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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
29/260

第28話 絶望からの大・逆・転

ーーーー〈ダリウス平原〉ーーーー


 ムジカ率いる銃剣隊は、ダリウス平原の中央部に向け、進軍。

 平原には緑が広がり、温暖な風が一辺に吹き付け、静かな緊張感を漂わせる。

 緑の地面に戦跡の兵士の残骸が転がり、血が緑草に滴り、虫が飛び回る。

 砦から平原の中央部までの距離は1500メートルあり、気持ちの臆病風がヒシヒシと伝わってくる。


「怖いか?」


 ムジカは歩きながら皆に尋ねる。


「覚悟はしていますが、怖いです。けど、我々はムジカさんの背中を見て、戦いを学びました。我々はムジカさんを信じています…」


 兵士は笑みを浮かべる。

 笑っているのは、戦士の覚悟の表しである…。


 銃剣隊は横1列に並び、銃口をカチャと向け、ゆっくりと前進。

 ムジカは銃剣隊の隊列の後ろに隠れ、足元に詠唱陣を浮かばせ、全身から緑の粒子を漂わせ詠唱。

 後は、ムジカの期待に任せるのみだ。兵士達の命は、ムジカに預けたと言ってもいい。


ーーーー〈エボルド森林〉ーーー


「奴ら、動きを見せました…」


 森林の茂みの隙間から、魔界軍の兵士は1500メートル先の様子を、双眼鏡で覗き込んでいた。

 茂みの中には千人の魔界軍の兵士達が戦意でギラついた様子で身を潜め、タイムリミットを待ち望んでいた。

 先程の戦いで、圧倒的な戦力を見せつけ、タイムリミットを突き付け、撤退し、降伏を待つ作戦だ。


「降伏か?」


 指揮隊長は尋ねる。


「いえ、戦闘体制に入っています。数は、10名弱と思われます…」


 義勇軍の状況を双眼鏡を覗き、兵士は言った。


「なんだと。連中、ヤキが回ったか。そんな人数で何が出来ると言うのだ…。面白い、受けて立とう。とんだ命知らずの奴らに、我ら魔界軍の圧倒的力を見せつけてやるのだっ!!」


 隊長は声をあげる。


「ーーーーーーッ!!」


 森林の茂みに身を潜める魔界軍の兵士達は一斉に立ち上がり、剣を掲げ、雄叫びを響かせる。

 響き渡る声圧に、茂みに潜める小鳥達はビックリし、茂みから逃げ去る。


「出撃っ!!」


 指揮隊長は剣を突き上げ、指令。

 指揮隊長の指令に、魔界軍の兵士達は森林の茂みを抜け、ダリウス平原の中央部に向かい、進軍。

 次々と森林の茂みを抜け、地面に渇いた足音を鳴らし、前進を開始する魔界軍。

 義勇軍の答えを宣戦布告として捉え、兵士達は戦意に満ちた鋭い表情を浮かべ、魔界人の特性である額部の宝石を紅く光らせ、戦る気。


ーーーー〈ダリウス平原〉ーーーー


 数百メートルの距離を進軍する魔界軍。

 漆黒の群影が平原を黒く染め、踏み進む事により発生する砂塵が蒸気と混じり、舞い上がる。


ーーー5分後。


「濃霧か…」


 指揮隊長が口を開き、一辺を眺める。

 平原一帯には蒸し暑い濃霧が漂わせ、前方と後方の視界が不安定な状況を作り出す。

 こんな時に濃霧か…。もう少しで敵の砦を陥落させる事が出来ると言うのに、なんて日だ…。


「そのようです。視界が確認出来ません…」


 側近の兵士は双眼鏡を眺め、告げる。


「クソッ、こう言う時に…。皆に告げろ、用心して進めと…」


 と、指揮隊長は側近兵を通し、全軍に告げる。

 指揮隊長の指令に、兵士達は足取りを弱め、辺りの様子を伺いながら前進。

 不安定な視界、蒸し暑い濃霧。兵士達の額から汗が滴り、鎧の隙間から熱が発する。

 

