第9話 鬼神化使いの葛藤
「ーーーーッ!!」
鬼神化シルバーウィンドは鬼神化フェニックスに標準を定め、三発の光の矢を放射。
「ーーーーッ!!」
暴走の鬼神化フェニックスは察知。炎太刀を振るい、放たれる矢を弾き落とす。漂う炎圧が高くなり、暴走状態は酷さを増した。
「何て奴だ……」
鬼神化シルバーウィンドは表情を曇らせ、驚く。
「ーーーーッ!!」
灼熱と化し、炎圧を漂わせる暴走の鬼神化フェニックスは炎の太刀を構え、突っ込む。
鬼神化シルバーウィンドは弓を構え、鬼神化フェニックスに狙いを定める。
「銀の雨!!」
鬼神化シルバーウィンドは弓を上向きに構え、光の矢を無数に放射。上空から一斉放射させる光の矢、鬼神化フェニックスに降り注ぐ。
鬼神化フェニックスの一辺に降り注ぐ光の矢。光の矢は直撃と同時に爆発、一辺に爆煙が広がる。
「ここに隠れているといい」
翼を広げる鬼神化シルバーウィンドは、ユリアを背負い、大樹の枝上に飛翔移動。暴走の鬼神化は察知力、闘志力がケタ違い。身を隠れなければユリアは巻き込まれ、危険だ。銀の雨は彼女を隠す為の目眩まし、姿を見られなければすぐには察知されない考えだ。
「あの……」
ユリアは口を開く。
「何だい?」
鬼神化シルバーウィンドは、ユリアに振り向く。
「彼、大事な仲間なんです。どうか、救って下さい……」
鬼神化シルバーウィンドは気休めに頷く。枝上から飛翔し、弓を構える。しかし、暴走状態の鬼神化を静めるのは至難の作業、出来るかどうか不明だ。
同時に鬼神化フェニックスは僅な音で察知、空中の鬼神化シルバーウィンドに視線を向ける。
鬼神化シルバーウィンドは空中から三発の光の矢を放つ。地上での戦いは不利だが、空中からの攻撃は、こちらが有利だ。
「ーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは炎の太刀を振るい、光の矢を弾き落とす。
これは一瞬の目眩まし、鬼神化シルバーウィンドは相手の十メートル後方に回り、飛行移動。
鬼神化シルバーウィンドは、3メートルの大きさを誇る銀の矢を具現化。矢に帯びる銀の雷流、矢先は銀色に輝く矛刃。鬼神化シルバーウィンドの一撃技である。
「銀の直進撃!!」
鬼神化シルバーウィンドは一撃技を、鬼神化フェニックスに狙いを定め、放つ。矛先から白銀の熱面を広げ、凄まじい魔力を物語る。
「ーーーッ!!」
鬼神化フェニックスが反応し、後方を振り向いた時にはもう遅い。銀の直進撃は数メートルの距離に迫っていた。銀の直進撃は鬼神化フェニックスに直撃し、銀の光柱を現出させ、爆発。
一方、大樹の枝上から見守るユリアは、ゼブラが死んだと思い、様子から悲しく目を背ける。
「ヴゥヴヴヴヴヴヴゥ……」
銀の光柱が晴れ、鬼神化フェニックスは多大なダメージを負っていた。全身は黒い火傷、白い煙が漂わせる。炎圧が弱体化し、唸り声を上げ、前屈みにフラつかせている。
「よし。トドメだ……」
空中の鬼神化シルバーウィンドは弓を構える。暴走状態の鬼神化を静める事は、奇跡に近い。
ユリアは何を思ったのか、生い茂る枝上から飛び降りる。高い所から飛び降りた為、足には痛みが響く。ユリアは痛みに耐え、立ち上がる。そして鬼神化フェニックスに駆け走りる。
「何をしている!!。早く戻るんだ!!」
鬼神化シルバーウィンドは鬼神化フェニックスに狙いを定め、警告。
ユリアは、鬼神化フェニックスを背後から抱きつく。
