第30話 信じられない光景
「ーーーーーーッ!!」
全域に吹き荒れる爆風が晴れ、信じられない光景に、ムジカは言葉を失った。
一辺を漂わす極寒の霧が、ムジカの背筋を絶望的に凍りつかせる。
「そんな術で、俺を倒せると思っていたか?」
全身に黒曜の熱圧を漂わせ、ガープは不敵な笑みを浮かべ、ロングコートに付着した爆発の埃をパンパンと払い退ける。
10メートルの円径の爆発跡が残り、奴の周域は焼け野原が広がり、熱圧を漂わせる。
ガープの全身はキズ1つすら見当たらず、ダメージは全然、感じられない。
バカな、四属性の大爆発を喰らって生きているハズがない。
「生きていたか…」
ムジカは折れそうな気持ちを殺し、額から汗を流し、鋭い表情を浮かべ、剣を構える。
大技の使用により、大量の魔力を消費し、力と力のぶつかり合いにより、スタミナを切らしてしまい、マズイ状況だ…。
「感じるぞ、貴様の絶望的な気持ちがな…。今ので最後に決める技だったようだが、残念だったな…」
ガープは剣を片手に構え、ムジカに歩き進む。
奴は魔族、人間の心理を読むのは容易い事だ。
「ーーーーーッ!!」
ガープの後方、数十メートルの距離から1人の兵士が銃剣を構え、数発の銃弾を放つ。
「なんだぁ?…」
数発の銃弾はガープの広肩に命中、そして後方の兵士に威圧感を漂わせ、振り向く。
「ーーーーーーーッ!!」
ガープが振り向いた時、兵士は臆した叫びをあげ、銃弾を放射。
「ーーーーーーーッ!!」
兵士が放つ銃弾を、ガープは漂わせる黒の熱圧で溶かし、突っ込む。
「ーーーーーーッ!!」
兵士は銃剣を下げ、逃げようとする。
しかし…。
「ーーーーーーッ!!」
一瞬にして追いつかれ、ガープは手を伸ばし、兵士の喉元を掴み上げる。
「がぁっ……………………」
喉元を掴まれ、息が出来ない兵士。
目は上を向き、口からブクブクと泡を吹く…。
「ーーーーーーッ!!」
ガープはムジカの方に向き、兵士を投げ飛ばす。
ガープに投げ飛ばされた兵士は、一回、二回と地面に叩きつけられ、ゲホゲホと咳き込む。
「いい志だ…」
ガープは関心し、辺りを見回す。
周域を漂わす霧の中、残りの兵士達が臆した様子ながら銃剣を構え、ガープを一斉包囲。
「我ら義勇軍はユーギガノスの子孫なり、ここは好き通りにはさせんっ!!」
兵士の1人は雄叫びをあげ、銃剣を向ける。
「ユーギガノスの子孫か…。試してやる…」
ガープは不敵な笑みを浮かべ、ギロリと瞳を金色に変化させ、囲域に周波を広げる。
兵士達の全感覚に、ガープの周波が響き渡る。
(この感じは…。マズイッ!!…)
響き渡る周波に、額から汗を流し、ムジカは危機的察知し、腰元の小型ナイフを取り出す。
「ーーーーーーーッ!!」
そのとき、周波を響かせた15人の兵士達は頭を抱え、苦悶の叫びを響かせる。
地面に倒れ伏し、身体を震わせ、この世の終わりのように、悶えている。
一体、何が起こってるんだ。理解出来ない光景である…。
「小物には、うってつけの技だな…」
濃霧を漂わし、一辺に悶え苦しむ兵士達の光景を、不敵な笑みを浮かべ、高々と眺めるガープ。
奴は魔族の殺気を周波として発信したのだ。
魔族の殺気力は高く、嫌でも気持ちに察知し、恐怖を形を作ってしまう。
今、兵士達はガープの殺気の周波により、頭に死のイメージを意識され、気持ちをヤラれている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ムジカは殺気に気づき、小型ナイフを太モモにグサリと突き刺し、恐怖を激痛で誤魔化す。
