第83話 巨大ムカデ
ーーー後日。
未明。巨大ムカデ討伐の為、皆はアクビを吐き、町の広地に集合していた。
外灯がポツポツと道際に建ち並び、辺りの夜景を薄暗く照らしている……。
外灯にはチラホラと、酔っぱらいが鼻チョウチンを膨らませ、酒瓶を抱え、寝ている。
気楽なモノだ、これから自分達は戦いに行くのに、酒に酔って寝てやがる……。
「さてと、行くとするか……。ていうか、起きろよお前ら……」
ゼブラは仲良し3人組に向き、呆れた様子で告げる。
「グガァーー、グガァーー……」
仲良し3人組は背中を合わせて足をピンッと伸ばし、イビキをかき、寝ている。
全く、コイツらには緊張感というのは無いのか……。心強いのか、心細いというか……。どちらかと言えば、面倒くさい。
「おい、今からユリアが脱ぐぞ……」
と、ボソッとゼブラはビーンの耳元に声をあげる。
「何ッ!!」
次の瞬間、仲良し3人組のスケベ心が反応し、パチッと目を覚まし、飛び起きる。
そして一斉に服を脱ぎ、キョロキョロとヤバイ目を輝かせ、ドコだ、ドコだ……と、眺める。
服を脱いだという事は、ロクでもない事をするつもりだったらしい。
(…………)
ゼブラは仲良し3人組のヤバイさに、何も言えない。
ーーー〈北の街道〉ーーー
北側の出入り口から宿場町を抜け、ゼブラ達は街道を歩いていた。道際には草原が広がり、山から日の出の光が登っている。
草原から覗かせる日の出の光は、幻想的で心が洗われる気持ちになる。
「実に美しい日の出だ。英雄の門出にもってこいの景色だ。来るなら来い、巨大ムカデよ。この私の剣で、成敗してくれようぞ……。そして、成敗した暁には、キャー、町を救ってくれた英雄、ステキィーー、どうか私を許嫁に……。と、町娘達が、ムフフフフ。町の娘達よ、待ってろよぉーーーッ!!」
と、日の出に向かい、パンツ一丁で叫ぶビーン。
依頼をこなすより、依頼を達成した後の見返りを楽しみにするのであり、美女に囲まれている事を妄想している。
依頼達成、英雄、美女、しか頭にない……。
「一人で何やってるんだ?……」
ゼブラは不思議な様子で睨む。
「いつもの事です……」
マルコは慣れた口振りで告げる。
ーーー………。
その時、一帯から白い霧がジワジワと発生し、充満。霧はジワりとした重さが漂う暑さ、嫌な予感が、ゼブラの額から流れ落ちる汗となり、表れる。
ケビン、マルコ、ビーンらは、気配すら感じず、呑気に手をパタパタと扇いでる。
ゼブラは鬼神化使い、察視力は高い……。
ーーーーッ!!
来る……。地鳴りを響かせ、ガタガタと地面を揺れ始める。地面はピキピキと一直線に裂け、血の色の光が不気味に輝き、地面の裂け口から登る。
「早速お出ましか」
ゼブラは剣を抜き、辺りを眺める。
ーーーーッ!!
地面の裂け口から、巨大ムカデがパキュパキュと身体をくねらせ、出現。
艶々しい黒の甲殻、気色の悪い無数の足。麻痺毒性の鋭い牙、ウネウネした触覚。全長は数百メートル、腰を抜かしてしまう程のデカさてある。
獲物を麻痺させ、身動きが取れない状態で補食するを本能性の恐ろしいモンスターである。
「フフフフ……。よく、この我々の前に怖れなく現れたモノだ、その心意気に感謝する……」
と、ビーンは指で顎を撫で、巨大ムカデを不敵な様子で眺める。
「言ってる割には後ろに下がってるじゃねぇかっ!!。前に出て戦えッ!!」
ゼブラは後ろに下がってるビーン、マルコ、ケビンに向かい、文句の声を上げる。
ビーン、マルコ、ケビンの3人はゼブラの後ろに、静かに下がっていた。
何故なら、巨大ムカデの威圧に、本能的にビビってしまったのだ。
「ふん、主役は後で活躍するものだ。決して、ビビっているわけではない……」
格好をつけ、髪をかき揚げるビーン。
しかし、足元はガタガタと震わせ、やっぱり本能的にビビっている……。
「もういいッ!!」
ゼブラは巨大ムカデに向かい、剣を構える。
ーーーー………。
ゼブラが視線を戻した……。しかし、巨大ムカデの姿は消え、地面には大穴が開いていた。
大穴からはキィーンと、風切り音が響き渡り、恐らく大穴に潜ったのだろう。
「フフ、この我々に恐れをなして逃げたのか……」
巨大ムカデが去った後、ビーンはナルシスト気に腕を組む。
ーーーーッ!!
