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「ドラゴン族の長老様がずっとご機嫌ナナメなんです☆」


 アシオンの召喚から帰還してしばらくしたある日、シアンは巣箱に入ってくるなり行哉を藁山から転がし落とすという狼藉を働いた。


「来るなり何なんだよ!」


 立ち直った行哉が見たのは、自分に替わって藁山の上でくつろぐシアンの姿だ。行哉の体温で暖まった藁山で、ひとり、ぬくぬくとしている。


「あ、トリさん、目を覚ましましたか☆」

「ずっと起きてたわ! つーか、落とす前に確認しろよ!」

「わかりました☆」

「やり直しにいかなくていいから用事は何だ」


 藁山からシアンが浮き上がったところを狙って場所を奪還する。それから、ちょっとだけ詰めてシアンの場所を空けてやる。


「ですから、ユナム様がずっとご機嫌ナナメなので、カルガカ様がトリさんをお呼びしろとおっしゃったのでお迎えに来ました☆」

「長老機嫌が悪いからって、なんで俺が呼ばれなきゃならねえんだよ」

「わかりません☆」


 シアンはカルガカに命じられた通りに呼びに来ただけだから仕方がない。


「なんでドラゴンの長老は機嫌が悪いんだ?」

「ご自分だけあの方の召喚に応じられなかったからだそうです☆」

「あの方……アシオンか?」

「はい☆」


 長老ユナムにもアシオンの『喚び声』は届いていた。しかし小さくもなければ、ふわもこの体毛もないからと、正直なユナムは応じることはできなかった。


「それなのに、アケイディア様が小さくなってお召し物を変えて『喚び声』に応じられたと聞いて、不機嫌になってしまったのです☆」


 外見を変える、反則技とも言える方法で召喚に応じたものが多数いると知って、さらに機嫌は傾いたらしい。


「そんなに行きたかったのかよ……まさか俺に長老の機嫌を直せとか言うんじゃないだろうな」

「わかりません☆」

「……うん、わかった、とにかく連れてってくれ」

「はい☆」


 シアンは行哉を抱えて、長老の座へ飛んだ。いつもどおり、行哉を下ろすと自分はどこかへ飛んでいく。


「おう、来たな」


 長老の座には三長老が揃っていた。ちらりとユナムの様子を窺えば、確かに周囲の空気がピリピリしている。


(この機嫌を直せって言われたら逃げよう)


 行哉は逃走経路を求めて視線を動かす。

 と、カルガカの足下に赤い塊を見つけた。


「あれ、そこにいるのって」

「おう、お前と同じ火炎鳥のヒヨコだ」

「まじか!」


 あんぐりと口を開けた行哉を見て、カルガカは高笑いした。


「つい昨日、生まれたそうだ」


 よく見てやれと言われて、行哉は恐る恐る近寄った。親戚の子どもが生まれて初めて顔合わせするときの気分に近い。


「?」


 火炎鳥のヒナは行哉を見て首を傾げた。行哉より目つきが悪くなく、行哉よりも羽の色が淡い。普通に可愛らしい雛だ。


「そっかー……うまれたんだな……」


 良かったなとカルガカを見上げると、カルガカは、何故か困った顔をしていた。


「おう。それは良かったんだがな」

「まさか機嫌が悪いとか言わないよな?」


 小声で尋ねたのに、ユナムの口の端がぴくっと動いた。行哉は慌ててカルガカの足下に隠れた。


「そうではない。実はな、こっちのヒヨコが飛ばんのだ」

「は?――ああ、そういや羽根がある奴はすぐ飛ぶんだっけ」

「うむ。羽根に異常も無いのだがな。他にも、原因を調べてみたのだが、その、はっきりしないのだが――」

「いろいろと考えてみた結果、もしかしたらおぬしが原因ではないかということになったのじゃ」


 言いにくそうなカルガカに替わって、アケイディアがずはりと言う。行哉の目は点だ。


「俺?」

「断定はできぬ。ただ、おぬしを召喚してから生まれた最初の子が火炎鳥で、翼があるにも関わらず飛べぬと言うのは、おぬしの軌跡をなぞっているように思える」

「なるほどな……」


 ちょっと強引じゃないかと思ったが口には出さなかった。


「そこでおぬしの召喚を一度解いてみようということになったわけじゃ」


 ちょっとの間、行哉はアケイディアが何を言ったのかわからなかった。


「……それってもしかして、俺、人間に戻れるって事?」


 その通りと三長老が頷いたが、突然すぎて行哉の頭と心が追いつかない。多分ここは、大喜びするべきところなのだろう。しかし嬉しいとも寂しいとも、何も感情がわいてこなかった。


「あ、そ……うん、わかった。で、俺はいつ戻るんだ?」

「今、すぐにだ」

「いま!?」


 本当に急だなと、軽口を叩くヒマもなかった。

 うちのヒヨコを守ってくれてありがとな――カルガカが前足を振った。

 短い間だったが世話になった――ユナムは一瞬だけ機嫌を直した。

 いずれまた――アケイディアの別れの言葉だけが少しばかり不吉だった。

 最後に視界の端で、青白い光が別れを惜しむようにくるくる回っていたのを最後に、行哉の視界はブラックアウトした。


***


「バイトまで、あと三十分はあるな」


 大学の定期試験も終わり、必要単位数も確保した今、行哉の毎日はバイトとゲームの二色で分けられている。バイトが休みの日は昼まで寝て、朝食と昼食をまとめて食べながらスマホゲームを始めるのが日課だ。

 バイトの開始時間を確認してからスマホをタップした。いつもどおりゲームにログインしようとしたとき、友人からメッセージが入った。無視してゲームを始めてもよかったが、バイト仲間なので、緊急連絡かもれないとメッセージを開く。


『なあ、今って回線障害とかでてるか? さっきからアプリが全部メンテ中なんだけど――』

お読みくださいましてありがとうございました。

ひとまず、行哉の幻獣ライフはここで終了となりました。

(アシオンのその後とかリトとモモの日常とか、時間が許せば追加する、かもしれませんが……)


最後にシアンから、皆様に伝言があるそうです。

『利用規約はお読みください☆』

……みなさまの素敵なゲームライフをお祈りいたします。

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