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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
43/260

第42話 ムサシの葛藤

ーーー〈アロウン砦〉ーーー


ーーガープとの死闘から数時間後、ダリウス平原の中央部は義勇軍の管轄下となり、奪還に成功した。

 戦いの後、義勇軍は落ち着きを取り戻し、ダリウス平原の中央部に監視部隊を派遣し、エボルド森林に潜伏する魔界軍の様子を監視している。

 

 しかし、魔界軍は動きは見せない。森林の出入口を動き回り、ダリウス平原まで出てこない。との報告を受けている……。

 いつ、魔界軍は隊列を立て直し、再び出陣してくるか解らない。もしかしたら、魔界から増援を待っているかも知れない……。


ーーー〈シャワー室〉ーーーー


 アロウン砦の通路側の部屋にシャワー室が設けられている。部屋の扉の掛札には女子使用中と掛けられている。女子の兵士は一人だけ、ムサシである。

 

 横8列に並ぶ個別のシャワールーム。

 床、壁はタイル張り、天井はチカチカと点滅する白光のランプ。8列目の個室からシャワー水音が響き、流れ落ちるシャワーの水が排水口に吸い込まれる。


(何故だっ!!………)


 シャワーを正面から浴び、ムサシは頬を赤く染め、タイル壁をドンッと叩く。

 シャワーの水滴が、むっちりした肢体を晒し、ムサシの背中から尻を伝って流れ落ち、至る所に切り傷、胸部にはバツ字の傷跡が残っている。医療兵に傷を回復してもらった後、汗臭くなった身体を流す為、そして考え事をする為、シャワールーム来た。


 シャワーの水音が響き、静寂の雰囲気が漂う。


(何故、アイツの顔が浮かんでくるのだっ!!。私は…私は……)


 彼女は今まで兵士達に敬意を振る舞われ、対等な者はいなかった。頭に浮かんでくるのはゼブラ、アイツはガサツで、馴れ馴れしいし、スケベだ。

 私はアイツが嫌いだ、嫌いだ、大嫌いだ……。

 けど、ピンチの時に助けてくれた時、戦い終わった時の弱々しい奴の顔が浮んでくるのは何故だ。いくら嫌いになろうとしても、嫌いになれない。

 頬を赤く染め、ムサシは乳房を押さえ、荒い息を吐く……。

 

 シャワーの水が雑音のように響かせ、流れ落ちるシャワー水がムサシの髪をベッタリと滴らせる。


「私は、断じて違うのだっ!!」


 ムサシはムキになって声をあげる。

 すると、シャワールーム一辺はムサシの属性魔力によりピキッと氷が隆起し、氷結。

 凍結化したシャワールームの壁、地面から氷の粒子が漂い、寒い。


(あっ…………)


 うっかり…。ムサシは思わず声をあげる。


ーーーー〈医務室〉ーーー


ーー鬼神化、戦闘によるダメージと疲労により、ゼブラは医務室のベッドに寝伏せていた。

 少しの休憩のつもりが、睡魔に負けてしまった。

 

ーーーゼブラは夢を見ていた……。


 1面は純白一色の景色に自分一人、何もない。

 こんなハッキリした夢の中は初めてだ。両手両足が見え、意識がハッキリしている。

 夢の中なのに、不思議な所だ………。


「ーーーーーーーッ!!」


 ゼブラの正面に光の粒子が集束し、人の形に具現化した。


(何だ?……)


 ゼブラは警戒し、剣を手に取る。

 人の形に具現化した光の粒子は女性の姿に変身した……。

 水色のロングヘアー。瞳の色は黄金、シャープな顔形。スラリとした肢体、服装は純白のワンピース。年齢は十代後半、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。


「ゼブラ・ハルシオン。アナタを待っていました……」


「俺を、待っていた?…」


 何故、俺の名前を知っているんだ……。女性の神秘的な声に、ゼブラは戸惑う。


「私の名前はリサ・ドラグーン。生まれ変わりし彼女の心の中に宿る1つの夢です……」


「リ…リサ・ドラグーン!!」


 ゼブラは驚いた声をあげる。


「アナタに頼みたい事を伝える為、彼女の夢である私がユーギガノスの選ばれし者であるアナタの心を通じ、夢の中に現れました」


「頼みたい事?」


 ゼブラは気持ちを落ち着かせ、尋ねる。

 リサ・ドラグーンって破壊神ラモディウスを封印したユーギガノスの伝説の戦士だ。

 何故、彼女が夢の中に出てきたのだろう……。


「終末戦争時代、私が封印した破壊神ラモディウスを聞いていますか?」


「まぁな……」


 ゼブラは頷く。


「私は幾多の転生を通じ、破壊神ラモディウスを封印した宝石が何者かに盗まれたと聞きました。アレは危険な代物、力欲目的で手に入れるモノではありません」


「取り戻して来ればいいのか?」


「いえ、破壊してください。私を信じてくれたステファームは死に、奴の脅威を知る者は皆、絶えました。誰も奴の恐ろしさを知らない世の中に、封印宝を残しておくのは危険だからです」


 リサは真剣な様子を浮かべる。


「なら何故、昔に破壊しておかなかったんだ?」


 ゼブラは尋ねる。

 そんな危険な代物なら、破壊すればよかったハズである……。


「あの時は、封印宝を破壊すれば復活する恐れがあり、出来なかったのです」


「でも破壊すれば、復活するかもしれないんだろ?。取り戻して来ればいいんじゃ?…」


「ステファームの血筋と龍老樹ドラグーンの琥珀石が宿った剣に選ばれたアナタなら破壊神ラモディウスの復活を無効にし、破壊出来るかもしれません。お願い、ゼブラ……」


 リサは頭を下げ、依願。


「わかった……。けど、誰が持っているかわからない。探しようがないよ」


「それなら心配入りません。私が今、生まれ変わっている彼女の前に、彼らは現れます。何故なら私自身に破壊神ラモディウスの封印宝が宿っているからです……」


「なら、教えてくれ。君の生まれ変わりの彼女とは誰なんだ?」


 ゼブラは尋ねる。


「それは今、教えられません。私は彼女の心であり、夢です。肝心の彼女が真実を伝えるのを恐れています」


「なら、どうすれば?……」


「真実を受け入れ、彼女の居場所として側にいてあげる事です。アナタが知っている者です」


 リサはゼブラに、意味深に伝える。


(俺の知っている人?……。まさか……)


 ゼブラはある方を思い浮かんだ。


「今、捕らわれの身の彼女を助けて下さい……。今、私が言えるのはそれだけです……」


 そして、リサは全身に光の粒子を漂わせ、ゼブラの前から消え去る。

 まだ聞きたい事があると尋ねたかったが、ゼブラは手を伸ばすと同時に、夢の中は白銀の光を空間全体に輝かせ、消滅した……。

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