太モモの激痛で額から汗を流し、上体を屈ませ、息を切らす…。
「貴様はさすがに気づいていたようだな…。死のイメージを意識する前に、痛みで誤魔化したか…」
ガープは言う。
「心構えは若い頃のままだ。戦いでは、時に自分の肉体を傷つけるのもためらわない。それか、勝利の為ならな…」
太モモに刺したナイフを引き抜き、ムジカは自身の鼓動に合わせ、1つ1つ息を整える。
そして、太モモから血を痛々しく噴き出させ、立ち上がる…。
「フラフラじゃねぇか…。戦えるのか?…」
ガープは不敵に尋ねる。
すると…。
「ーーーーーッ!!」
ムジカは足元に詠唱陣を描き、剣を掲げ、詠唱。
風属性の1メートルの魔力球を刃先に具現化させ、ガープに狙いを定め、放つ。
「ーーーーーーーッ!!」
突然、早いスピードで放たれた風属性の魔力球が、ガープの中腹に直撃し、後方に吹っ飛ぶ…。
「立てるか?…」
ムジカは近くに倒れている兵士に駆け寄る。
彼はガープに掴み上げられ、投げ飛ばされた兵士である…。ダメージはあるが、生きている。
しかし、ガープの殺気の周波による死のイメージと、全身を走るダメージと合併し、最悪な状態である。
「死ぬ…。死ぬ…。死ぬ…」
兵士は精神崩壊し、涙を滴らせる。
恐怖のイメージにより、全身をブルブルと震わせ、何とも言えない。
「しっかりしろ…」
ムジカは兵士の両肩を掴み、声をあげる。
「死ぬ…。死ぬ…。ダメだ…。ダメだ…」
ムジカの応答を無視し、兵士は頭を抱え、ブルブルと震わせる。
ダメだ…。全く話を聞こうとしない。
「ーーーーーーーッ!!」
意を決し、ムジカは兵士の両肩を掴み、口を開かせ、自身の口を兵士の口に近づかせ、濃厚に口と口を重ね、食らいつく。
ハッキリ言って、キツイ光景である…。
「何するんですかっ!!」
ムジカのキスに、兵士は青ざめた表情を浮かべ、ドンッと、突き飛ばし、離れる。
こんな状況で、何を考えているんだ…。
「目、覚めたか?…」
ムジカは片手で口を拭い、尋ねる。
「あっ…」
兵士は思わず自身の両手両足を見回す。
先程まで、死のイメージに精神崩壊し、身体を恐怖で震わせていたが、何故か止まっていた。
キスは、状況によっては気持ちを鎮静化させる説はあるが、賭けである。
「まずは手短に説明する。今から砦まで戻り、ゼブラとムサシを呼んできてくれ…。お前だけが、頼りだ…」
ムジカは言った。
「隊長は?…」
兵士は尋ねる。
「ーーーーーーッ!!」
ムジカの前方から十数メートル離れた場所から、ガープが詠唱し、剣先に10メートル以上の黒炎球を具現化させ、ムジカに狙いを定め、一直線に投げ放つ。
「氷の城壁ッ!!」
ムジカは詠唱し、地面一辺から詠唱陣を描き、詠唱陣から氷属性の巨壁を二人の前に具現化させる。
「ーーーーーーッ!!」
ガープの黒炎球がムジカの氷の城壁で防ぎ、衝突により、爆発音を壁から響かせ、黒炎球の威力を物語る。
氷の城壁が、ガープの黒炎球の威力に勝った事は運がいい。
奴が、本気の状態で攻撃してきたら、氷の城壁は打ち破られていただろう。
「ワシの事、皆の事は心配するな…。必ずや、生きて帰る。行けっ、成すべき事を成せっ!!」
氷の城壁冷煙を漂わせ、ムジカは声をあげ、命令。
「隊長…。ユーギガノスの名に掛け、使命を全う致しますっ!!」
兵士は敬礼、そして後方1500メートル先のアロウン砦に向かい、駆け走る…。
兵士の名前はデイヴィット、皆の期待と命運を預け、後ろを振り向かず、爆発音が聞こえようとも、立ち止まらず、一直線に走る。




