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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
16/262

第15話 謎の少女チェルシー現る

「きゃあっ!!」


 木の幹につまづき、ユリアは転ぶ。

 

「大丈夫か?」


 ゼブラは彼女の手を掴み、を立たす。しかし、時は既に遅し、追いつかれてしまった…。

 一帯には魔界軍の騎馬隊が10体。殺気を漂わせ、二人を包囲する。殺気を漂わせるのは情報と言う名の戦利品が欲しいからだ。


「大人しく我々の所まで来てもらおうか?…」


 騎馬隊の隊長は高圧的な口調で発言。

 残りの騎馬隊の兵士達は剣を抜き、殺る気マンマンである。


「ユリア、下がってろ…」


 ゼブラは真剣な表情を浮かばせ、剣を抜く。

 一兵相手なら瞬殺は出来る。見慣れない地だから長居は危険だ。魔界軍以外にも、何が出て来るかわからないからだ。


「我々と戦う気か、面白い。男は殺せ、女は殺すなっ!!」


 騎馬隊の隊長は手を掲げ、皆に指揮。

 ユリアを殺さない理由は新しい娼婦が欲しいから、ユリアは隊長の好みである。


 騎馬隊の兵士は馬から降り、剣を構える。


「てりゃーーーーーっ!!」


 その時、木枝の茂みから活発な声を響かせ、一人の少女がゼブラの前に飛び出し、着地。


(………)


 突然現れた少女に、一帯の者達は沈黙。


「これが初めての実戦…。くぅーっ、この地に足が着かない感覚がたまらないっ!!。このチェルシー、まだ経験と至る所がツルツルな私が、初の任務と初の敵との遭遇、くぅーっ!!」


 身体を左右に揺らし、ハイテンションで盛り上がる少女。桜色の編み込みツインテール、愛らしい童顔、広い額に丸い顎。身長は150センチ、白のフィットスーツに緑革の半袖ベストを着用し、両手にはハンドグローブ。下は桜色のモフモフパンツ、脚に黒のソックス、革のブーツ。容姿は十代前半、ヘソを出している。全身はピンクを意識し、胸は小さい。左手には刃先が禍々しいハルバート。


「 君は一体?…」


 ゼブラは口を開く。しかし。


「よっしゃ、かかって来いっ!!」


 聞いちゃいない。チェルシーと言う少女は活発な様子でハルバートを騎馬隊に向け、構える。


「ガキが…。戦場に出向いた以上、死んでもらう。殺れっ!!」


 騎馬隊の隊長は剣を掲げ、皆に指揮。

 騎馬隊の兵士達はチェルシーに突っ込む。

 奴らは子供でも、容赦は無い…。


(ヤバイ…)と、ゼブラは剣を構える。


「私に任せてっ!!」


 チェルシーはハルバートを構え、詠唱。全身から緑の風圧を漂わせ、疾風のスピードで駆け走る。

 緑の風圧は風属性の魔力を自身に付与(エンチャウント)し、能力をアップさせている。


「ーーーーーッ!!」


 騎馬隊の兵士達は雄叫びを響かせ、中間の間合いからチェルシーに狙いを定め、一斉に剣を振るう。


「当たらないよ…」


 チェルシーは活発な笑みを浮かべ、疾風のスピードでハルバートを振るう。


「ーーーーーーッ!!」


 ハルバートを振るうチェルシーの斬り抜ける剣圧に、騎馬隊の兵士達は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる…。風の属性を付与(エンチャウント)した彼女のスピードは半端ではない。

 ハルバートの剣圧の威力に、9人中5人の兵士が全身に重い剣撃を与えられ、戦闘不能。


「このガキっ…」


 騎馬隊の隊長は凄む表情で剣を構え、チェルシーを迎え立つ。


「ていっ!!」


 チェルシーは跳びあがり、右の膝蹴りを騎馬隊の隊長の顔面に叩き込む。

 騎馬隊の隊長は鼻血を吹き出し、仰向けで倒れ込み、失神した。

 チェルシーは振り向き、一辺に倒れる兵士達に活発な口を開く。


「これでもガキと呼ぶか?。お前ら見た目で油断し過ぎなんだよバーカバーカっ!!」


 ブンブンとハルバートを振り回すチェルシー。

 強すぎる…。少女の強さに、ゼブラは沈黙。


「退け退けっ!!」


 騎馬隊の兵士達はプライドを押し殺し、痛みに耐えて立ち上がる。失神した隊長を軍馬に乗せ、森林地帯から馬の渇いた足音を響かせ、走り去る。

 

 魔界軍が立ち去った事により、森林地帯は静寂を漂わせる。場に残るのはゼブラとユリア、そして活発な少女チェルシーの3人。


「危ない所、ありがとう。君は一体何者だ?」


 ゼブラは剣を鞘に納める。

 少女は笑みを浮かべ、二人に目を向ける。ハルバートを地面に突き立て、自己紹介。


「ニシシシ、よくぞ聞いてくれた。私はチェルシー、義勇軍の町サイモンの新米兵である。アンタ達は、もしかして地上から来たの?」


 チェルシーは言う。


「そうだ。ある人からここに来るように案内された。俺はゼブラ・ハルシオン」と、ゼブラは紹介。


「ユリア・クラインです。よろしくお願いします、チェルシーさん」


 ユリアはチェルシーに向け、感謝の笑みを浮かべる。


(………)


