第15話 謎の少女チェルシー現る
「きゃあっ!!」
木の幹につまづき、ユリアは転ぶ。
「大丈夫か?」
ゼブラは彼女の手を掴み、を立たす。しかし、時は既に遅し、追いつかれてしまった…。
一帯には魔界軍の騎馬隊が10体。殺気を漂わせ、二人を包囲する。殺気を漂わせるのは情報と言う名の戦利品が欲しいからだ。
「大人しく我々の所まで来てもらおうか?…」
騎馬隊の隊長は高圧的な口調で発言。
残りの騎馬隊の兵士達は剣を抜き、殺る気マンマンである。
「ユリア、下がってろ…」
ゼブラは真剣な表情を浮かばせ、剣を抜く。
一兵相手なら瞬殺は出来る。見慣れない地だから長居は危険だ。魔界軍以外にも、何が出て来るかわからないからだ。
「我々と戦う気か、面白い。男は殺せ、女は殺すなっ!!」
騎馬隊の隊長は手を掲げ、皆に指揮。
ユリアを殺さない理由は新しい娼婦が欲しいから、ユリアは隊長の好みである。
騎馬隊の兵士は馬から降り、剣を構える。
「てりゃーーーーーっ!!」
その時、木枝の茂みから活発な声を響かせ、一人の少女がゼブラの前に飛び出し、着地。
(………)
突然現れた少女に、一帯の者達は沈黙。
「これが初めての実戦…。くぅーっ、この地に足が着かない感覚がたまらないっ!!。このチェルシー、まだ経験と至る所がツルツルな私が、初の任務と初の敵との遭遇、くぅーっ!!」
身体を左右に揺らし、ハイテンションで盛り上がる少女。桜色の編み込みツインテール、愛らしい童顔、広い額に丸い顎。身長は150センチ、白のフィットスーツに緑革の半袖ベストを着用し、両手にはハンドグローブ。下は桜色のモフモフパンツ、脚に黒のソックス、革のブーツ。容姿は十代前半、ヘソを出している。全身はピンクを意識し、胸は小さい。左手には刃先が禍々しいハルバート。
「 君は一体?…」
ゼブラは口を開く。しかし。
「よっしゃ、かかって来いっ!!」
聞いちゃいない。チェルシーと言う少女は活発な様子でハルバートを騎馬隊に向け、構える。
「ガキが…。戦場に出向いた以上、死んでもらう。殺れっ!!」
騎馬隊の隊長は剣を掲げ、皆に指揮。
騎馬隊の兵士達はチェルシーに突っ込む。
奴らは子供でも、容赦は無い…。
(ヤバイ…)と、ゼブラは剣を構える。
「私に任せてっ!!」
チェルシーはハルバートを構え、詠唱。全身から緑の風圧を漂わせ、疾風のスピードで駆け走る。
緑の風圧は風属性の魔力を自身に付与し、能力をアップさせている。
「ーーーーーッ!!」
騎馬隊の兵士達は雄叫びを響かせ、中間の間合いからチェルシーに狙いを定め、一斉に剣を振るう。
「当たらないよ…」
チェルシーは活発な笑みを浮かべ、疾風のスピードでハルバートを振るう。
「ーーーーーーッ!!」
ハルバートを振るうチェルシーの斬り抜ける剣圧に、騎馬隊の兵士達は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる…。風の属性を付与した彼女のスピードは半端ではない。
ハルバートの剣圧の威力に、9人中5人の兵士が全身に重い剣撃を与えられ、戦闘不能。
「このガキっ…」
騎馬隊の隊長は凄む表情で剣を構え、チェルシーを迎え立つ。
「ていっ!!」
チェルシーは跳びあがり、右の膝蹴りを騎馬隊の隊長の顔面に叩き込む。
騎馬隊の隊長は鼻血を吹き出し、仰向けで倒れ込み、失神した。
チェルシーは振り向き、一辺に倒れる兵士達に活発な口を開く。
「これでもガキと呼ぶか?。お前ら見た目で油断し過ぎなんだよバーカバーカっ!!」
ブンブンとハルバートを振り回すチェルシー。
強すぎる…。少女の強さに、ゼブラは沈黙。
「退け退けっ!!」
騎馬隊の兵士達はプライドを押し殺し、痛みに耐えて立ち上がる。失神した隊長を軍馬に乗せ、森林地帯から馬の渇いた足音を響かせ、走り去る。
魔界軍が立ち去った事により、森林地帯は静寂を漂わせる。場に残るのはゼブラとユリア、そして活発な少女チェルシーの3人。
「危ない所、ありがとう。君は一体何者だ?」
ゼブラは剣を鞘に納める。
少女は笑みを浮かべ、二人に目を向ける。ハルバートを地面に突き立て、自己紹介。
「ニシシシ、よくぞ聞いてくれた。私はチェルシー、義勇軍の町サイモンの新米兵である。アンタ達は、もしかして地上から来たの?」
チェルシーは言う。
「そうだ。ある人からここに来るように案内された。俺はゼブラ・ハルシオン」と、ゼブラは紹介。
