼女が合格するなんて


よほど魔法適性テストや筆記で高得点をとらない限り無理な話でしょ」


「なるほど。言われてみればそうね。名前登録されてないからそれほど


意識してなかったけど。それでチグサは興味を持ったと」


「そうよ。もしかしたら今後の勉強になるかもしれないし


それに6番の人ならまだ実力がわかるからいいけど


彼女がどんな実力を持っているかどのような魔法を使うかね


わからないもの」


チグサは興味深そうに本の重みでよたよたしながらも進んでいく


リノアスを眺めた。


少し進んでいくと海が見え崖沿いに建物が見える。


「パープルレッドの寮って割と学園から離れてたんだ


私たちの寮と正反対の場所だから今までわからなかったけど」


「そうね。学園通りから少し外れた小道だから行く機会なんて


確かにないものね」


ミドルオレンジとトップグリーンは女子と男子で別れており


どれも本校舎からかなり近い場所にある。


校舎から離れたパープルレッドの寮を知らないのも無理はない。


「……ここ」


リノアスはパープルレッドの寮に立ち止まった。


それは彼女たちの普段利用している寮とは比べ物にならない


年季の入った家


「なんかあっちこっちさび付いててなんて言うか


私たちの寮とは偉い違いね」


「そ、そんなことないわ。海沿いで景色はいいし。


錆の部分も年季が感じられる味がある寮ね」


「チグサ…言葉選んでない」


サーナの指摘にチグサは冷や汗をかいた。


リノアスは特に気にしない様子で重苦しいドアの前に立つと


手に持っていた本を置こうとした。


「あ、ダメよ。むやみに地面に置いては」


そう言うとチグサはサーナに本を持たせると


急いでドアを開けた。


「重い扉。大変じゃないかしら…」


チグサは赤くなった手を振り辺りを見回した。


「でも、割と綺麗なのね」


お世辞にもいいとは言えないが人がすむには問題ない


「ちょっとチグサ。人に持たせてノンキしないでよ」


「えっええ。悪いわね」


見慣れない環境に困惑するチグサだが首を振り後から入ってきた


サーナから荷物を受け取った。


「へーそれにしてもここであいつは生活してるのか」


余裕ができたサーナは改めてチグサと同じように部屋を


眺めた。


「随分とまぁ。私たちの寮とは…凄い差ね」


トップグリーンの寮は作りからして城のようなデザイン


大きくシャンデリアがつるされ、日の光を多く取り込めるような大きな窓。


大理石で作られた床。需要に合わせた多くの部屋。


どれもパープルレッドの寮に(勝てる要素は)ないです。


「二階に部屋がある」


ギシギシと木造の階段をきしませながらリノアスがドンドン先を行く


「なんで右と左の階段に差が出ているの?」


「……男子と女子で別れてる」


「なるほど」


妙な納得をするサーナ。


「でもまぁ、あいつにピッタリかもね」


何か反論しようと思ったチグサだができなかった。


二階に上がると最近整備されたのか真新しい床が


張られ、日の光で反射するほど。


壁もモダンな壁紙が張りなおされている。


「なんかここだけ別空間ね。ここだけならミドルオレンジの寮と


変わらないくらいわね」


二階の廊下を歩きながらチグサは感想を漏らす。


するとリノアスが途中で足を止め壁に飾ってある絵を眺めた。


「この絵がどうしたの?」


サーナが訪ねリノアスが眺めている絵を見た。


描かれているのは中心には味気ない机に人の手が天を


差すように置いてありその人差し指から火が灯っている。


その上には赤い鷹ような翼が生えている黒紫の狼のような魔物。


右側は殺風景に対して左側は大きな建物と檻みたいなものが描かれている。


赤と黒をうまく使い思わず見とれてしましそうな絵


「これってクラスごとに記されている紋章の生き物よね。


私たちの所にも似たような絵が飾ってあるのよ。ね、チグサ」


「ええ。私たちの所は鋭い牙が特徴的な生き物ね。


この絵。気に入ってるの?」


チグサの問いにリノアスが小さく頷いた。


「……いつも見てる」


「確かに影の使い方がうまくて立体感あって見ていて飽きないわね」


「……悲しさがある」


「っえ?悲しさ。わたしは何も感じないけど伝わる物があるの?」


「何となくそう感じるだけ」


そう言うとリノアスはもう一度絵を吟味する。


「あのさー悪いんだけど…」


サーナの手が震えはじめた。


「そろそろこの本降ろしたいから早くしてくれる?」


先ほど追加で乗せられたのが今さら来たのか


サーナはつらそうな顔をする。


「……わかった」


リノアスは若干名残惜しそうな顔を浮かべるも首を縦に振り


立ち並ぶ部屋のドアを進んでいく。


そして一番端の部屋の前で足を止めた。


「あっここの部屋かしら」


ドアも綺麗に立て替えられ1という文字が浮かび上がる


「さて今度は誰がドアを開ける?もちろんわたしよね」


先ほどの仕返しが目的かサーナはチグサに本を持たそうとした。


「仕方ないわね」


チグサは諦めサーナから本を受け取ろうとした時


「……今度は大丈夫」


リノアスはそう言うと足でドアを2回軽く当てた。


するとドアの鍵がひとりでに開きゆっくり開き始める。


「へーここのドアも自動で開く魔法がかけられているのね」


サーナは感心した様子で開くドアを眺めた。


「なんだーちょっと古臭いだけでパープルレッドの寮って


別にそこまで悪く……」


しかしドアの内面を見てサーナとチグサは絶句する。


そのドアの内側には大きな円と見たことがない赤い文字が


円を回るように這いつくばり


そして中には丸と線を結ぶ十字マークが数個刻まれている。


「ちょっと何よ。これ」


明らかに不気味な魔法陣にサーナは驚きを隠せないサーナは


思わずリノアスに訪ねた。


「……古い呪文。昔は鍵の技術が発達してなかったから


こういった魔法が主流だった」


「それは知っているわ」


チグサが声をかける。


「魔法の歴史の本に書いてあるのをみたことがある


でもその魔法陣はみたことがないわ」


珍しそうにチグサは円をなぞる。


「ていうか、これ何で描いたのよ。ちょいちょい変なシミになってるけど」


サーナが指摘するように文字と円の色と中の十字が若干にじんでいる。


「……わたしの血」


その言葉にサーナとチグサはぎょっとした。

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