「うっ……」
鬼神化フェニックスから漂わせる炎が、抱きつくユリアに燃え移り、全身に火傷を負わせる。鬼神化フェニックスは息を乱し、自身に抗う。
「大丈夫だから……。そう、自分を信じて、アナタなら大丈夫……」
燃えるような痛みに耐え、ユリアは優しく、呪文のように語りかけるのである。
鬼神化シルバーウィンドは念の為、弓を構え、二人を見守る……。
「ううっ……」
鬼神化が解け、ゼブラは元に戻った。同時に体力と気力が切れた為、ゼブラはドサッと倒れる。
*
そして、二時間後……。
大樹の下、仰向けのゼブラはユリアの膝枕で気を失っていた。広地は焼け野原、鬼神化フェニックスの暴走により、一辺の草は焼けてしまった。
「……ここは?」
薄く目を開かせるゼブラ。視界に入るのは大樹の枝に鬱蒼と生い茂る緑、そしてユリアの顔。
「目を覚ましましたか?」
ユリアは言った。
「俺は一体、うっ……」
ゼブラは意識を取り戻し、起き上がろうとした途端、激痛が全身を走った。
「ゼブラさん!?」
と、ユリアは心配の様子で見つめる。
「大丈夫だ……。あれ、どうしたんだ?。傷だらけじゃないか?」
ゼブラはユリアの姿に疑問に思い、口を開く。服は引き裂かれ、至るヶ所に焦げ跡が目立っている。
「それは……」
ユリアは返事に困り、表情を曇らせる。すると。
「そーなったのはお前の仕業だ……」
大樹に背もたれ、冷たく告げるのはフェイト。
「フェイトさん、どうしてここに?」と、彼の登場に驚くゼブラ。
「やたら、うるさい音が聞こえてな、音を辿って来てみれば、気を失ってたお前らがいた」
フェイトは言った。
「そうですか……。あの、それより、ユリアが傷だらけになったのが俺の仕業ってどう言う事ですか?」
「お前、覚えてないのか?」
「えっ?」
フェイトの問いに、ゼブラは覚えてない様子。
フェイトはユリアに目を向け、
「話していいか?」
フェイトはユリアに目を向け、承諾を求める。ユリアは少しためらったが、「ハイ」と、頷き、承諾。
フェイトは冷静な表情を浮べ、口を開く。
「ここでの戦いで、お前の鬼神化が暴走した」
「何だって?」
フェイトの言葉に、ゼブラは驚く。同時にユリアは、ゼブラから悲しく目を背ける。
彼女が言うのをためらった訳、知ると彼は色んな面で落ち込む。と、思い、そんな彼を見たくないからだ。
「敵は倒したが、自身の強い戦意により鬼神の力は上がり、結果暴走し、彼女を痛めつけた」
「嘘だろ……」
フェイトの言葉にゼブラはうつ向き、落ち込む。
鬼神化のパワーは術者の精神状態に大きく左右される。術者が怒ると、鬼神は応え、怒りの強さだけパワーアップする。しかし、パワーアップした鬼神は術者の自我を覆い、精神バランスを乱し、自我を失う。
「これが現実だ。どんな能力にもリスクは付き物だ、お前にはそれを自覚するんだな。鬼神化はお前だ、鬼神が暴走したと言う事は、それがお前の本能だ。暴走を望み、結果、お前が彼女を痛めつけた」
「違う!!」
フェイトの言葉に、ゼブラは声を荒げ、立ち上がる。
「何が違う?。一帯を焼け野原し、彼女を攻撃し、これが何を違うと、お前は答える?」
(………)
ゼブラは黙る。確かにグリードに負け、地面に叩きつけられ、薄い意識の中、ゼブラは(ぶっ殺してやる)と、強く思い浮かべ、鬼神化を唱えた。結果、暴走を生んだ。フェイトの言葉に矛盾はなかった。全ては自身の力不足のせいだ。
