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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
31/262

第30話 信じられない光景

「ーーーーーーッ!!」


 全域に吹き荒れる爆風が晴れ、信じられない光景に、ムジカは言葉を失った。

 一辺を漂わす極寒の霧が、ムジカの背筋を絶望的に凍りつかせる。


「そんな術で、俺を倒せると思っていたか?」


 全身に黒曜の熱圧を漂わせ、ガープは不敵な笑みを浮かべ、ロングコートに付着した爆発の埃をパンパンと払い退ける。

 10メートルの円径の爆発跡が残り、奴の周域は焼け野原が広がり、熱圧を漂わせる。

 ガープの全身はキズ1つすら見当たらず、ダメージは全然、感じられない。

 バカな、四属性の大爆発(エレメント・エクスプロージョン)を喰らって生きているハズがない。

 

「生きていたか…」


 ムジカは折れそうな気持ちを殺し、額から汗を流し、鋭い表情を浮かべ、剣を構える。

 大技の使用により、大量の魔力を消費し、力と力のぶつかり合いにより、スタミナを切らしてしまい、マズイ状況だ…。


「感じるぞ、貴様の絶望的な気持ちがな…。今ので最後に決める技だったようだが、残念だったな…」


 ガープは剣を片手に構え、ムジカに歩き進む。

 奴は魔族、人間の心理を読むのは容易い事だ。


「ーーーーーッ!!」


 ガープの後方、数十メートルの距離から1人の兵士が銃剣を構え、数発の銃弾を放つ。


「なんだぁ?…」


 数発の銃弾はガープの広肩に命中、そして後方の兵士に威圧感を漂わせ、振り向く。


「ーーーーーーーッ!!」


 ガープが振り向いた時、兵士は臆した叫びをあげ、銃弾を放射。


「ーーーーーーーッ!!」


 兵士が放つ銃弾を、ガープは漂わせる黒の熱圧で溶かし、突っ込む。

 

「ーーーーーーッ!!」


 兵士は銃剣を下げ、逃げようとする。

 しかし…。


「ーーーーーーッ!!」


 一瞬にして追いつかれ、ガープは手を伸ばし、兵士の喉元を掴み上げる。


「がぁっ……………………」


 喉元を掴まれ、息が出来ない兵士。

 目は上を向き、口からブクブクと泡を吹く…。


「ーーーーーーッ!!」


 ガープはムジカの方に向き、兵士を投げ飛ばす。

 

 ガープに投げ飛ばされた兵士は、一回、二回と地面に叩きつけられ、ゲホゲホと咳き込む。


「いい志だ…」


 ガープは関心し、辺りを見回す。

 周域を漂わす霧の中、残りの兵士達が臆した様子ながら銃剣を構え、ガープを一斉包囲。


「我ら義勇軍はユーギガノスの子孫なり、ここは好き通りにはさせんっ!!」


 兵士の1人は雄叫びをあげ、銃剣を向ける。


「ユーギガノスの子孫か…。試してやる…」


 ガープは不敵な笑みを浮かべ、ギロリと瞳を金色に変化させ、囲域に周波を広げる。

 兵士達の全感覚に、ガープの周波が響き渡る。


(この感じは…。マズイッ!!…)


 響き渡る周波に、額から汗を流し、ムジカは危機的察知し、腰元の小型ナイフを取り出す。


「ーーーーーーーッ!!」


 そのとき、周波を響かせた15人の兵士達は頭を抱え、苦悶の叫びを響かせる。

 地面に倒れ伏し、身体を震わせ、この世の終わりのように、悶えている。

 一体、何が起こってるんだ。理解出来ない光景である…。


「小物には、うってつけの技だな…」


 濃霧を漂わし、一辺に悶え苦しむ兵士達の光景を、不敵な笑みを浮かべ、高々と眺めるガープ。

 奴は魔族の殺気を周波として発信したのだ。

 魔族の殺気力は高く、嫌でも気持ちに察知し、恐怖を形を作ってしまう。

 今、兵士達はガープの殺気の周波により、頭に死のイメージを意識され、気持ちをヤラれている。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


