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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
32/260

第31話 40年前と同じ景色

「ーーーーーーッ!!」


 ムジカは一辺に立ち並ぶ氷の城壁アイス・キャッスルを氷の粒子煙に一変させ、パキンと音を響かせ、消失させる。


 平原一帯を漂わす冷霧。

 地面に倒れ伏し、残りの銃剣の兵士達の背中から白の熱煙を漂わせ、安否は不明である。

 死のイメージに襲われた時の苦痛の叫び声は聞こえず、最悪な状態をイメージを意識してしまう。


「40年前と同じ光景だな…」


 不敵に笑うガープは辺りを眺め、ムジカに向かい、歩き進むのである…。

 黒の熱圧を全身から漂わせ、まだまだ余裕てある。それに、奴には回復能力があり、ダメージを与えても、時間が経てば自働的に回復するのだ。


「そうだな…。同じ光景で、ケリをつけるのが相応しい…」


 ナイフを指した太モモの痛み、額から汗を滴らせ、険しい表情でムジカは詠唱。

 左側、右側の地面から詠唱陣を描き、2体の氷の分身を具現化させる。


「ーーーーーッ!!」


 2体のムジカの氷の分身は、ガープに突っ込み、草原を駆け走る。

 氷の分身の全身から冷煙を漂わせ、冷度、硬度を示し、人が攻撃した位では壊れない…。

 むしろ、触った瞬間、凍る程の冷却力があり、攻撃か出来ない。


「少し、リミットを解放してやる…」


 ガープは小さく声をあげる。

 黒の熱圧を全身から一辺に広げ、白の雷流を漂わせ、パワーアップした…。

 ガープの戦闘力は通常の2倍、手強い奴が、さらに手強くなり、面倒臭くなった。

 

「ーーーーーーッ!!」


 1体の氷の分身は中間距離から詠唱し、氷の尖柱をガープの足元に狙いを定め、横一列に一斉隆起。


(…………)


 ガープは表情を変えず、沈黙。

 一斉隆起した氷の尖柱ガープの目先に届いたと同時に、漂わせる黒い熱圧により、解け落ちる…。

 奴は、氷の尖柱が自身の所に届かない事を、見切っていたのだ。


「ーーーーーーーーッ!!」


 2体目の氷の分身は、ガープの背後に回り込み、背中をガシッと押さえ、詠唱。

 分身は氷の液体化とし、ガープの全身を包む。


「ーーーーーーーーッ!!」


 液体化となった氷の分身により、ガープの全身が瞬時に凍結。


「ーーーーーーーッ!!」


 凍結化したガープの左右から、ムジカの氷の分身が地面から現出し、氷の槍でガープの身体にガシュと音を響かせ、一斉に突き刺す。

 氷の槍がクロス字に刺さり、ガープの身体は、さらに凍結化した…。

 しかし、奴に漂わせる黒い熱圧により、全身の氷は徐々に解けていく…。


「ーーーーーーッ!!」


 ムジカは突っ込み、凍結化のガープの頭に剣をガシュと突き刺す。


「綺麗な氷のオブジェだな…」


「ーーーーーーーーッ!!」


 ガープの声に、ムジカは額から汗をにじませ、振り向く。


「以外に簡単に真似出来たな…」


 ガープは不敵な笑みを浮かべ、ムジカを見下ろし、刃に黒の熱圧を漂わせ、片手で降り下ろす。

 奴は魔族、ムジカの幻影ミラージュをコピーは容易い…。

 幻影ミラージュを使用し、分身を囮に使い、ムジカの後方に移動したのだ。

 昔は出来なかったが、奴もムジカと同じ、成長し、今は出来る。


「ーーーーーーッ!!」


 ムジカは剣を上段に構え、受け止めるが、剣ごと一刀両断され、地面に倒れ伏す…。

 しかし、倒れ伏したムジカは氷の粒子煙を漂わせ、消失…。つまり、倒れたムジカは分身だ。


「雷の貫通撃ボルト・マグナムっ!!」


 ガープの背後、数メートル先からムジカは、雷の光を広く輝かせた刃の剣突きを放つ。


「人間っ!!」


 ガープは振り向き、黒い熱圧を漂わせた剣を、ムジカに振るう。


「ーーーーーーーッ!!」


 雷の一撃、黒の熱圧が激しくぶつかり合い、円形10メートルの範囲に衝撃波が広がる。

 ムジカの渾身の一撃、全身全霊の魔力を刃に注いだつもりだ…。

 ここで倒さなければ、敗けに等しい。

 期待した部下に、ゼブラとムサシを呼んでこいと頼んだが、間に合わないだろう…。


「後、数センチ、足りなかったな…」


 ガープは勝ち誇った様子で笑う。

 ムジカの一撃で自身の刃は砕かれ、貫通した雷の刃が自身の胸元に突き刺さっていた。

 地面に滴る黒血、刃がガープの心核コアに到達するまで、数センチ足りなかった。

 もし、雷の刃が心核コアに到達していたら、倒せていた…。 


(……………)


