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遥か彼方の放浪者 ~The one chosen   作者: Fuyu
第一章
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試験当日の噂

早朝。


放浪人は目が覚めると


ベッドから起き上がり部屋に設置されている


保冷箱から飲み物と食べ物を取り出し口に流し込んだ。


「今何時だ……」


思わずハッとする今腕につけているバンドはログじゃないことに


放浪人はため息をつき頭を叩いた。


ログをつけるようになってからの癖がついている


それほど普段からログを頼りにしているということだ。


仕方なく自分の腕についているバンドをおぼつかない


手つきで操作し始めた。


運がいいことに学園用のバンドは最低限の機能しか


ついておらず簡単でアホな放浪人でも使うことはできる。


試験会場はこの街の海沿いにある学園が保有する建物、


入れる時間は9時で試験開始が9時30分と記載されている。


そして現在の時刻7時20分


学園まで徒歩1時間30分ぐらいなので


今から歩いて行けば余裕で到着できる時間だ。


そたくさと着替え、剣を背に背負い、最後に手袋をつけた。


軽く体を動かし調子を見る。


未だに体のなまりが取れていないが今はそれが日常に


なっているので特に気にすることではない。


放浪人は机を見た。そこには多くの本が重なり紙が落っこちている。


短い間詰め込んで勉強した結果だ。


結局最高得点は30のままで止まってしまったが…


受かるかどうか微妙なラインでもある。


だが放浪人に不安の表情はない。


ここまでくれば後は全力でやるだけだ。


目を瞑り息を吸いこみ溜め深く吐く。


そして少し間を開け目を開く。


いくか!強く放浪人は部屋を後にした。


---


丁度その時間受験所の食堂では4人が集まり食事をしていた。


健康に良さそうな朝食を前にしてユオが大きな欠伸をする。


「もう。もっとシャキッとしないとだめでしょ」


「いやー朝はどうしても苦手だから許してよ。おねーちゃん」


アムに注意されダルそうに返すユオその様子に


「今日が試験だというのに余裕だなユオの奴」


リクトリが呆れ顔でいうとユオはピースサインを送る。


「それは、もう昨日は勉強したし余裕だね」


「いや、みんなしてるっつーの」


リクトリはツッコミを入れた。


「ははは。でも確かにユオちゃんが真面目に勉強したの


久しぶりだよね」


「いや。久しぶりは余計でしょ。最低限してるって」


「いつ頃」


「結構前だね」


「それ久しぶりだと思うけど…でもよかったー。


ユオちゃん学園に来るのあまり乗り気じゃなかったから


こんなに熱心に勉強してくれるなんて」


「まーね。ここにいる人みんな面白いしアムと一緒に


通うのも悪くないかなって」


頭に手をやり照れくさそうに笑うユオに


ミツザワとリカルドは笑った。


「そう嬉しい事言われちゃー頑張るしかねーよなミツザワ」


「俺は落ちる気はないがな」


するとアムが空いている席を見た。


「放浪人さん、今日は大丈夫でしょうか…」


心配そうな顔を浮かべるアムにユオがわき腹を


小突いた。


「なに気になるのー」


「うん。昨日もあまり浮かない顔してたから


もしかして息詰まってるのかなって」


「たはー面白くない素直な反応だ」


「面白くない?どういうこと」


「なんでもない独り言」


何故か残念そうにユオは肩をすくめた。


「確かにいくら何でもこの数日で点数を上げるのは


正直キツイからな。俺が直々にまとめたノートと


テストがどこまで力になっているか」


「ログのサポート込みでねー」


「…そうだな。俺もまだまだだな」


実はほとんど何を書いてあるのかわからなかった


らしくログの解説で勉強をやっていたと聞きミツザワは肩を落とす。


その横でリクトリが顎に手をやり考え込む


「もしかしたらあいつ試験から逃げたりしてなー」


「え」っとアムの表情は固まった。


「試験でただ一人落ちるから情けなくなって夜逃げ!


