第29話 宿敵ガープ
「ーーーーーッ!!」
エボルド森林から凄まじい爆発。
灰色の爆煙が森林から立ち込め、紅炎が木々から燃え盛り、パキパキと燃える音を鳴らす。
思わずムジカ達は、爆煙が立ち込め、燃え盛るエボルド森林に目を向ける。
逆転勝利の安心から一変、灼熱の緊張感をムジカ達に漂わせる。
すると、エボルド森林を抜け、草を踏む足音を鳴らし、何者かが歩いて近づいて来る。
「情けねぇ奴らだ…。ただの幻像とは知らず、一斉に魔界に逃亡しようとするとは、貧弱な奴らだ…」
剣を片手に持ち、燃え盛るエボルド森林を背景にして、歩いて近づいて来たのはガープ。
身長は2メートル、太い眉毛、茶髪のドレットヘアーに好戦的な鋭い眼。銀飾のロングコートを着用し、体格は戦いで鍛えられた為、筋肉質だ。
奴は人の形をした高位魔族であり、全身に熱圧を漂わせ、高い魔力を示している。
(嘘だろ………)
兵士達はガープの魔力に心が折れ、言葉を失う。 一難去って、また一難。作戦が成功したのに、理不尽だ…。
「何年振りかな、ここに来るのは…」
一辺を不敵な笑みで眺めるガープ。
足元の地面一辺の草は、奴の炎属性の魔力により、焦げている。
「ガァァァァプゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
剣を上段に構え、ガープに突っ込むのはムジカ。
表情は怒りに満ち、憎しみに気持ちを埋め尽くされ、支配されていた…。
「ほぅ………」
軽い笑みを浮かべ、ガープは剣を片手で構え、ムジカの剣撃を受け止める。
「40年振りだな、ガープ…」
ムジカは額から汗を流し、表情を凄ませる。
「40年?…。あの時の若造か、随分と老けたな…」
40年前か…。ガープは今まで歩んできた過去を思い浮かべ、不敵な声をあげる。
「年を重ねると、色んな事を思い出す。ディーク、フラット、ラルフ上官。貴様に殺されたワシの部下と上官だ…」
ムジカは言う。
「ーーーーーッ!!」
お互い、中間距離まで跳び下がり、剣を構える。
「よく覚えているぜ…。40年前、お前の部下、上官、幾多の兵士が横たわり、燃え盛るこの場所で、お前と戦った時の事をな…。今日、お前に与えられた傷が、楽しみで疼いてきたぜ…」
ガープは右の片手で、ズキズキと思い出すような激痛が走る胸を掴み、好戦的に興奮した様子で呟くのである…。
40年前の過去、ガープは一度、地下世界アストラルのダリウス平原にてムジカと一戦交え、深傷を負った事がある。
ガープとの戦いに、多くの兵士達を失い、砦の兵力がヤバイ状況になった事がある…。
「貴様と決着をつけよう、ガープ…。仲間達の無念を、ワシが晴らす…」
ムジカは鋭い様子を浮かべ、ガープを睨む。
「やってみろっ!!」
ガープは黒い熱圧を全身に漂わせ、斬りかかる。
「ーーーーーーッ!!」
ムジカは詠唱し、四属性魔力を剣の刃に注ぎ込み、虹色の光刃と化し、突っ込む。
「ーーーーーーッ!!」
お互いの剣刃が凄まじい音を響かせ、ぶつかり合い、10メートル周域に、衝撃波を発生させる。
――――――……。
壮絶な戦いに、兵士達は驚愕し、沈黙…。
「ーーーーーーッ!!」
ガープとムジカは近距離まで跳び下がり、光刃と黒刃が激しくぶつけ合う。
刃のぶつけ合いに、一辺に光の粒子、黒の粒子が激しく舞い、凄まじい音が響き渡り、地面の草々が揺れ、言葉が出ない光景である…。
「やるな若造…」
ムジカの刃を押し止め、ガープは不敵な笑みを浮かべる。
「長い間、軍人やっているから、経験が身に付く。死んでいった仲間の分、生き、経験し、強くなった…。貴様を倒すためになっ!!」
ムジカは表情を凄ませ、剣を前に押し出し、剣圧でガープを後退させる。