 ムジカは殺気に気づき、小型ナイフを太モモにグサリと突き刺し、恐怖を激痛で誤魔化す。

 太モモの激痛で額から汗を流し、上体を屈ませ、息を切らす…。


「貴様はさすがに気づいていたようだな…。死のイメージを意識する前に、痛みで誤魔化したか…」


 ガープは言う。


「心構えは若い頃のままだ。戦いでは、時に自分の肉体を傷つけるのもためらわない。それか、勝利の為ならな…」


 太モモに刺したナイフを引き抜き、ムジカは自身の鼓動に合わせ、1つ1つ息を整える。

 そして、太モモから血を痛々しく噴き出させ、立ち上がる…。


「フラフラじゃねぇか…。戦えるのか?…」


 ガープは不敵に尋ねる。

 すると…。


「ーーーーーッ!!」


 ムジカは足元に詠唱陣を描き、剣を掲げ、詠唱。

 風属性の1メートルの魔力球を刃先に具現化させ、ガープに狙いを定め、放つ。


「ーーーーーーーッ!!」


 突然、早いスピードで放たれた風属性の魔力球が、ガープの中腹に直撃し、後方に吹っ飛ぶ…。


「立てるか?…」


 ムジカは近くに倒れている兵士に駆け寄る。

 彼はガープに掴み上げられ、投げ飛ばされた兵士である…。ダメージはあるが、生きている。

 しかし、ガープの殺気の周波による死のイメージと、全身を走るダメージと合併し、最悪な状態である。


「死ぬ…。死ぬ…。死ぬ…」


 兵士は精神崩壊し、涙を滴らせる。

 恐怖のイメージにより、全身をブルブルと震わせ、何とも言えない。

 

「しっかりしろ…」


 ムジカは兵士の両肩を掴み、声をあげる。


「死ぬ…。死ぬ…。ダメだ…。ダメだ…」


 ムジカの応答を無視し、兵士は頭を抱え、ブルブルと震わせる。

 ダメだ…。全く話を聞こうとしない。


「ーーーーーーーッ!!」


 意を決し、ムジカは兵士の両肩を掴み、口を開かせ、自身の口を兵士の口に近づかせ、濃厚に口と口を重ね、食らいつく。

 ハッキリ言って、キツイ光景である…。


「何するんですかっ!!」


 ムジカのキスに、兵士は青ざめた表情を浮かべ、ドンッと、突き飛ばし、離れる。

 こんな状況で、何を考えているんだ…。


「目、覚めたか?…」


 ムジカは片手で口を拭い、尋ねる。


「あっ…」


 兵士は思わず自身の両手両足を見回す。

 先程まで、死のイメージに精神崩壊し、身体を恐怖で震わせていたが、何故か止まっていた。

 キスは、状況によっては気持ちを鎮静化させる説はあるが、賭けである。


「まずは手短に説明する。今から砦まで戻り、ゼブラとムサシを呼んできてくれ…。お前だけが、頼りだ…」


 ムジカは言った。


「隊長は?…」


 兵士は尋ねる。


「ーーーーーーッ!!」


 ムジカの前方から十数メートル離れた場所から、ガープが詠唱し、剣先に10メートル以上の黒炎球を具現化させ、ムジカに狙いを定め、一直線に投げ放つ。


「氷の城壁(アイス・キャッスル)ッ!!」


 ムジカは詠唱し、地面一辺から詠唱陣を描き、詠唱陣から氷属性の巨壁を二人の前に具現化させる。


「ーーーーーーッ!!」


 ガープの黒炎球がムジカの氷の城壁(アイス・キャッスル)で防ぎ、衝突により、爆発音を壁から響かせ、黒炎球の威力を物語る。

 氷の城壁(アイス・キャッスル)が、ガープの黒炎球の威力に勝った事は運がいい。

 奴が、本気の状態で攻撃してきたら、氷の城壁(アイス・キャッスル)は打ち破られていただろう。


「ワシの事、皆の事は心配するな…。必ずや、生きて帰る。行けっ、成すべき事を成せっ!!」


 氷の城壁(アイス・キャッスル)冷煙を漂わせ、ムジカは声をあげ、命令。


「隊長…。ユーギガノスの名に掛け、使命を全う致しますっ!!」


 兵士は敬礼、そして後方1500メートル先のアロウン砦に向かい、駆け走る…。

 兵士の名前はデイヴィット、皆の期待と命運を預け、後ろを振り向かず、爆発音が聞こえようとも、立ち止まらず、一直線に走る。


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