第54話 ゼブラ、ヴァン、意外な再会
ーーー〈龍老樹の塔入口前〉ーーー
「ここが目指していた塔か……」
入口前の広地にて、行き着いたのはゼブラ。
一帯に重々しく漂う地底雲の蒸気、魔界軍の兵士達の雄叫びが微風と混じり、響き渡る。
ここは戦場……。魔界軍の兵士や、変態吸血鬼のマリーのような魔族が、何処から来るかわからなから油断できない。
ーーー謎の塔を下から見上げて見ると、デカイ……。遠くから見た光景と、近くから見た光景と、遥かに違って見えるのは気のせいだろうか……。
……すると。
ーーー地底雲の蒸気を濃く漂わせ、右側の森林道から足音を響かせ、何者かが近づいて来る。
「しばらくだな……」
蒸気の中を抜け、姿を現したのはヴァン。
容態は無事に回復、服の凄まじいダメージは潜って来た修羅場を物語る。
「お前は……」
ヴァンの姿に驚き、ゼブラは剣を構える。
何故、奴がここにいるんだ……。額から緊迫感を滲ませる汗を滴らせる。
「あの女はどうした?。一緒ではないのか?……」
ヴァンは尋ねる。
「ユリアは訳あって一緒じゃない……。お前の目的は俺だろ、ここで決着つけるか?」
ゼブラは剣を構え、ヴァンに刃を向ける。
「いや、状況が変わったからな。お前には用はない。しかし、刃を突き立てるのであれば、容赦はしない……」
ヴァンはスラリと剣を抜き、片手に構える。
「お前の目的は何だ?」
「俺の目的か……」
ヴァンはウソの目的を考える。
本当の目的はゼブラが敵である以上、簡単に伝えるワケがない……。
ピリピリとした殺気が漂い、二人は相対。
「無事だったか?、ゼブラ」
状況に水を指し、ゼブラ達の前に急いで駆けつけるのはムジカ。
「ムジカさん。無事だったんですね……」
ゼブラは剣を収め、ムジカに向く。
「まぁな……。ムサシとカメレオンは?」
「皆と合流する為、この塔に来て待っていたんだけど、わからない……」
ゼブラは頭を横に振る。
大丈夫、彼女達は生きている……。何故なら、しぶとい風貌しているから、死ぬとは思いにくい。と、信じている。
「そうか……。アイツらも戦士だ、己の覚悟はしているハズだ。それより、この者は誰だ?」
ムジカは尋ねる。
「こいつは……」
「俺はヴァン、それよりもアンタ達と協力したい」
ーーーすると、ゼブラの言葉を遮り、ヴァンはムジカに目を向ける。
何故なら、良い提案を考えたからだ……。
「どういうつもりだ?。俺とお前は……」
「この俺が共同戦線を組んでやると言ったんだ。今のお前は殺す価値もないから、安心しろ……。それに、俺もここの奴らに命を狙われている。とりあえず一緒に戦え……」
ヴァンは無愛想に睨み、依頼。
「それが人にモノを頼む態度か?、ああんっ?」
ゼブラは睨み返す。
ーーーこの間までは、返り血を額に滴らせ、冷酷な表情で殺そうしたクセに……。信用なんか、出来るハズないからだ……。
「お前達の関係に、何があったかは知らんが、まぁいい……。今から少し、塔の説明をしたい……」
ムジカは真剣な様子を浮かべる。
(…………)
ゼブラとヴァンは睨み合い、自分達からピリピリとした威圧感を漂わせ、ムジカの言葉に聞く耳すら持たない。
さて、どうした事か……。
(仕方ない……)
ムジカは面倒臭そうな様子で二人の所に近づく。
そして両手をワシワシと動かし、何か企むような笑みを浮かべる。
「目的は何だ?」
ゼブラはギロリと睨む。
「貴様に教える筋合いはない……」
と、ヴァンは冷たく言い返す。
「いい加減にしろっ!!」
二人の大事な所に狙いを定め、ムジカは両手をガシッと掴みかかる。
「あっ………」
「ぐぅっ………っ……」
ゼブラとヴァンは言葉にならぬ叫び声をあげ、悶絶……。二人が掴まれている場所は、男性の象徴である玉袋。
握り潰されそうな痛撃に、二人の顔は苦しく吊り上り、ジタバタと足を動かしている。
「話を聞けっ……。でなければ、貴様らの大事なトコロを使いモンにならないようにさせてやるぞ……」
ムジカは真剣な様子で顔を近づかせ、警告。
「わかった、わかったから……。離してくれっ」
ゼブラは悲痛な声をあげる。
「まったく……」
ムジカはうんざりした様子で離す。
ーーーゼブラとヴァンは痛撃から解放され、溜め息を吐き、へたり込む。
強く握ってきたから、グチャリと潰されるかと思った。それ位、痛かったのである。
「この塔は龍老樹の塔と言ってな、今では魔界軍に支配され、奴らの拠点と化している……。この機会だから話しておこう、塔の地下聖域には龍老樹と言う樹が安置されており、一部の者にしか入れないようになっている。今回の目的は塔に侵入し、制圧。その後、地下聖域に赴き、龍老樹の確保だ……」
ムジカは説明。
龍老樹の存在は本来、機密だ。しかし、状況が状況、話さざるを得ない。
恐らく魔界軍の目的は、地下聖域に安置されている龍老樹の力であろう。どこで龍老樹の存在を知ったのかは、どうでもよい。何故なら地下聖域の扉の守護術は究極。強力な魔族でも、開くことは出来ない。