次の瞬間、巨大ムカデは牙を晒し、マルコの足元の地面から飛び出した。
「グアッ!!」
巨大ムカデの下段牙撃により、マルコは空中を舞い、地面に叩きつけられる。
ーーーそして巨大ムカデは地面に潜り込む。
マルコは衣類をビリビリに破られ、巨大ムカデの牙による咬傷が晒され、麻痺毒により、全身はビリビリに麻痺、高熱が行き渡る。
「マルコーーーーーーッ!!」
ビーンは駆け寄り、マルコを抱き抱える。
「すいません……、アニキ……」
マルコは震える声を上げる。
「よし、待ってろよ……」
ビーンはマルコを置き、行動。
ガサガサと何かを取り出す音が響き、何をするのだろうか……。
(アニキ、この僕を助けようと……)
マルコは涙をポロリと流し、今までの経験の思い出を浮かべる。
色々あった……。勢いで故郷を飛び出し、3人でバカやって、失敗して、下らない痴話でモメた事もあり、変な事にも巻き込まれた。
辛くもあり、楽しかった……。
パキパキパキ……。
何だ、熱い……。燃えるような感覚に、マルコは瞳を開いた……。
「待ってろよ、今すぐ香ばしいエサにしてやるからな……」
ビーンは焚き火を起こしていた。
瀕死のマルコを香ばしく燃やし、エサにする……。人間性を疑う行動である……。
彼 (ビーン)曰く、ほんのギャグ。
「アニキーーーーッ!!」
マルコは思わず飛び起き、声を上げる。
ーーーーッ!!
その時、麻痺牙を禍々しく晒した巨大ムカデが地面から飛び出し、ビーンに食らいかかり、空中に高く伸び、全身をウネウネさせる。
ビーンは自業自得のように断末魔の叫びを上げ、連れていかれる……。
「アニキーーッ!!」
マルコは再び声を上げる。
「あ……、ほ……」
ケビンは小さく呟く。
(言わんこっちゃない……)と、ゼブラは剣を構え、巨大ムカデの状況を伺う。
下手に鬼神化に変身し、巨大ムカデを両断は出来ない。何故ならビーンは喰われておらず、巨大ムカデの上の牙、下の牙部分に掴まり、助かっている事を確認した。彼の事はそんなに好きでは無いが、巻き添えはいい気分ではない。それに、鬼神化で人を殺せば、快楽殺人性に目覚める恐れがあるからだ。
「ハハハハッ、そう簡単に喰われてたまるかッ!!。このビーン、悪運だけは強いぜッ!!」
巨大ムカデの牙に捕まり、ビーンは自慢気に笑い上げる。唾液で滴らせた上牙を両手で掴み、下牙は足元をフラつかつかせながら体勢を保つ。
口奥から吹き付ける言葉では表現出来ない悪臭が鼻を突き、吐きそうだ。
しかし、牙に捕まる事すら困難であり、彼はそこそこ実力はあるらしい。
「おおぉーーーーッ!!。さすがアニキッ!!」
パチパチと拍手するマルコ。
「悪運だけは強いな……」
残念な様子で関心するケビン。すると……。
「ガハハハハッ……。あっ……ーーーーッ!!」
ビーンは足を滑らせ、巨大ムカデの喉奥に吸い込まれるように、落ちていく……。
長い、長い食道器官を断末魔の叫びを上げながら落下し、悪運は虚しく外れた。巨大ムカデの消化液は強酸性、胃袋にたどり着けば、瞬時に溶解してしまうだろう。
ーーー………。
静寂に沈黙し、皆は言葉にならない。ケビン、マルコは掌をパンッと合わせ、拝む。
「今ならまだ……」
ゼブラは鬼神化フェニックスに変身。
ーーーーーッ!!
巨大ムカデはグラグラと体躯を震わせ、ジタバタと苦しく暴れ始める。
一体、何が起こっているんだ……。巨大ムカデは空気を切るような高い咆哮を響かせ、キーンとした耳鳴りが広がる。誰も攻撃は与えてはいない、どういう事だ……。
「あわわわわわ……」
マルコ、ケビンは振り回る巨大ムカデを避け、逃げ惑う。
ーーーーーッ!!
巨大ムカデは口から緑血を吐き、ドスッと地面に叩きつけられ、絶命……。
叩きつけられた衝撃により、地面から砂塵が舞い上がり、空気に漂わせ、静寂。巨大ムカデの口からゲボゲボと緑血が流れ、油臭い匂いが広がる。
ーーー……ザクザクッ!!
巨大ムカデの腹部からパックリ斬口が広がり、油臭い血がドクドクと流れる……。
「ふぅ……、死ぬかと思ったぜ……」
パックリ斬口からムクッと姿を現したのは、血まみれのビーン。
巨大ムカデの食道器官に剣を刺し、剣突きを何度も繰り返し、攻撃したのだ。巨大ムカデの体内は柔らかく、少し力を加えて剣を刺せば、簡単にダメージを与えられるのだ。
「やれやれ……」
ゼブラは鬼神化を解き、安心。すると……。
ゼブラ、今すぐ町に戻ってッ!!。奴らが姿を現しましたッ!!。
ゼブラの頭の中、リサの声が響き、警告。




