試験は終わらない
試合が終了。ミツザワの実技試験は終わりを迎えた。
「見事だ。これからも頑張ってくれたまえ」
「ありがとうございます」
ミツザワは膝をつく教官に手を差し出した。
おお!と会場は盛り上がった。
「ミツザワ君今後楽しみね。彼ならすぐトップクラスの
仲間になれそうね」
「ふっそうかもな。サーナはどう思う」
不意に話を振られたサーナがしどろもどろになる。
「えっとそうかも。でももっとすごい奴いるわよ」
「すごい奴?彼の他にもいるのか」
アッと咄嗟に出た言葉を隠すように口元をおさえた。
「もしかして知り合いがいるの?」
友人の女性は目を細めて疑いの眼差しを向けながら
わき腹をつつく。
「えーと、その…」
「なんだ。知り合いが受けに来てるのか?」
男が訪ねる。
二人に詰め寄られ気まずそうな顔をするサーナは
誤魔化すようにステージに目を向けた。
ミツザワがステージを降りていくところだ。
「あっほら次の試合が始まるわよ。あー楽しみ」
両隣でため息をつく声が聞こえたが気にしないサーナ
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舞台を降りると同じ受験生の皆が集まる。
「もうミッツ!もう少し粘ってよ」
開始早々ユオに理不尽に怒られるミツザワ
「いや。これでも結構粘ったんだが」
ミツザワは頭をかきながら苦笑いをした。
「そうだよ。あんまり無理な事いっちゃだめだよ」
「でもさ、まだ二人とも来ていないんだよ」
「確かにそうだけど。ミツザワさんも試験頑張っていたんだから」
実は試験をできるだけ長引かせるためできる限り
時間を延ばすようにしようと四人で決めていたのだ。
だが実際教官の高い技能の魔法や魔術、武術の前でそんな余裕もなく
それほど時間は稼げてはいないが
「ったく。あいつら俺らに余計な手間をかかせやがって」
「いや。リックが一番早く終わったよね」
「うっあれは俺の担当した教官が結構強かったからさ」
因みにリクトリは割とすぐ試合が終わった。
「それにしてもミツザワで最後だろ。どうするつもり
なんだろうかあの教頭は」
「なんか、すごい上機嫌だったな」
「確かにこのままこなければ試験終了だろうけど」
リクトリの言葉にアムは考える。
「もしかして教頭先生があの二人に何かした…とか?」
アムの言葉に皆言わなかったが思うことは同じだったことを
察する。ありうると
教頭の方に目を向けるとステージをよく見渡せる観客席で
何人かの教官と話あっているのが見える
「このまま放浪人ともう一人の受験生は欠席で不合格になりそうだな」
「んもう!ホーロは何してるのよ」
「来たとしても実技試験だけの評価だから不合格になる
可能性はでかいな…こうなると実技試験で試験官の印象に
残るような大きなことをしないと」
「でも試験の責任者って教頭でしょ。うわやばいよ」
「とにかく来ないことにはどうしようもない」
ミツザワは額に汗を流しながら教頭の方を見ることしかできなかった。
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「ミツザワ・フェヌア。やはり素晴らしいですね。文句なしですよ」
「ええ。実力ともに噂通りです。今後も期待できるでしょう」
ロドベル教頭の隣に座っていた教官が大いにミツザワを
絶賛していた。
「ふーむん。さしもわたしもん同じ意見ん。他の受験生もん
少しレベルが低いですが将来性がんあるんので
わが校に入れても問題ないんですねん」
教頭はうんうんと首を縦に振り満足そうな笑みを浮かべた。
「えーと次は、1番の子ですね。早速アナウンスして見ましょうか」
その言葉に教頭は手を上げ動きを制止させた。
「必要ありません。これで試験は終了です」
その言葉に後ろにいたバイツが声をかけた。
「よろしいのですか。まだ時間もあるようですし待ってみたら」
「ノンノンん。その必要ありませんん。筆記試験や適性試験会場に