 ムジカは雷刃をガープの胸元に突き刺したまま、絶望の様子を浮かべ、額から汗をにじませる。


「ーーーーーーッ!!」


 ガープは砕かれた剣を投げ捨て、代わりの剣を黒炎で造形化させ、ムジカに向け、剣を降り下ろす。


「ーーーーーーーッ!!」


 ムジカの胸に、ガープの剣撃が与えられ、10メートル後方に吹っ飛ぶ。

 一回、二回と転び、うつ伏せの体勢で地面に叩きつけられる…。

 ムジカの手元から飛んだ剣が、地面にグサリと突き刺さり、刃の輝きがガープを映し、照らす。

 吹き付ける霧が一帯に漂わせ、静寂な土壇場を物語る…。


「残念だったな…。40年前の決着は、俺に軍配が上がったようだ…」


 ガープはうつ伏せに倒れているムジカに威圧感を漂わせ、ゆっくりと歩き進む。

 刺された傷口は再生能力により、みるみると回復し、塞いでいく…。

 黒の熱圧を漂わせた剣を掲げ、歩き進むガープの姿は、ムジカの視界から伺えば、絶望である。


(クソッ…。死んでなるものか…)


 ムジカは諦めず、立ち上がろうとするが、ダメージの影響により、身体をフラつかせ、へたり込む。

 ムジカの胸に、黒の十文字の剣傷が刻み込まれ、灼熱の麻痺が全身を駆け巡る。


「あばよ…。貴様との戦い、楽しめたぜ…」


 ガープは立ち止まり、剣を掲げ、詠唱。

 剣先から黒炎の魔力球を具現化させ、ムジカにトドメの一撃を放つ。 


(動け、俺の身体っ!!。動け、動けっ!!)


 意識を保ち、目に映り、迫り来る黒炎の魔力球に、ムジカは心の中で叫び、もがく。

 両手、両足、灼熱の麻痺により、感覚が働かず、動かない…。


白虎氷結斬びゃっこひょうけつざんッ!!」


 その時、後方から氷の斬撃が放たれ、ムジカの横を高速で通過し、黒炎の魔力球を両断。

 二つに両断された黒炎の魔力球は消滅し、粒子煙として還元された。


 瀕死のムジカの前に立ち、熱圧を漂わせる背中を見せるのは二人の戦士の姿が目に映る…。

 ゼブラの変身姿である鬼神化フェニックス、そして隣に立つムサシが、駆けつける。


「遅くなった…。生きているかムジカさん?」


 鬼神化フェニックスは炎剣を構える。


「ここは、私達にお任せを…」


 ムサシはクールな表情を浮かべ、氷刀を構え、後ろのムジカに告げる。

 黒炎の魔力球を二つに両断した白虎氷結斬ひょうけつざんはムサシの技である。


(二人に任せるか…。頼んだぞ…)


 ムジカはフラフラになりつつ、下がる。

 これから激しい戦いになると、感じた為、後方に移動し、自身の回復に専念する…。


「おい、暑苦しいぞ。もう少し離れろ…」


 ムサシは面倒臭そうに口を開き、声をあげる。

 額、袖無しの胴着の両肩から汗をにじませ、両頬を紅く染める…。


「俺の鬼神化は火属性だし、仕方ないだろ…」


 ムサシの意見とは反対に、鬼神化フェニックスは全身に紅の熱圧を漂わせる。


「フン、どうだか…。私に汗をにじませて、変な事を想像しているのだろ、貴様は?…」


「誰がそんな事をっ!!。お前の汗をかいた姿に、欲情しねぇよっ!!」


 鬼神化フェニックスはムサシに目を向ける。


「何っ?。貴様にそれを言われると、何か腹が立つ、勝負しろっ!!」


 ムサシはムキなり、鬼神化フェニックスに氷刀を突きつけ、構える。

 氷属性の者、火属性の者とは何か相性が悪いらしい。二人の息はガタガタである…。


(……………………)


 果たして大丈夫だろうか…。と、ムジカは後方から心配な様子で見守る…。


「ーーーーーーッ!!」


 ガープは鬼神化フェニックスとムサシの二人が立つ場所に狙いを定め、黒の衝撃波が放ち、爆煙が広げる。


(バカ共が……)


 ムジカは頭を抱え、苦い表情を浮かべる。


「痴話喧嘩は、その辺にしておけ…。戦う気がないなら、帰れ…」


 ガープは剣を片手に構え、真面目な声をあげる。


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