 チェルシーはユリアの胸に瞳を奪われ、何かの衝動が走り、言葉を失う。


「チェルシーさん?」


 ユリアは恐る恐る口を開く。


「むきゅーーーー!!」


 チェルシーはユリアの胸に抱きつく。


「チェルシーさんっ?」


 抱きつかれた事に、ユリアは驚く。


「柔らかい胸ですぅ~~~~」


 チェルシーはユリアの胸に頬をスリスリさせ、愛らしい声で離れない。理由、女性の大きな胸が好きだからだ。

 ユリアは戸惑いの笑み浮かべ、ゼブラに目を移す。しかしゼブラは軽く手を上げ、打つ手がない。


「私、ユリアさんを見てキュンと来ました。お姉さんと呼んでもいいですかぁ?」


 チェルシーは顔を上げ、眼をキラキラ輝かせる。

 

「構いませんよ…」


 ユリアは言った。


「おねぇ~~さまぁ~~~~~」


 チェルシーは喜び、スリスリと抱きつく。

 敵ではないから安心した。二人に、そっち系の少女チェルシーが仲間になった…。


 ゼブラとユリア。そして、そっち系の少女チェルシーの3人は森林地帯を歩いていた。

 辺りは鬱蒼した木々が生い茂り、並ぶ木々の間から伸びる林道を歩き進む。


「大丈夫か、奴ら追って来るんじゃ?」


 ゼブラは心配な様子で口を開く。


「へーき、へーき。サイモンの町に帰ったら報告するよ。そしたら別の部隊が橋に向かって壊すから心配ないよ…」


 チェルシーは小さな胸を張り、言った。

 ユリアの事を気に入った為、彼女の腕を組み、を繋いでる。

 3人が向かう先は義勇軍の町サイモン。サイモンの町には軍隊組織が創設され、地下世界アストラルを守っている。


「あの魔界軍って何者だ?。いきなり現れて、こっちの道に進んだら敵だと言って追いかけて来るし、どうなっているんだ?」


 ゼブラは言う。


「…あいつらは、私が生まれる前から戦争していて、民間人を平気で殺す悪魔よ。奴らに殺された民間は大勢いるわ…。私の両親も、奴らに殺されて、逃げ道で野垂れている所を義勇軍に拾われて、戦士になったんだ」


 チェルシーは言った。


「酷いな…」と、ゼブラは悲しく瞳を細める。

 自身も似たような経験があるから、嫌な気持ちはわかる方だ…。


「ねぇ。その剣、見せてくれない?」


 チェルシーはゼブラの剣に瞳を移し、口を開く。


「いいけど。変わってるぞ、この剣は…」


 ゼブラは剣をチェルシーに手渡す。

 どうせ、すぐ手元に戻って来るだろう。と、ゼブラは当たり前のように思い浮かべるのだった。


「この剣、やっぱり…」


 チェルシーは剣を受け取り、拝見。


「お前、剣を持てるのか?」


 予想が外れ、ゼブラは驚愕。


「うん。この剣は古代組織ユーギガノスの元戦士、ステファーム・アストラルによって造られた剣よ。アストラルの子孫にしか扱えない剣で、本物を見れたのはビックリ。けど、アストラルの子孫が地上でこの剣を生活に困って売って以来、この剣の所在がわかなくなったんだ。無事、故郷に帰って来てこの剣は嬉しいだろうな…」


 チェルシーは言う。

 つまり、ゼブラはステファーム・アストラルの遠い子孫らしい。

 ちなみに、ステファーム・アストラルは地下世界アストラルの創始者だ。


「お前もアストラルの子孫なのか?」


 ゼブラは口を開く。


「剣を握れる事は、そうかも知れない。アストラルの子孫の数は多いらしいし、お姉さまも…」


 チェルシーは魔力の色を見極める事が出来る。

 ユリアの魔力の色は黄金。黄金の光はユリアの全身から輝きを漂わせ、チェルシーはユリアの魔力に驚き、言葉を失った。

 チェルシーの頭に、カチャリと記憶が音を響かせ、謎の記憶が流れてくる…。


「どうしましたか、チェルシーさん?」


 ユリアは心配に言う。

 ユリアの言葉に、チェルシーは我に帰る。流れてくる記憶を振り払い、活発に口を開く。


「何でもない、何でもないよ。さぁ行こ、おねーさまぁーーっ!!」


 チェルシーはユリアの腕を組み、しがみつく。


「俺も参加してもいーかな?」


 ゼブラは羨ましい様子で二人に瞳を移す。


「べぇーーーーっ!!。おねーさまぁに抱きついて良いのは私だけなのっ!!」


 チェルシーは舌を伸ばし、ゼブラを拒否…。

 二人の光景は、まるで仲の良い姉妹に見え、絵になる姿だ。

 ゼブラは冗談気にユリアに手を伸ばすが、その度にチェルシーに叩かれ、失敗に終わる。

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