第59話 微かな変化
「野郎、身代わりの武器を仕込んでいたか……。破壊後に発揮可能な特殊魔導術付きの代物、さすが熟練者、非常手段を考えてやがる……」
ヴァンは涼しい表情で剣を構える。
だが、結構な魔力を吸収され、鬼神化で上手く戦えるかどうか、不明な様子である。
「言っておくが、俺はお前と一緒に死ぬのは嫌だからな……」
ゼブラはヴァンに向き、苦言。
「俺も、貴様とここで思い出になるのはゴメンだ。死ぬのは貴様だけにしてくれ……」
「なにを………」
ジィーと睨むゼブラ。
「何だ?」
と、睨み返すヴァン。
ーーーその時、睨み合う二人は、何かを思い出した様子で同時に振り向き、警戒。
龍老樹の塔の出入り口にて、ムジカに股間を握られた事を、今でも恐怖に根付いているからだ。
「取り敢えず、今はこの場をどうするか考えよう」
ゼブラは鬼神化フェニックスに変身し、炎剣を構える。しかし、魔力を吸収された事により、鬼神は魔力の代わりに使用者の精神力を消耗させ、戦意をアップ。
だが、戦意が使用者の限界を超えてしまえば、自我を失い、破壊者と言う名のモンスターになる。
ーーーゼブラはユリアを思い浮かべ、精神を維持。
「そうだな、同じタイミングで振り向くとは、案外、貴様とはどこか似ている所があるのかもな……」
ヴァンは鬼神化・重力の魔王に変身。
「俺とお前が……、例えば?」
鬼神化フェニックスは鬼神化・重力の魔王に向ける。
「さあなっ!!」
鬼神化・重力の魔王は黒剣を構え、駆け走る。
鬼神の戦意上昇により、鬼神化・重力の魔王の全身は黒曜の熱圧を漂わせ、能力アップ。
「来るかっ!!」
ローズ・ハットンは邪の装甲に全身に黄金雷の熱圧を漂わせ、黒槍を構える。
鬼神の魔力を吸収した事により、邪の装甲により全身を漂わせる白銀の雷流は黄金雷の熱圧に変化し、全能力はパワーアップ。
「重力の雨撃ッ!!」
鬼神化・重力の魔王は重力を周囲にズシッと漂わせ、詠唱。
ーーー空中に無数の黒の詠唱陣を描き、ローズ・ハットンに狙いを定め、白銀の光線を一斉放射。
「ーーーーーッ!!」
邪の装甲のローズ・ハットンは、さらに紫炎の熱圧を漂わせ、光体化。
重力の雨撃を一瞬一瞬の察知力で回避し、前進。
そして鬼神化・重力の魔王に無数の槍撃を放つ。
「ーーーーッ!!」
鬼神化・重力の魔王(グラヴィティ・ロー中間距離から黒剣を振るう。
「ーーーーーッ!!」
ーーー槍撃と剣撃が地鳴りを響かせ、衝突。
「ーーーーーーッ!!」
ローズ・ハットンの槍撃に負け、鬼神化・重力の魔王は弾かれ、後方に吹っ飛ぶ。
「魔の剛槍撃ッ!!」
邪の装甲のローズ・ハットンは黒槍を上段に構え直し、詠唱。
槍全体に邪属性を宿し、紫炎を燃え盛らせる。
「孔雀鳳凰剣ッ!!」
鬼神化フェニックスは炎剣を構え、邪の装甲のローズ・ハットンの背後、数メートルの距離に回り込み、突っ込む。
羽根、ベストに鳳凰の炎を燃え盛らせ、魔力の高さを物語る……。
「甘いわっ!!」
ーーー邪の装甲のローズ・ハットンはクルクルと黒槍を回し、背後の鬼神化フェニックスに狙いを定め、槍柄を打ち込む。
「ーーーーーッ!!」
邪の装甲のローズ・ハットンの槍柄の一撃を打ち込まれ、鬼神化フェニックスは後方に吹っ飛ぶ。
奴は背後にも、目があるのか……。と、言わんばかりの察知力は人並みを軽く外れ、鬼神化使いをも凌駕する……。
「重力の雨撃ッ!!」
鬼神化・重力の魔王は黒剣を掲げ、詠唱。
邪の装甲のローズ・ハットンの周域に重力を漂わせ、空中に無数の詠唱陣を描き、重力の雨撃の紫の光線を一斉放射。
「そんな雨、何度やっても効かんっ!!」
邪の装甲のローズ・ハットンは察知、空中から一斉放射される重力の雨撃の光線を軽いフットワークで一瞬一瞬で回避。
部屋中、重力の雨撃の光線により破壊された地面から黒粒子の煙が充満。
ーーーーしかし。
「それは囮だ、メインはこっちだ」
ーーー邪の装甲のローズ・ハットンの右側、十数メートルの距離に鬼神化・重力の魔王は移動し、詠唱。
紫炎の詠唱陣を描き、重力の爆裂波を放射。
「ーーーーーーッ!!」
重力の爆裂波のダメージを与えられ、邪の装甲のローズ・ハットンの全身から黒炎、黒煙が充満。
「やったか?」
鬼神化フェニックスは、邪の装甲のローズ・ハットンを眺め、警戒の様子で炎剣を構える。
身代わりの武器はない……。今度こそ、ダメージを与えられたハズだ……。数分後、黒炎、黒煙が晴れる……。
「残念だったな……」
邪の装甲のローズ・ハットンは全身に焼傷を残し、パキパキとした音を響かせ、煙が噴出。
無傷とは、言い難い状態ではあるが、奴は不敵な様子を浮かべている。
ーーーパキパキ・ビクビク、ビクンッ………。
その時、邪の装甲のローズ・ハットンの右肩、右腕がビクビクと歪み、震える変化を確認した……。
(何だ、奴の肩や腕が一瞬、不自然な動きで震えていた……。もしや……)
鬼神化・重力の魔王は微かな変化を逃さず、黒剣を構える。
「おい、どうする?。全然、平気じゃねぇか……」
鬼神化フェニックスは、鬼神化・重力の魔王の隣に駆け寄り、邪の装甲のローズ・ハットンの姿に気だるい様子を覗かせ、炎剣を構える。