・・・なーんちゃって。あはは」


冗談のつもりだろうかリクトリ以外誰も笑っていない。


「くだらない冗談はやめろ」


「くだらないってなんだよー大体最初あいつを警戒して


特別枠だーとか言ったのお前だろうが」


「ぐっしょうがないだろ。あの時あいつの隣に…」


するとアムは席から立ち上がった。


「あの。わたし呼んできます。まだ時間ありますし


教えてあげることできることができるかも」


「辞めといたらもしかしたらまだ寝てるかもしれないし」


「そうかもしれないけど…一応見てくる」


そう言うとアムはそのまま食堂を出ていくと


「あっアムちゃん俺も行くよ」


責任を感じたのかリクトリも急いでアムの後を追いかけた。


「相変わらず気になったらとことんやるねー」


「お前はいかないのか」


ミツザワに訪ねられるとユオは手を横に振った。


「こういう時はアムに任せるのが一番だからねー


わたしは余計なことはしなーい。


それにアムの言うことならホーロも聞くんじゃない」


「確かにあんな純粋に言われたら断り辛い」


ユオの言葉にうんうんとミツザワが頷く。


「それよりさー特別枠ってなに」


ユオは興味深そうに前のめりになる。


ミツザワは少し躊躇するも興味深そうに見る


ユオの目を見て誤魔化せないと察し諦め口を開く。


「実は噂に聞いたことなんだが、受験生の中に


既に学園に入れる人間がもうすでに決まっていて


試験結果が悪くても入れるそんな枠があるっていう


噂を聞いたことがあるんだ」


「へー楽じゃん。それでホーロがその特別枠だっていうの?」


「あくまで噂だ。実際本人に聞いたらそんなことないって


否定されたしな」


「まぁー実際そうだったらあんな必死に勉強してないしね」


「そうだな。模試の筆記が酷かった時は流石に疑ったが


あの後俺に勉強を教えてくれって頼んできたからな


疑いは一気に吹っ飛んだよ」


ハハハと思い出し笑いをするミツザワ


しかしユオは何か引っかかるのか顎に手をやり考えこむ


「もしかしたら特別枠は、ホーロじゃなくてもう一人に


謎の受験生かも」


その言葉にミツザワもうーんと考えた。


「確かに模試を一回受けていないことを考えると


十分可能性あるが」


「でしょ?怪しいよね。ってかそれで正解って感じ?」


ユオが指をパッチンとはじくしかしミツザワの顔は


納得していない。


「あくまで噂だしな。それで決めつけるのはよくない」


「あー確かにそうだね」


推理に浸っていたユオは反省気味に頭をかいた。


するとミツザワは何かを思い出したようにハッとする。


「そういえば噂は、もう一つあったな」


「えっ!マジなになに」と再び身を乗り出すユオ。


「実はさっき言っていた合格決定の反対もあるって話だ」


「試験が合格基準に達しても必ず不合格になるってこと?」


ユオは試験前になんてこというんだよといいたげな顔をする。


「あーそれに近いかもな」


「近いってどういうこと」


ユオが首をかしげるとミツザワは顎に手をやり深く考え


思い出そうとする。


「稀に学園の試験の当日に試験を受けずにどこかにいってしまうって話だ」


「なにそれ?逃げたんじゃないの」


「確かにそうかもしれないが。中には合格できる人間まで


いたそうだ」


「ふーん。確かにおかしいね。それ」


「っと行っても本当かどうかわからないけどな所詮噂だ」


ミツザワはちょうどそこで話を切り上げようとしたとき


食堂のドアが静かに開いた。


入ってきたのはため息をついたアムと眉間にしわを寄せている


リクトリだけで呼びに行った放浪人はいなかった。


「あれ?ホーロは、もしかして寝てた?それとも断られた?」


ユオが口走るとアムがトボトボと肩を落とし近づいてきた。


「放浪人さん部屋にいなかったの」


アムの言葉にミツザワは首をかしげる。


「部屋にいない?部屋を見たのか」


ああとリクトリが応えた。


「部屋のドアを叩いても反応がなくて試しにドアノブを回したら


開いてよ。悪いと思って部屋に入ったらもぬけの殻


ったくどこにいったんだか」


リクトリはさっぱりと手を横開いた。


「試験までまだ時間はあるんだ。もしかしたら勉強の気晴らしに


ランニングに行ってるのかもな」


「ったくアムちゃんがせっかく誘おうとしてくれるのにな」


ユオは腕を組み納得できない様子。


「どうしたのユオちゃん」


「いや、なーんか嫌な予感するんだよね」


まさかユオの予感が当たるとはこの時だれも


そう思わなかった。

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