第84話 町の本当の姿
ーーーー〈荒野の宿場町〉ーーー
ーーその頃、宿場町は朝を迎え、ユリアは部屋の窓から空を眺めていた。
そして、考えていた……。ゼブラは無事に戻って来るのだろうか……。日登る朝日に、どうか帰って来ますように、と、祈るのである。
ーーー違和感を覚えるのは気のせいか……。町の外には、人の通りはゴーストタウンのように、無だ。いくら早朝でも、日常風景で多少の人々が通っていてもオカしくはない。
しかし、それが無いのは、異常だ……。
ユリア、来ます……。
と、ユリアの頭の中、リサの声が響き、警告。
ーーーーッ!!
次の瞬間、部屋の窓ガラスが破られ、何者かが跳び入り、床に着地。
金髪のオールバック、厳つい青い瞳。彫刻のような窪みのある頬は、歴戦の冒険経験を物語る……。
身長は2メートル弱、岩のように盛り上がる広背、丸太のような腕、強靭な上半身、下半身、着用している灰色マントから盛り上がり、容姿とは裏腹に、年齢は20代前半である。
(………)
ユリアは声が出せない。
彼が、リサの通告していた例の刺客だ……。ユリアに危機感、ドクン、ドクンと心臓が鳴り響く。
ゼブラは町の外、リサの力を使いたい所だが、ユリアの意志とリサの意志が1つに一致していない為、使えないのだ。
「驚かせて申し訳ない。この町は危険だ、すぐに脱出するぞ」
厳つい男はフードを脱ぎ、ユリアに手を差し伸べる。
(………)
ユリアは警戒し、壁際まで下がる。
「すまない、セッカチすぎた。ここは町にして、町ではない、全ては作り出された幻だ。ボーイフレンドの姿は見えないが、まさか、例の依頼に赴いてしまったか?」
厳つい男は終始、謝罪し、声を上げる。
コクッと、ユリアは頷く。
(何てこった……、もしかして、奴らの罠に……)
厳つい男は頭を抱える。
「アナタは一体?……」
ユリアは尋ねる。
「俺はライガ・アルセ、冒険者だ。多分、何らかのモンスターによる幻想魔導術だ。恐らく、迷って弱った所をバクバクと貪る魂胆だろう。宝探しを生業としている我々、冒険者にとっては慣れっこだが、仕掛けを解けば脱出できるから心配するな……」
と、ライガは冷静に説明。
「どうして私達がここにいる事が?」
「ここの幻想空間をどうやったら解除出来るか、町を調べていたらお嬢さん達がこの宿に入るのを見たからだ。それに、モンスターに食われるのを黙って自分だけ助かるのは気持ちよくないからな……」
ライガは腰元から鉄爪の手袋をカチャと装備し、上半身の体躯の筋肉をズシッと盛り上がらせ、構える。
刃形の鉄爪の手袋、キラキラした刃の輝きは、切れ味の鋭さを伺わせ、日々の手入れは欠かせない。
視線の先は部屋の出入り口の扉、扉の外からガタガタと足音が響き、緊迫が張り詰める……。
ーーーーッ!!
その時、部屋の扉は蹴破られ、扉が地面に渇いた音を響かせ、転がる。
「おいでなすったか……」
ライガは睨む。
ーーーー………。
部屋の中にドスドスと押し入ってきたのは武装した町民。町民全員の瞳は獣のように光らせ、鋭い牙をダラリと並ばせ、コキコキと口を動かしている。
鎌、シャベル、クワ、大鋏を持ち、狂気を漂わせている……。赤い熱圧をジリジリと全身から漂わせ、人の形をしたモンスター、悪霊。術者に隷属している為、空間の仕掛けを解かなければ、何度でも出没する。
「さてと……、準備運動といこうか……」
ーーーライガは体勢を低く突っ込み、タックル。
ーーーーッ!!
悪霊の大群はライガのタックルの衝撃に巻き込まれ、吹っ飛ぶ。
壁、地面に叩きつけられ、うずくまる……。
「だあっ!!」
ライガは右の鉄爪の手袋を伸ばし、1体の悪霊の首筋に引っ掛け、後ろの窓に向け、投げ放つ。
ーーーーーッ!!
床に叩きつけられ悪霊が一斉に立ち上がり、ライガに襲いかかる。
ーーーーーッ!!
ライガはバックステップし、避ける。
ーーーーーッ!!
襲いかかる悪霊の子群れはゴチッとぶつかり、ピヨピヨと混乱している。
「オラッアッ!!」
ライガは跳躍し、ピヨピヨと混乱している子群れの悪霊に狙いを定め、前転キックの衝撃を与え、蹴り飛ばした。
ーーーーーッ!!
蹴り飛ばされた1体の悪霊により、部屋の扉が破壊され、部屋の外、宿屋中には残りの悪霊が待機していた……。
食欲により興奮しているのか、眼は赤色にギラギラしている。
「カアッ、食欲旺盛な奴らだっ!!。仕方ない、脱出するぞ、お嬢さんっ!!」
ライガは状況に慣れた様子を浮かべ、ユリアをヨイショ、と抱きかかえる。
「ーーーーーッ!!」
ユリアは思わずビックリし、頬をポッと赤く染まらせる。
「飛ぶぞぉーーーーーッ!!」
ライガはユリアを抱っこし、窓から飛び降りる。
そして、地面に着地、足から全身に衝撃がビリビリと展開し、ライガは苦悶の様子を浮かべる。
ユリアを抱えている事により、足から全身に展開する負担の衝撃が倍増し、さすがの筋肉自慢のライガもキツかった。
「ありがとうございます……」と、ユリアはライガから降り、頭を下げる。
「どういたしまして……。さてと、道を作らなくちゃな……」
ライガは鉄爪の手袋を構え、辺りを眺める。
ーーーーー………。
建物の物陰からゾロゾロと姿を現し、狂気的に息吹きを吐きながらコチラを食欲旺盛に見定めているのは悪霊の大群、数十体以上に隙間なく囲まれ、無傷での突破は不可能だ。
仮に行えば、全身はズタズタに引き裂かれ、逆に血臭で奴等の食欲を刺激するだけだ。
全域は沈黙、悪霊のクチャクチャとした口の音が響き渡り、不快な気分だ。
「雑魚がゾロゾロと……。丁度、暴れたかった所だ、やってやるぜっ!!」
ライガは好戦的な叫びを上げ、詠唱。
ライガの全身は発光、衝撃波が全体に展開し、砂煙が舞い上がる。
悪霊達は光が苦手な為か、苦悶の叫びを響かせ、ライガから発光する光を腕を掲げ、防いでいる……。