(何をする気だ…)
ガープは10メートルの距離まで跳び下がり、興味津々に様子を伺う。
「全力で貴様に立ち向かう…」
ムジカは剣を上段に構え、詠唱。
一辺に蒸し暑い霧を漂わせ、四属性魔力により、幻影の分身10体を具現化させ、ガープに向け、剣を構える。
「ほぅ……。昔と同じ戦法か…」
ガープは分身達を睨む。
ムジカの分身達が見えると言う事は、幻影に惑わされている。
しかし、効いてる様子はない…。
「果たしてそうかな…」
ムジカは不敵な笑みを浮かべる。
「ーーーーーーッ!!」
ムジカの分身達は剣を上段に構え、詠唱し、白の粒子となり、一辺から消失。
白の粒子は氷属性、蒸し暑さから、極寒に環境変化した…。地面の草原は一辺凍結し、刃のような氷草と化す。
(……………)
ガープはムジカを探し、一辺を眺める。
視界には極寒の粒子が漂い、両肩、剣を構える両腕に降り積もる。
「ーーーーーーーッ!!」
ガープの前方、数メートル先から尖った氷柱の波が地面を流れ、一斉隆起。
「ーーーーーーーッ!!」
ガープは剣を振り下ろし、氷柱の一斉隆起を力任せで斬り壊し、食い止める。
斬り壊された氷柱の破片が地面に飛び散り、瞬時に白の粒子煙に浄化。
「ーーーーーーーッ!!」
ガープの左側2体、右側3体、数メートルの距離から斬りかかるムジカの分身。
「ーーーーーーーーッ!!」
左側から1体、右側から2体と、ガープは斬りかかるムジカの分身を力任せに剣を振るい、簡単に斬り伏せる。
斬り伏せられたムジカの分身は、同じく、白の粒子煙となり、浄化。
なお、極寒の霧が漂っている為、ムジカは分身を何度でも作れる…。
「ーーーーーーーーッ!!」
そして左側、右側から2体のムジカの分身が斬りかかる。
「ーーーーーーッ!!」
ガープは同時に剣を振るい、2体のムジカの分身を斬り伏せ、胴体を両断。
斬り伏せられた2体のムジカ分身は、白の粒子煙と化し、地面に降り積もり、浄化。
「ーーーーーーーッ!!」
白の粒子煙が降り積もった地面から、鋭く尖った長氷針が無数に一斉隆起し、ガープの両脚全体に突き刺す。
「何っ!!…」
ガープは思わず声をあげ、無数に氷針が突き刺さる両脚全体を眺める。
氷針が刺さった両脚全体は、足元から全身に向かい、氷結し、ガープの全身を凍結。
全身から凍結したガープの姿は、まるで氷像。
「終わりだ、ガープ…」
ムジカは剣を上段に構え、詠唱。
極寒の霧が晴れ、10体のムジカの分身達が円形に氷像のガープを包囲し、剣を上段に構え、詠唱。
「ーーーーーーーッ!!」
ガープの氷像の足元に、円径10メートルの詠唱陣が白銀に輝かせ、出現。
氷像のガープは、驚愕した様子で口を開いたまま、動かない。いや、動けない…。
「四属性の大爆発っ!!」
ムジカは声をあげ、唱える。
詠唱陣から、5メートルの大きさを誇る虹色の魔力球体が出現し、氷像のガープを飲み込む。
四属性の魔力を使っている為、どんな敵でも、喰らえばダメージは壮大である。
「ーーーーーーッ!!」
氷像のガープを包み込む虹色の魔力球体は、大爆発。
「ーーーーーーーーッ!!」
虹色の爆撃波に、兵士達は吹っ飛ぶ。
一方のムジカは爆撃波に耐え、微かな視界でガープの状態を確かめる。
今までの戦場経験の発想力で作り出した究極の魔導術だ。死んでいなければ、おかしい…。
上位魔族のガープをマトモに相手をすれば、全滅は免れない。一瞬で勝負を決めなければならない状況である…。
昔のムジカは、分身を作り出すだけで、魔導術は使えなかった。
その後、戦場経験を重ねに重ね、分身達が魔導術を使用する技を作り出したのた…。
ーーーーーそして、虹色の爆風は晴れる…。




