第40話 もう1つの戦い、決着
「下らん。全て撃ち落とすのみだ……」
鬼神化・重力の魔王は全身から重力属性の熱圧を漂わせ、詠唱。
そして空域に紫の詠唱陣を無数に描き、蛇の球に対し、数で対抗する。
エリゴールの悪夢の監獄の中、無数の浮遊岩が漂い、雷流が落ち、鬼神化・重力の魔王とエリゴールは静寂な雰囲気を漂わせ、相対。
「ーーーーーッ!!」
エリゴールは荒げた叫びを響かせ、無数の蛇の球に、鬼神化・重力の魔王に突撃しろと、命令。
無数の蛇の球は鬼神化・重力の魔王に一斉突撃。
「重力の雨撃ッ!!」
鬼神化・重力の魔王は詠唱し、無数の詠唱陣から重力の雨撃の白銀の光線を一斉放射。
重力の雨撃の光線と、蛇の球が悪夢の監獄の全空域に爆発の閃光が煌めかせ、激しく交錯。
空域の浮遊岩を無差別に破壊し、白濁の熱圧を漂わせ、ビリビリとした地鳴りを響かせる。
「ーーーーーーーッ!!」
重力の雨撃と無数の蛇の球が交錯し合う領域の中、鬼神化・重力の魔王とエリゴールは空中移動し、突っ込む。
ーーーー混沌の中、鬼神化・重力の魔王とエリゴールは空中を駆け巡り、閃光から映る影を残し、刃を激しく交え合う。
重力の雨撃、蛇の球が当たろうが、視界が白濁の煙に染まろうがなろうが、関係無い……。全て己の察知力で見つけるのみだ……。
敗者の最期は、下の大渦に落下する浮遊岩と共に飲み込まれ、問答無用に終わりを迎える。
「ーーーーーーーッ!!」
つばぜり合いの中、両者は後方に空中移動し、10メートル離れる。
「重力の爆裂波ッ!!」
鬼神化・重力の魔王は全身に重力を漂わせ、詠唱。
詠唱陣から重力の爆裂波の白銀の光線をエリゴールに放つ。
「毒蛇の酸撃ッ!!」
エリゴールは蛇の槍を構え、詠唱。
詠唱陣から毒蛇の酸撃の濃緑の水鉄砲を、鬼神化・重力の魔王に放射。
「ーーーーーーーッ!!」
重力の爆裂波と毒蛇の酸撃が衝突し、禍々しい閃光、粒子煙を広げ、大爆発。
ーーーーそして。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
鬼神化・重力の魔王は浮遊岩に乗り、フラついていた。
悪夢の監獄の空域は熱圧が漂い、白銀の雷が粒子煙に流れている。
鬼神化の察知力で確信した、エリゴールの気配は感じられない……。奴は死んだ、下の大渦に飲み込まれ、最期を迎えたのだろう。
自分の世界で、最期を迎えるとは、格好の悪い奴だ……。
「うっ………」
ヴァンは鬼神化を解いたと同時に、全身に痺れが走り、グラリと体勢を崩した。
戦いの中、蛇の球に当り、痺れ毒が後から発生したのだ。
鬼神化状態のダメージは受け継がれ、変身を解いた時に表れる……。
静寂な空域には粒子煙、蒸し暑い熱が漂い、ヴァンの額から汗が滴る。
「キキキキ、痛み分けのようですね……」
傷だらけのエリゴールが空中移動し、痺れ毒に苦しむヴァンを見下ろす。
全身の表面の毛はチリチリに焦げ、腹部には風穴が開き、左の腕は肩から吹っ飛んでいる。
奴もダメージは凄まじく、フラフラの空中移動をするだけで精一杯だ……。
(生きていたのか……)
マズイな……。と、様子のヴァン。
「私の蛇達に噛まれれば、しばらく痺れは続き、アナタはマトモに動けまい……。さぁ、死んで貰いましょう……」
ボロボロのエリゴールは右手の蛇の槍を掲げ、ヴァンに突きつける。
(…………)
ヴァンは沈黙。
エリゴールから目を反らし、うつ向く。
「アナタの事、嫌いではないですよ。何せ、私をここまで楽しませてくれたのはアナタが初めてですから……。さて、私が叶えてあげましょう、アナタの願いでもある……死を……」
エリゴールは確信した笑みを浮かべる。
奴には、今のヴァンは反撃出来る程の体力は残っていない。と、思い込んでいる。
「ーーーーーーッ!!」
ヴァンはニヤリと笑い、捨て身の賭けに出る。
一瞬の隙を狙い、剣を中段に突き立て、エリゴールの腹部に飛びかかる。
「なっ…………」
何が起こったんだ……。
と、エリゴールは吐血し、予想外の驚愕。
腹部に、飛びかかるヴァンの剣刃がグサリと突き刺さり、黒血がボトボトと滴る。
全身は刺されたダメージで灼熱し、両手が黒血に染まる。
ーーーー二人は下の大渦に向かい、落ちる……。
下の大渦までの落下の高さは数百メートル。風を切る落下スピードで急降下。
互いが大渦に飲み込まれるのも、そんなに時間は掛からない。
(くたばれ……)
急降下の中、不敵な笑みを浮かべ、ヴァンはグリグリと剣をエリゴールの腹部にねじ込む。
不敵な笑みを浮かべるヴァンの顔に、エリゴールの黒い返り血が飛び散る。
「人間っ、貴様ごときにぃーーーーッ!!。ガァーーーーッ!!」
エリゴールは絶叫。
全身から緑炎を燃やし、ヴァンを巻き込み、消滅した……。
魔族の種類にもよるが、弱点に致命的ダメージを与えれば全身から炎を燃やし、消滅する事もある。
炎の色は自身の属性を表し、エリゴールは蛇の能力を持ち、毒属性を示す緑である。
「ーーーーーーーッ!!」
ヴァンは下の大渦に飲み込まれ、悪夢の監獄から姿を消した……。
ーーーエリゴールの死により、戦場の悪夢の監獄は現状維持が出来なくなり、空間消滅の活動を開始。
空間一帯の浮遊岩、充満する紫の粒子煙が消滅し、虹色のオーロラがユラユラと波を打っている。
「ーーーーーーッ!!」
悪夢の監獄に地鳴りが響き渡り、空間一帯に亀裂がピキピキと渇いた音を響かせ、無数に発生。
悪夢の監獄は亀裂の穴に空気が吸い込まれ、そして、閃光爆発を引き起こし、消滅。




