第63話 ステファーム・アストラル
ーーー<龍老樹の大広間>ーーー
門を潜り抜け、全域には頭上の高さ程、ビッシリと伸び、成長した草花が生い茂り、広がっていた······。
生い茂っている草花が多く、広がっている為、どんな景色が分からない。
景色を一言で表すなら草花の迷宮、一歩間違えれば、大広間で遭難すると言う哀しい事態になりかねない。
ーーーー3人は、草花をカサカサと、かき分け、進む······。
全域に生い茂っている草花から放出し、金色にフワフワと充満するのは花粉。そして地面の草根からエメラルドの輝きをキラキラと放っている。
龍老樹の大広間に生い茂っている植物には、リサの魔力が宿っている事により、純度が高い。
「離れるなよ。長年、誰も入って来なかったせいか、リサの魔力が高い。下手すれば、取り込まれかもしれないから、気をつけろ······」
ムジカは後ろから来る3人に、告げる。
かき分けている両手は、小さな切り傷が無数に残り、血がポタポタと滴る······。
龍老樹の大広間に生い茂っている草花は、龍老樹が放出する創造エネルギーが濃い為、植物の育ちが強い。
ーーーしばらく歩き進み、草花が生い茂っている地帯を抜け、広地に着いた。
芝生の地面が一面緑に広がり、3人の前には巨大な樹が姿を現した······。
周囲には草花が生い茂り、巨大な樹を囲む広地を形作っている。樹の根元には幹の巨根を力強く無数に晒し、今にでもバキバキと地鳴りを唸らせ、動きそうな立体であり、樹肌は苔がビッシリと生え、樹塵を放出している。
数十メートル上には緑の枝が生い茂り、キラキラとエメラルドの輝きを放っている······。
「久しいな、リサ······」
ムジカは見上げ、安堵の声を上げる。
(これが龍老樹……)
ゼブラは巨大樹の姿に圧倒され、言葉を失う。
ーーーすると……。
「ーーーーーーッ!!」
ーーー龍老樹はズシンと、地鳴りを響かせ、エメラルドの光の粒子を全域に発生させる。
何だ、何か起こっているんた……。と、皆は辺りをキョロキョロと心配に眺める。
ーーーその時、エメラルドの光の粒子は一斉に集まり、凝縮し、そして人の形に姿を形成していく······。
我は会えて嬉しいぞ。よくここまでたどり着いた······。
エメラルドの光の粒子は、龍老樹の高い位置に浮遊し、男性の老人の姿に形成され、辺り一帯に神秘な声を響かせる。
髪の色は紅、幾度の経験を送って来たのか、穏やかな顔つきをした精霊である。
精霊の名前は、ステファーム·アストラル。彼は死後、龍老樹の魔力に導かれ、精霊となった。
「これは一体、まさかステファーム·アストラルっ!!」
ムジカは驚きを隠せない。
地下世界アストラルの創始者は古い書物から覗いた写真でしか見た事がない。まさか、精霊としてだが、見るのは初めてである。
「コイツだよ、コイツっ!!。俺が見たのはっ!!」
ゼブラはヴァンに向き、ビックリの表情を浮かべ、ステファーム·アストラルの精霊にビシッと両指を差す。
「イチイチ俺に向くな······」
と、ヴァンは鬱陶しそうな様子で睨んでいる。
「ゼブラ、コイツとは何だっ!!。口を謹めんかっ!!」
ムジカはゼブラにビシッと注意。
構わんよ······。ずいぶんと成長したな、ムジカ・クアドラス。そして、相当苦労したのだな······。
精霊のアストラルは気さくな様子でムジカを眺める。
龍老樹の精霊である彼の心が分かるらしい······。ムジカ自身の表情のシワから滲ませる想い出が伝わってくる。
魔界軍の侵攻、仲間の死、先の恐怖······。精霊のアストラルの前では全てがお見通しだ······。
「無事で何よりです······」
ムジカは頭を下げる。
······父のグレン、母のクリアネルの子、ゼブラ・ハルシオン。前に······。
ステファームの霊体は招く。
(俺の両親を知っている?······)
ゼブラは不思議な緊張感を張らし、ステファームの霊体の前に歩み寄る。
忘れてかけていた両親の名前、彼は何かを知っているのか······。
お主に、知る覚悟はあるか?······。
「知る覚悟?」
ゼブラは気汗を額から滴らせる。
我はステファーム・アストラル。お主の持つ剣を作った者であり、祖先である。今から話す事は、お主は戸惑い、後悔するかもしれん。そして、苦労するだろう。それでも聞くか?······。
ステファームの霊体は意を尋ねる。
「ああ……、教えてくれ」
一度、迷い気に瞳を閉じ、そしてゼブラは覚悟の意を表し、瞳を開き、答えた。
空白に曇った記憶を、知るべきだと判断した。
何故、両親は自分の前から姿を消したのか……。 場合によっては後悔するかもしれない。
それでは、お主の心の中に隠れている記憶を、導いてやろう······。
アストラルの霊体は両手を広げ、詠唱。
ーーーすると、一辺の景色は一変した。
皆の前に映るのは、二人の男女。男性は黒髪、20代後半。女性は赤髪のロングヘアー、年は20代前半。
男女の間に、ニコニコと手を繋ぐ赤髪の幼児、幼少期のゼブラ······。
3人は、山林が生い茂る坂道を登っている。しかし、男女の表情は、幼少期のゼブラとは違い、悲しみの様子を浮かべ、沈んでいる。