 見えない状況に、いつになったら辿り着くのだろう…。と言う、不安感が兵士達に積もり、身に付ける鎧の重さで、さらに気持ちをダルくさせる。


ズウン………。


 その時、巨大な足音が兵士達の耳に響き渡る。


「全軍、止まれ…」


 巨大な足音に違和感を覚え、指揮隊長は側近兵を通し、全軍に告ぐ。

 指揮隊長の指令に、魔界軍の兵士達は全員、不安感を漂わせる気持ちで足を止めた…。

 一辺から充満する熱の濃霧、兵士達は息を切らし、疲労の心境を物語る。


「全員、武器を構えろ…」


 指揮隊長は側近兵を通し、兵士達に命令。


「ーーーーーッ!!」


 兵士達は、一斉に武器を抜き、構える。

 蒸し暑い濃霧に、兵士達の額から汗が地面にポトリと滴り、緊張感が高まる。

 戦況は、こちらが有利だ…。たった15体の敵に、何を怯える理由がある。と、兵士達は言い聞かせるのである。


ズウン………。


 濃霧の中、巨大な足音が響き渡り、蒸し暑い緊張感と共に、さらに近づいて来る…。


ーーーーそして。


「ーーーーーーーーッ!!」


 兵士達の表情は絶望に変わり、汗で滴る眼に映る光景に、恐怖で背筋が凍り、硬直した。

 何故、奴らがここに………。

 魔界軍の兵士達は、本能的に戦慄が走った。

 前方千メートル先、濃霧の中から現れたのは5体の巨大な影。

 体長は150メートル、漆黒の硬肌を覆う体躯。頬が窪んだ顔面、紅の鋭眼、厳つい牙。頭部の後ろに金色の鬣が揺らしている。

 巨神の足元を、義勇軍の群影が紅い熱気を漂わせ、駆け走り、近づいて来る。


「バカな…。奴らの兵力は15人だけだ。どこに、あのような兵力を隠していたと言うのだ…。まさか、奴らはこれの為に、我が軍を油断させていたのか………」


 戦線隊長は絶望の様子、口を震わせる。

 5体の巨大な影の正体は、魔界の巨神イビル・ジャイアント。遥か昔、魔界は1度、イビル・ジャイアントにより、魔界の人類が滅亡の危機を迎えた事がある…。

 イビル・ジャイアントが魔界に存在していた頃、数え切れない人々が喰い殺され、魔界の人類は半分以下まで減少した。と、魔界では永遠の歴史として、災厄として語り継がれている。

 しかし、イビル・ジャイアントは魔界の環境変化により、絶滅したハズだ。


ズウン……。


 魔界の巨神イビル・ジャイアントの響き渡る足音、地鳴りのような雄叫びをあげ、駆け走る義勇軍の群影。

 魔界軍を圧倒的な勢力で上回る義勇軍、そして魔力が効かないイビル・ジャイアントが5体。

 災厄の伝説として語り継がれている巨神と圧倒的な勢力を目の当たりにし、恐怖で言葉が思い浮かばない…。


「ーーーーーーッ!!」


 その時、最悪な士気の中、前方から数十発の銃弾が放たれ、魔界軍に襲いかかる。

 三人、四人、五人、次々と銃弾を浴び、魔界軍の兵士は力無く、倒れていく…。


「何が起こってるんだぁ!!」


 兵士達は、大混乱。

 銃弾により魔界軍の陣形は恐怖で入り乱れ、戸惑う叫び声が一辺に響き渡る。

 ビリビリとした敵軍の熱気、無数に放射される銃弾。そして、魔界の災厄、巨神イビル・ジャイアントが5体…。巨神の前では、兵士の力は無力に等しい…。


「撤退だっ!!。総員、魔界に退避だっ!!」


 戦線隊長は号令。

 戦線隊長の号令の下、兵士達は飛び交う銃弾も関係なく、地鳴りのような足音を鳴らし、エボルド森林の方に駆け走り、故郷の魔界に逃亡した…。

 

ーーー〈ダリウス平原中央部〉ーーー


 義勇軍の兵士達は、銃剣を下ろし、エボルド森林に逃亡した魔界軍の兵士達を眺めていた。


「一体、何が起こったんだ?……」


 兵士の1人が口を震わせる。

 命令通り、銃弾を放射し、前だけを向いて、雄叫びをあげた。それだけである…。

 何故、魔界軍が逃げたのか、不思議な気持ちのままである。


「作戦は、うまくいったようだな…」


 ムジカはホッと安堵を浮かべる。


「何をしたんですか、ムジカさん?…」


 兵士は尋ねる。


「まぁ、ちょっくらね…。向こうの奴らに、恐怖と言う名の幻覚を見せてやったのだよ…。俺の四属性魔力エレメンタルを全力で活用し、ダリウス平原一帯に濃霧を発生させ、恐怖の幻影ミラージュを奴らに映し出した。お前達に前だけを向いていろと、命令したのは、後ろを向いたら幻影ミラージュに襲われる可能性があるからだ。作戦を具体的に教えなかったのは、より恐怖の幻影ミラージュの演出を作り出したかったからだ…」


 ムジカは言った。

 造り出した巨神イビル・ジャイアントの幻影ミラージュを魔界軍に見せつけ、精神的な恐怖で撤退させるという作戦だ。

 魔界の巨神イビル・ジャイアントの伝説を知ったのは、知り合いの魔界人に教えてもらった…。

 ムジカ自身、魔界人の災厄の恐怖を使った作戦が成功するかどうか、賭けである。失敗を思い浮かばなかったし、状況が状況で、思い浮かべるワケもいかない。


(・・・・・・・・)


 作戦成功により、兵士達は安心を通り超し、言葉が出ない。


「敵を騙すには、まず、味方から…。作戦は成功だ、中間防衛ラインは制圧。これで、我が軍の勝利だっ!!」


 ムジカは剣を高々と掲げ、勝利の宣言。

 ムジカの宣言に、兵士達は勝利の雄叫びをあげ、絶望の状況から、逆転した…。

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