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手順34 四日で犯人を落としましょう

「つづら~ごめん、今日用事ができて一緒に帰れなくなっちゃった」

 国語準備室を後にしたその足でボクはつづらの教室へ行き、つづらに今日は一緒に帰れない事を伝える。


「ありゃりゃ、そうなの?」

「うん、写真部の見学させてもらう事になって」

 ボクが話せば、既に情報を共有している先輩達にはこれだけで作戦が順調に進んでいる事が伝わる。


「そうなんだ、尚ちゃんは最近すっかり写真にはまっちゃったね」

「いざ色々撮りだしたら楽しくて」

「そうなんだ☆ 尚ちゃんはどんな写真撮るの?」

 つづらとボクが話していると、まるで今初めて知ったかのように寺園先輩が尋ねてくる。


「ボク最近インスタ始めたんですけど、こんなのとか撮ってます」

 ボクはスマホを操作してインスタのアーカイブ画面を出して寺園先輩に見せる。


「わ~☆ きれいな写真ばっかりだね♪」

 実際は作戦を決めてその場でインスタのアカウントを取得していくつか投稿用の写真を撮っていた時もその場にいたのに、全く知らないという顔で寺園先輩は言う。


 岡崎先輩はちょっと呆れたような顔をしているけど、この前のつづらのやきもちっぷりを考えれば、またつづら抜きでボクと寺園先輩が会っていたのは隠した方がいい。


 きっと文句は言ってこなくても、事細かになぜ、いつ、どこで会っていたのか、なにをしていたのかくらいは聞いてくるだろう。

 あんまりアレコレ聞かれると、作戦会議の事をうまくごまかしきれるかわからない。


「あ、この桜、うちの庭の桜なんだ」

 一方、清水先輩は平然と申告してきた。

 ……寺園先輩以外ならつづらの興味も薄いだろうから別にいいけど。


「え、尚ちゃんいつの間に棗先輩の家に遊びに行ってたの?」

「尚ちゃんがこの前、花の写真とか撮っていたから、うちの桜もそろそろ見頃だし招待したんだ」

 意外そうにするつづらに、清水先輩が笑顔で答える。

 きっとこの流れでつづらを家に誘いたいのだろう。


「ちなみに、ちゃんと帰りはオレが家まで尚ちゃんを送り届けたから安心してくれていいよ」

 しかし、それを妨害するように入谷先輩が笑顔で話に入ってくる。

 確かに昨日は入谷先輩と方向が一緒だからと家の前まで一緒にいたけれど、正確にはボクを家まで送ってくれたのは清水先輩の家のドライバーのお爺さんだ。


「え、直人くんも一緒だったの?」

「まあオレも写真部だからね~、手入れの行き届いた本格的な日本庭園が撮影できるってなったら行くよね~」

「へ~、尚ちゃん誰とでもすぐ仲良くなるね」

 寺園先輩の時とは打って変わってつづらは単純にボクの交友関係の広がりに感心しているようだった。


「皆いい人達だからだよ」

「うふふ、そうだね」

 ボクが言えば、つづらがふんわりと笑う。

 可愛い。




 寺園先輩:予定通り、準備が整うのは今週の木曜日になると思うから、それまでは襲われちゃダメだよ!

 尚:わかってますよ。むしろ、問題はそれまでに手を出してくれるかです……

 寺園先輩:今日含めて四日は短いよねえ(・∀・;) 日程はもう決めちゃったし、もし事を公にするならタイミング的にも木曜がベストだし……

 尚:はい、一日たりとも無駄に出来ないです


 昼休みが終わった後、放課後までの時間にボクは寺園先輩とラインの個別メッセージで軽く打ち合わせをする。

 作戦的に、ボクが飯田橋先生に襲われるベストなタイミングは今週の木曜日で、それまでに飯田橋先生がボクに手を出すように仕向けなくてはならない。


 寺園先輩:でも、油断は禁物だよ! 念の為、写真部の部室近いし、料理研究部の部室で待機してるけど、尚ちゃんは自分の可愛さをちゃんと自覚しないと痛い目にあうからね?( º言º)


 万が一の事も考えて、写真部の部室と位置的に近い料理研究部の部室で寺園先輩が待機していてくれる事になっている。


 階段からまっすぐ続く廊下を歩いて突き当たりある写真部の部室に対して、料理研究部の部室はその廊下を通って階段に向かう途中の位置にある。


 つまり、ボクが写真部から飛び出して廊下に向かって助けを求めて叫べば、すぐに寺園先輩にが出てきて助けてくれるという訳だ。




 放課後、ボクは写真部の部室に向かう前にトイレ前の洗面所で化粧直しをする。

 肌の浮いた油をあぶらとり紙でとって、フェイスパウダーを上からはたいた後、ピンク色のクリームチークとリップをぬっていく。


 チークはナチュラルな色の物を頬の真ん中辺りに薄く丸くのせていき、リップはシアー感のあって自然な血色感が出る、うるっとした仕上がりになる物を選ぶ。

 ついでに瞳を潤んだ感じにするために目薬もさしておく。


 ……よし。

 頬が少し赤くなって瞳とくちびるがうるっとした感じにするだけでなんだかエロい感じになる。


 そして、パーカーのファスナーは今日の休み時間、国語準備室を訪ねた時のようにギリギリインナーが見えなくて下に何も着てないように見える辺りまで下げておく。

 パーカーの袖を手の甲までおろして指先だけ見せるようにして、準備完了だ。


「失礼しまーす、飯田橋先生いますか?」

「目の前に本人がいるだろ」

 国語準備室のドアをノックしてからドアを開ければ、すぐに飯田橋先生と目が合ったので、そのまま本人の前によって行って上目遣いで言えば、飯田橋先生が呆れたように笑った。


「ふふっ、もう行けそうですか?」

「おう、じゃあ行くか」

「はーい」

 飯田橋先生が席から立ち上がって歩き出すので、ボクもそれについていく。


「楽しみだな~」

 写真部の部室に向かう途中、ボクははしゃいだように言う。


「なにがそんなに楽しみなんだ?」

「だって、あの写真の作者がわかるかもしれないんですよ? あの人が撮った他の写真も見られるかもしれませんしね」

 不思議そうに尋ねてくる飯田橋先生に笑顔で答えれば、飯田橋先生の目が驚いたように見開かれる。


「……そうか、随分と、その……好きなんだな?」

「はい、すっごく好きですっ」

 照れたように言う飯田橋先生に、ボクは笑顔で頷く。


 ここまでは筋書き通りだ。

 ボクの口元も勝手にゆるむ。

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