(ゼブラさん……)
黙るゼブラを心配し、見つめるユリア。
「少し落ち着く時間が欲しい」
と、ゼブラは言い残し、歩き進む。焼け野原と化した広地を見渡し、鬼神化の恐ろしさを自身の目と、記憶に刻み込む。
「おや、目を覚ましたようだな?」
頭上から降り立ち、広地に現れたのは謎の人物の鬼神、鬼神化シルバーウィンド。
「うわぁ、誰だお前は!!」
ゼブラは驚愕し、跳び下がる。謎の人物は地面に降り立つと同時に、鬼神化を解く。
「驚かしてすまない。君には自己紹介がまだだったね、私の名前はホーク・ウッドロウ。自由気ままの旅人だ。君や彼女を癒す薬草を空からを探し回り、採取して来たの所だ」
ホークは言った。落ち着いた口調は、彼の穏やかな性格を表している。ショルダーバックの中から、採取してきた薬草を取りだし、ゼブラに渡す。
ゼブラは薬草を受け取り、ホークの顔を眺め、口を開く。
「ありがとうございます。俺の名前はゼブラ・ハルシオン、よろしくホークさん」
「よろしく、ゼブラ君」
と、ホークは軽く会釈。そしてホークは、ユリアとフェイトが休む大樹の所まで歩き進む。
「森の出口はわかったのか?」
フェイトはホークに尋ねる。グリードにより、道がわからなくなったので、飛行能力を持つホークに、出口を探して貰うように頼んでいた。
「少し道がややこしく変形している。歩くと数時間はかかると思う」
「そうか」
と、フェイトは納得。ホークはショルダーバックから薬草を取り出し、ユリアに歩き進む。
「傷の具合はどうだい?」
「私は大丈夫です。最初は痛かったですけど、今は何か痛くないです」
「何、少し両手を見せてくれないか?」
ホークは疑問に思い、ユリアに両手を見せるよう要求した。ユリアは両手を掲げ、ホークに見せる。
ユリアの両手は、綺麗な掌。しかし、彼女は暴走の鬼神化フェニックスを止める際、両手を火傷している。火傷の跡が見当たらない。
「うーん……」
ホークはユリアの全身を眺める。
そして不思議に思った、グリードの攻撃によりる傷跡すら、綺麗に消えている。止められない暴走の鬼神化を、彼女は止めた。これも異様だ。ユリアに残っているのはズタズタに切り裂かれた服。
「あの、何か?」
と、ユリアは恥ずかしく顔を赤らめ、モジモジと困惑。
「いや、気のせいだ……」
ホークは言う。
彼女に何か強い力が宿り、回復しているのか……。と、ホークは少し観察。一方、ホークの背後、ゼブラが嫉妬の瞳で睨んでいる。
「そう言えば、服が破れているね、私でよければ応急処置をするよ」
ホークはショルダーバックから裁縫道具を取りだす。傷が浅かった、又は軽い打ち身で済んだ。鬼神化の暴走が止まったのは偶然だ。と、思い込み、解決。後、ゼブラはユリアに気があると言う事を知った。
「お願いします」
と、ユリアはホークに依頼。
代わりの着替えはゼブラのジャケット、腰巻きのマントを借りた。
「20分の時間をくれないか?」
と、ホークはユリアの服を裁縫の作業に取りかかる。彼はこう見えても、手先が器用であり、何度も衣類を裁縫している。
「どうかしら?」
と、ユリアは代えの衣装をゼブラに見せつける。腰巻きのスキマから覗く太もも、ジャケットから覗く胸の谷間。
思わずゼブラは恥ずかしく、上に目をそらす。腕を組み、顔を赤らめ、口を開く。
「似合うんじゃないか……」
と、ゼブラは返した。
「可愛いっ」
一方のユリアは、喜んでる。