「ユリア・クラインです。よろしくお願いします、チェルシーさん」
ユリアはチェルシーに向け、感謝の笑みを浮かべる。
(………)
チェルシーはユリアの胸に瞳を奪われ、何かの衝動が走り、言葉を失う。
「チェルシーさん?」
ユリアは恐る恐る口を開く。
「むきゅーーーー!!」
チェルシーはユリアの胸に抱きつく。
「チェルシーさんっ?」
抱きつかれた事に、ユリアは驚く。
「柔らかい胸ですぅ~~~~」
チェルシーはユリアの胸に頬をスリスリさせ、愛らしい声で離れない。理由、女性の大きな胸が好きだからだ。
ユリアは戸惑いの笑み浮かべ、ゼブラに目を移す。しかしゼブラは軽く手を上げ、打つ手がない。
「私、ユリアさんを見てキュンと来ました。お姉さんと呼んでもいいですかぁ?」
チェルシーは顔を上げ、眼をキラキラ輝かせる。
「構いませんよ…」
ユリアは言った。
「おねぇ~~さまぁ~~~~~」
チェルシーは喜び、スリスリと抱きつく。
敵ではないから安心した。二人に、そっち系の少女チェルシーが仲間になった…。
ゼブラとユリア。そして、そっち系の少女チェルシーの3人は森林地帯を歩いていた。
辺りは鬱蒼した木々が生い茂り、並ぶ木々の間から伸びる林道を歩き進む。
「大丈夫か、奴ら追って来るんじゃ?」
ゼブラは心配な様子で口を開く。
「へーき、へーき。サイモンの町に帰ったら報告するよ。そしたら別の部隊が橋に向かって壊すから心配ないよ…」
チェルシーは小さな胸を張り、言った。
ユリアの事を気に入った為、彼女の腕を組み、を繋いでる。
3人が向かう先は義勇軍の町サイモン。サイモンの町には軍隊組織が創設され、地下世界アストラルを守っている。
「あの魔界軍って何者だ?。いきなり現れて、こっちの道に進んだら敵だと言って追いかけて来るし、どうなっているんだ?」
ゼブラは言う。
「…あいつらは、私が生まれる前から戦争していて、民間人を平気で殺す悪魔よ。奴らに殺された民間は大勢いるわ…。私の両親も、奴らに殺されて、逃げ道で野垂れている所を義勇軍に拾われて、戦士になったんだ」
チェルシーは言った。
「酷いな…」と、ゼブラは悲しく瞳を細める。
自身も似たような経験があるから、嫌な気持ちはわかる方だ…。
「ねぇ。その剣、見せてくれない?」
チェルシーはゼブラの剣に瞳を移し、口を開く。
「いいけど。変わってるぞ、この剣は…」
ゼブラは剣をチェルシーに手渡す。
どうせ、すぐ手元に戻って来るだろう。と、ゼブラは当たり前のように思い浮かべるのだった。
「この剣、やっぱり…」
チェルシーは剣を受け取り、拝見。
「お前、剣を持てるのか?」
予想が外れ、ゼブラは驚愕。
「うん。この剣は古代組織ユーギガノスの元戦士、ステファーム・アストラルによって造られた剣よ。アストラルの子孫にしか扱えない剣で、本物を見れたのはビックリ。けど、アストラルの子孫が地上でこの剣を生活に困って売って以来、この剣の所在がわかなくなったんだ。無事、故郷に帰って来てこの剣は嬉しいだろうな…」
チェルシーは言う。
つまり、ゼブラはステファーム・アストラルの遠い子孫らしい。
ちなみに、ステファーム・アストラルは地下世界アストラルの創始者だ。
「お前もアストラルの子孫なのか?」
ゼブラは口を開く。
「剣を握れる事は、そうかも知れない。アストラルの子孫の数は多いらしいし、お姉さまも…」
チェルシーは魔力の色を見極める事が出来る。
ユリアの魔力の色は黄金。黄金の光はユリアの全身から輝きを漂わせ、チェルシーはユリアの魔力に驚き、言葉を失った。
チェルシーの頭に、カチャリと記憶が音を響かせ、謎の記憶が流れてくる…。
「どうしましたか、チェルシーさん?」
ユリアは心配に言う。
ユリアの言葉に、チェルシーは我に帰る。流れてくる記憶を振り払い、活発に口を開く。
「何でもない、何でもないよ。さぁ行こ、おねーさまぁーーっ!!」
チェルシーはユリアの腕を組み、しがみつく。
「俺も参加してもいーかな?」
ゼブラは羨ましい様子で二人に瞳を移す。
「べぇーーーーっ!!。おねーさまぁに抱きついて良いのは私だけなのっ!!」
チェルシーは舌を伸ばし、ゼブラを拒否…。
二人の光景は、まるで仲の良い姉妹に見え、絵になる姿だ。
ゼブラは冗談気にユリアに手を伸ばすが、その度にチェルシーに叩かれ、失敗に終わる。