来ないん時点で受ける資格はありませんん。不真面目な生徒はいらないん
どうせ逃げたんでしょうん」
「しかし、一応実技試験は評価の中でもかなり重点置いている所が
あります。もしかしてということもあるので」
「いや!ダメン。そんな無駄なことはしてはいけませんん」
すると教頭は立ち上がると手元にある音声拡散機を口元に
取り付けた。
「えーテステス。ご来場の生徒諸君ん。今日はわざわざ
ご苦労様ん。これにて中途試験の実技試験は終わりとさせて
いただきますん」
そう宣言した。
回りの生徒はざわついた。
「おいおい。もう終わりかよ」
「6番と1番の試合はどうしたんだ?」
と消化不良に不満の声が広がる。
「うそ!最低でもまだ一人必ず受けるはずよ」
もちろんサーナも納得した様子はなく声が漏れる
「やっぱり知り合いいるのね」
「えっあ。しまった…」
口をおさえるも完全にばれてしまった。
「隠す必要ないでしょ。別に」
女性はため息をつく。
「誰なの有名な子?」
「まぁ有名かな」
「へー楽しみね」
ある意味っと小さな声を漏らしながらサーナの目が泳ぐ。
「ほう。お前が注目する奴が受けにきてるとは」
「でもこれで試験が終わりということは来てないみたいね。
どうしたのかしら」
サーナは受験生が集まっているステージ近くの座席に目を向けた。
そこには自分の知っている男の姿はない
「あいつどうしたのよ。絶対試験に受かって見せるって言ってたのに」
サーナが肩を落とす。
「来ていないのか…」
男性は残念そうな顔を浮かべ立ち上がった。
「なら俺はもう戻るぞ」
そう言い会場の出口の方に向かっていく。
それに続くとばかりに他の生徒も立ち上がる。
完全に終わりのムード教官も立ち上がりその場を去ろうと
している。その様子にリクトリが焦る。
「おいどうする。無理にでも抗議するか」
「だが、無理に引き延ばしても来なければ手の打ちようがない」
ミツザワはどうすればいいか模索しながらも答えが出ないでいる。
「どうしよう。ユオちゃん」
「どうしようってたってどうしようもないよ。
とりあえずダメもとで講義してみる」
そう言いユオは教官の席に向かっていこうとした時。
「まて!」
どすの効いた声が会場内に響く。
皆の動きが止まった。
声の主はドスドスと客席を通り教官が集まっている所に向かった。
その顔に教官達の知っている顔。今回の試験責任者
「クロンガさん!」一人の教師が声を上げる。
「病気は大丈夫なんですか」
クロンガは頷く。
「ああ。もう大丈夫だ。心配かけたな」
そう言うと教頭の前に来た。
「急な体調不良のせいでご迷惑かけて申し訳ない。
後は自分が仕事を引き継ぎます」
そう言うとクロンガは頭を下げた。
「げ、元気になってよかったですん。クロンガ先生
ですが試験はもう終わりですん。その必要はないん」
教頭はまさか今日戻ってくるなんてと驚愕するも
試験はもう終わり。今さらどうしようもないと
余裕の顔に変わる
「いえ。まだおわりじゃありません」
クロンガは首を横に振ると教頭が持っていた音声拡散機を使わず大きな声を張り上げた。
「実技試験はまだ終わっていない!これから1番と6番の実技試験を
始める!見る者は直ちに座れ」
声に驚いた生徒がその場で少し硬直するも皆もどり席に座り始めた。
「ちょちょちょ何をいうてますのん。いきなり」
「教頭もともと自分が今回の試験責任者です。ここはわたしに
任せてください」
クロンガの重苦しい威圧感が苦手な教頭。おまわず反論の言葉を
失っていく。
「というてもん肝心の受験生がきていないん。それじゃどうしようもないん」
「なにをいっているんです。彼らはちゃんと会場にいますよ
なにせわたしと共にきたのですから」
そう言うとクロンガはステージの入り口を指さした。
教頭が慌てて目を向ける。すると入り口のドアが開く
そこには放浪人ともう一人の受験生リノアスの姿があった。




